インタビュー

【 社長インタビュー 】
長期ビジョン達成けん引 社員の誇り引き出し

2023年02月21日
日本通運 堀切 智 社長
NXグループの日本通運(本社・東京)は1月1日、堀切智代表取締役副社長が社長に就任した。グローバルで戦うNXグループの中で、日本通運はどのような役割を果たすのか。堀切社長は「従業員一人一人が持つポテンシャル(潜在能力)を引き出し、自信と誇りを持って働く会社にしていきたい」とする。その上でNXグループの認知度向上につなげ、グループ長期ビジョンの売上高3兆5000億~4兆円、営業利益率5%超、海外売上高比率50%をけん引する会社に育てる考えだ。
―就任の感想は。
堀切 変化の激しい世の中にあって会社も大きく変わっていく重要なタイミング。大切な時期であり、日本通運の社長として改めて責任の重さを感じている。
―グループの長期ビジョンづくりに携わった。
堀切 2023年度は中期経営計画の最終年度。これまでの取り組みの結果を数字で示し、創立100周年までの長期ビジョン達成に向け最初の目標としてクリアしたい。
―昨年、ホールディングス内にグローバル事業本部(GBHQ)を設立。
堀切 日本通運としてもしっかりと連携していく。国内では、医薬品や半導体関連産業に大きな投資を進めてきた。自動車やアパレル、電機・電子産業ではサプライチェーンを俯瞰(ふかん)し、お客さまと一緒に全体を見直す取り組みを強めている。取り組みを継続しコスト管理も行いながら成果に結び付ける。
◇不透明が当たり前に
―先行きの不透明感は強い。
堀切 世の中は変化し続けており、不透明が当たり前になりつつある。長期ビジョンを核に課題の克服に当たり、スピード感を持って対応していく。時間がかかることはしっかりと考えていく。
―国内体制をどう再構築するのか。
堀切 陸海空の一体化や組織の大ぐくり化に取り組んできたが、組織を変えて終わりではない。その後の運用面が重要。拠点、施設面で手当てが必要な場合もある。進ちょくに濃淡は生まれるが、強じん化を着実に進めていく。
―長期ビジョンで売上高2兆円が日本の目標。
堀切 高い目標に向け何が必要か逆算して考えている。本社と現場それぞれが長期ビジョンを踏まえ、考えて動ける組織でなくては目標達成は難しい。さらなる成長へギアチェンジしなければならないと認識している。
―ドライバーの労働時間規制が24年に控える。
堀切 (中小企業が多い)協力会社の状況をよく聞きながら法令順守の体制を全体で根付かせていかなければならない。これまでもお客さまへの適正運賃の収受や手待ち時間削減などの話し合いと、協力会社との話し合いを両面で行ってきたが、今後の交渉レベルは1段上がるだろう。
◇2024年問題は好機
―持続可能なネットワーク構築を目指す。
堀切 2024年問題はチャンスだ。単純なコストアップではなく、供給網全体の課題として捉えたい。お客さまには、環境負荷低減などの社会課題解決もセットで提案していきたい。例えば、Sea & Railサービスの推進だ。新たなサービス・商品を生み出し、課題解決や新たな価値創造に挑戦していきたい。
―どのような会社にしていきたいか。
堀切 マザー市場の日本で勝つ。勝つというのは売り上げやシェアを直接指すのではなく、従業員が自信と誇りを持って働き、お客さまからの信頼を得て社会に貢献することだ。その中で競争力が磨かれて会社の存在価値が高まり、NXグループの認知度が向上する。結果として、業績も付いてくるはずだ。日本起点でグループがグローバル市場で勝負できるようにする。働いていて楽しい、夢のある会社にしたい。
―人にこだわる。
堀切 長く人財戦略部門の仕事に携わってきた。当社の従業員は高いポテンシャルを持っている。うまく引き出すことが責任だ。昨秋から全国の店所を回り、1回15人程度の従業員と膝詰めで話している。考えを直接自分の言葉で伝えたい。私自身も現場のことを知らなければ、経営はうまくいかない。自由に物が言える風土を目指す。本社と現場が一体で前に進みたい。
―事業改革のプロジェクトチームも発足した。
堀切 約120人のメンバーが6つのテーマ(※)についてゼロから5年後のありたい姿を描こうとしている。すぐできることは実行しつつ長期的な展望を構築し、次期経営計画に反映していく。これまでホールディングス体制への移行などさまざまな変革を進めてきたが組織や体制に完成形はない。重要なのは中長期のありたい姿。それを明確にし、グループの中核会社としてけん引する役割を果たしていく。
※「ロジスティクス事業改革」「通運事業改革」「小口事業改革」「内航海運事業改革」「複合店事業改革」「M&A戦略推進」の6つ
記者席 「素直な心」で
座右の銘は松下幸之助が唱えた「素直な心」。ありのままに事実を受け止め、謙虚に教えを受け、「自分にも素直でありたい」という。物流はさまざまな関係者の流れを調整することで成り立つ仕事。流れを受け止め、一つの清流を生み出すためには、また自らも素直でなければならない。
企業は環境負荷低減や労働環境改善、SDGs(持続可能な開発目標)など、多くの課題を突きつけられている。社会課題解決の方策を物流ソリューションの提供を通じて提示する一方で、協力会社の労働環境改善の手助けも行う。
中核会社の社長を任され、「支える役割から、前面に立つ役割に変わり責任の重さを感じる」。最終年度となる5カ年計画達成と長期ビジョン実現に向け、顧客や従業員と全力で向き合う覚悟だ。