インタビュー

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【 社長インタビュー 】

国内初LNG燃料船が就航 13日、大阪―別府航路で

2023年01月03日

フェリーさんふらわあ 赤坂 光次郎 社長

 フェリーさんふらわあ(本社・大阪市、赤坂光次郎社長)は13日、国内初のLNG(液化天然ガス)を燃料とする新造フェリー「さんふらわあ くれない」を、大阪―別府(大分県)航路に就航させる。赤坂社長は、圧倒的な環境性能と強化した積載性能を強みに「高まるモーダルシフト需要を確実に取り込んでいきたい」と話す。

 ―さんふらわあ くれないが13日に出港する。
 赤坂 国内初のLNG燃料フェリーとなる。重油使用時に比べ排出される二酸化炭素、窒素酸化物(NOx)が少なく、硫黄酸化物(SOx)はほぼ排出されない。環境負荷低減やカーボンニュートラル(炭素中立)に大きな関心が集まっているタイミングでの投入は、大きな話題性があると考えている。

安全第一で準備をしてきた

 ―安全が最優先。
 赤坂 船の引き渡しは昨年の12月16日。需要が集中する年末年始の投入も検討したが見送った。備品の積み込みなどは間に合っても、船内スタッフが慣れない状態では混乱が発生するリスクがあった。船員にも新船の感覚をつかんでもらう必要がある。「安全を最優先とし、焦らずに進める」ことが大切だと考えた。
 ―商船三井のサポートがある。
 赤坂 自社の機関士はLNG燃料船で仕事をするのは初めて。商船三井の外航LNG燃料船で勤務経験がある機関士の同乗を受け入れ、ノウハウを蓄積する。
 ―市況はどうか。
 赤坂 旅客では、昨年10月に始まった政府の観光需要喚起策「全国旅行支援」もあり乗船者数は増加傾向にある。だが、19年の水準には至っていない。貨物は一定の輸送需要が続いているが、新型コロナウイルスの感染拡大前の物量には及ばない。食品や畜産品、酒類などの消費に勢いがないことが一因だと考えている。事業全体としては厳しい状況にある。

積載能力を最大限活用する

 ―大型化のメリットを生かす。
 赤坂 さんふらわあ くれないに続き、4月には姉妹船「さんふらわあ むらさき」が同航路に就航する。両船のトラックの積載能力は従来船と比べ45台分増やし137台(13メートル換算)となる。積載能力を最大限に活用し環境負荷の低減、ドライバーの残業上限規制に伴う2024年問題への対応を理由に高まるモーダルシフト需要を取り込む。
 ―具体的には。
 赤坂 一例が別航路の神戸―大分航路と組み合わせた運用。神戸―大分航路は有人トラックの利用が多く、ほぼ満船となり乗り切れないことがある。そこで、同航路で無人航送しているシャーシを大阪―別府航路に切り替えることで、神戸―大分航路の有人トラックの乗船を増やすことができる。
 ―新しい貨物の掘り起こしを進める。
 赤坂 特に注目しているのは熊本。海外メーカーの半導体製造工場が新設されるなど大きな動きがある。関連する荷動きの取り込みを模索している。また、最近では、2024年問題への対応策としてトラック企業から相談を寄せられる機会も増えている。海上輸送の実施に必要な機材を持たない企業の利用を支援する仕組みの構築を検討していきたい。
 ―対応すべき課題は。
 赤坂 LNGの供給方法の改善が一つ挙げられる。就航後は、岸壁に駐車したタンクローリーから供給する方式となる。1度に港まで運ぶことができる量が限られ、1往復ごとに供給作業が発生し時間もかかる。そのため、バンカー船による方式へ移行したい。1度に3往復分を供給することが可能で、大きな違いがある。当初から検討していたが、ビジネス面で折り合いがつかなかった。今後、商船三井と連携しながら早期の実現を目指す。

記者席 良い船になった

 「ちょっと先を行く良い船になっている」と赤坂社長。
 日本初のLNG燃料船という部分が特に注目されるさんふらわあ くれないだが、観光地の別府に発着することを意識して、ゆっくりと過ごすことができるよう、内装にもさまざまな工夫を施している。
 「客船ほどではないが、従来のフェリーとも違う印象を持ってもらえるのではないか」
 トラックドライバーは仕事で利用するため下船後、観光は残念ながらできない。だが、船上では休息期間となる。旅客と同じように船内生活を楽しむことは十分にできるはず。ちょっと先を行く新船は、どのような乗船体験を提供してくれるのか。就航への期待が膨らむ。