インタビュー

【 社長インタビュー 】
50年のバトンを継承 倉庫部門の拡大に重点

2022年10月25日
熊本交通運輸 住永 富司 社長
6月に住永金司会長からバトンを受け継いだ熊本交通運輸(本社・熊本県益城町)の住永富司社長。創立50周年の節目での就任となった。燃料価格の高騰や人手不足などの経営課題に直面する中、住永社長は「物流は面白い。アイデア次第で新しい仕事ができる。積極的に挑戦していく」と話す。
―就任の感想を。
住永 当初は「役職が社長に変わった」というのが正直な心境だった。だが、社長は会社のあらゆる事柄の判断を求められる。緊張感を持って仕事をしている。就任直後から、取引先へのあいさつ回りなど、忙しい日程が続いている。
―社長職の重みは。
住永 改めて大変な役割だと感じている。現・会長は法人設立から半世紀にわたってリーダーシップを発揮し、成長を果たしてきた。同じ立ち居振る舞いはできない。だが、不安は感じていない。
―これまでさまざまな仕事を経験。
住永 高校卒業後、地元の九州産交運輸に入社し、荷役作業員やドライバーを経験した。専門学校にも通い情報処理やパソコンの応用を勉強し、熊本交通運輸に入社。現場勤務を皮切りに荷役作業や建材、青果物などを運ぶ仕事をした。営業も担当し、顧客の顔を覚えることに努めてきた。
―物流は面白い。
住永 業界に足を踏み入れた頃は、他の産業で働きたいという思いもあったが、仕事をしているうちに物流は面白いと考えるようになった。荷物がある限り物流はなくならない。発想次第で、いろんなことができる可能性がある。
―現場経験が役立つ。
住永 そうだ。事務所にいては現場のことは分からない。例えば、働きやすい環境をどこまで整備できるかがポイントと考えている。自身も経験したが、体に大きな負担がかかる作業はあり、改善が欠かせない。(私が)現場で勤務していた頃から働き続けてくれている従業員も多く、コミュニケーションは取りやすい。従業員との連携を重視した経営を展開する。
―現在の経営状況は。
住永 新型コロナウイルス感染拡大の影響で荷量の増減はあったが、安定的に推移している。問題は燃料価格の高騰。高止まりが続き、業績にどの程度の影響が及ぶのか、懸念している。
新サービスの構築にも挑戦
―今後の戦略は。
住永 倉庫部門を重点的に拡大する。来年には新拠点を1棟計画している。保管業務を新規に獲得できれば、付随して輸送や流通加工など新しい仕事も期待できる。新しい企業スローガン「運ぶをあたらしく」の下、信頼関係を築いた顧客のニーズを基に新しいサービスの構築にも挑戦していく。
―効率化、省力化を進める。
住永 一例が自動倉庫の活用で、少ない人数で保管業務を行えるようになる。AIの技術を活用した自動配車システムの導入も視野に入れる。既に一部拠点で試験運用し、成果が出ている。ダブル連結トラックも増やし、輸送力を強化したい。
働きやすい環境整備に注力
―採用も重視する。
住永 機器やシステムで生産性を高めても作業は完結しない。今後は人材の確保が一段と難しくなるとみており、若い人材を中心に採用を進めることが不可欠。また、既存の従業員が長く働きたいと思える職場をつくらなくてはならない。待遇の充実や労働環境の改善、福利厚生の拡充など、すぐ実現できないこともあるが、できることから進めたい。子どもが生まれる従業員を支援するため、男女共に育児休暇を取得しやすい環境を整えることもその一つだ。
記者席 遊びと仕事の両立を
「プライベートと仕事は分ける」をモットーとする。遊ぶときは遊び、働くときはしっかりと集中する。両立できるライフスタイルを追求している。
会社づくりにもその考え方を反映させていく。「仕事だけで一生を終えたくはない。従業員にもそうなってもらいたくない」。例えば、家族や友人と楽しむ時間を確保することが重要とする。会社では、さまざまな人がそれぞれの目的を持って働いている。「お金を必要としているなら、しっかり稼いで夢や目標を達成してもらいたい」
趣味は格闘技。中学では柔道、高校ではボクシングに打ち込んだ。「男として強くなりたいという思いがあった」。現在は観戦を楽しみにしている。