インタビュー

【 社長インタビュー 】
増収活動徹底し反転攻勢 BTの利用拡大も鍵に

2022年07月26日
全国通運 永田浩一 社長
全国通運(本社・東京)は2022年度、「スピード感のある業務運営と徹底した増収活動で反転攻勢をかける」(永田浩一社長)。荷主と協働するモーダルシフト推進協議会活動の進展に加え、3月に百済貨物ターミナル駅(タ、大阪府)―越谷タ(埼玉県)で運行を開始した「フォワーダーズブロックトレイン」の利用拡大も鍵を握る。
―足元の事業環境は。
永田 21年度は、コロナ禍からの回復遅れと度重なる自然災害に加え、北陸新幹線レール輸送やリニア中央新幹線整備に伴う建設発生土輸送といった大型プロジェクトの終了で輸送量が落ち込み、大幅な減収減益となった。22年度も先行きの不透明感が極めて強い環境下だが、スピード感のある業務運営と、全国230社の利用運送企業で構成する全通系ネットワークを生かした増収活動の徹底で反転攻勢をかけたい。
好感触で今秋にも新規輸送
―モーダルシフト推進協議会活動は着実に成果を上げている。
永田 22年度は支社案件も含め、新たな協議会を3件以上立ち上げたい。現在、温度管理を望む菓子メーカーと協議会を組成し、当社所有の31フィート冷凍コンテナに企業ロゴを入れ、鉄道利用をさらに拡大してもらう案件を進めている。利用運送企業の集配効率向上策やドライバー不足対策も重要テーマ。緊締装置を付けていない一般トラックで貨物駅まで荷物を持ち込めるJR貨物の積替ステーションの活用法を協議会で検討している。
―3月運行開始のフォワーダーズブロックトレインの利用拡大も鍵。
永田 鉄道シフト推進に向けた輸送力の安定確保を主眼に10両分を買い取る決断をした。当初は物量の確保などで消極的な意見はあったが、月を重ねるにつれ、問い合わせや積載個数が増えてきた。営業元請けである当社でもある荷主に提案したところ、好感触が得られ、今秋に向け新規輸送を計画中だ。
―課題は。
永田 百済タ発と比べ越谷タ発の利用が弱く、双方とも土曜出荷の貨物が少ないといった点はあるが、カーボンニュートラル(炭素中立)やドライバーの残業規制強化に伴う2024年問題への対応は追い風になる。JR貨物や全通系利用運送企業との連携を強め、貨物鉄道の優れた環境特性と労働生産性をPRし、利用拡大に努めていく。
三角運用で効率アップ
―31フィート冷凍コンテナの活用も重点に。
永田 冷凍コンテナは現在32基体制。21年度、荷役作業の効率と労働安全性の向上へ3基導入した31フィートオートフロアコンテナと共に利用を広げ、必要に応じて増備を進めたい。半面、往復で実車化できていない課題もあり、荷主が望む輸送区間を組み合わせ、極力空回送区間を減らす取り組みを展開。マッチングによるコンテナの三角運用が一例で、荷主Aの製品を大阪→札幌へ輸送し、札幌→盛岡は空で回送、盛岡→大阪へ荷主Bの製品を運ぶ流れだ。温度管理輸送を望む荷主の数を増やし、運用効率をさらに高めていきたい。
―BCP(事業継続計画)対策強化へ内航フェリーの利用も拡大。
永田 船社との相互利用を図りつつ、激甚災害による長期線路寸断、季節波動に伴う輸送力不足といった荷主の不安感を払拭することが目的。現在週1便で利用中の商船三井フェリーの大洗(茨城県)―苫小牧(北海道)航路では、定期利用を支える上り方向の貨物の確保、駅からのJRコンテナ持ち出しといった課題を整理した上で週2便体制にしていく。栗林運輸との連携で、清水(静岡県)―仙台航路の利用も検討している。
記者席 ゴルフと経営
「ゴルフは、心と体をコントロールしなければいけないことを教えてくれる」。息抜きになるのはもちろん、「どうしたら狙った方向へ常に良い当たりを打てるかという再現性が求められるスポーツ」と捉えプレーに臨む。打ち損じた時は、精神の鍛錬が足りないと感じるという。
全通系ネットワークを支える230社の利用運送企業や、顧客との交流を深めるためプレーする機会は多い。北海道会、みちのく会、越路会、東名大通友会、中国通友会、九州会と全国規模の利用運送企業の集まりの際も、懇親ゴルフは付きものだ。
「人脈構築やコミュニケーションの深化といった目的もあるが、精神修養が必要という意味で経営に通じる」。ストイックなプレースタイルを自負しながらも、時に冗談で場を和ませることを忘れない。