インタビュー

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【 社長インタビュー 】

現場とデジタルを融合 生産性高め環境改善

2022年04月26日

トランコム 武部 篤紀 社長

 1日に就任したトランコム(本社・名古屋市)の武部篤紀社長は、「現場が第一」を経営の信条とする。「はこぶ」改革の実現へ、拠点増強に加え、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進し、外部企業との協業も加速する。生産性を高め、労働環境の改善に還元。激動の時代にふさわしい競争力の創出へ、歩を進める。

 ―1日、社長に就任した。
 武部 昨年11月ごろに(社長就任の)話があり、翌12月末の取締役会で決まった。創業家3代目で驚きはなかったが、準備はしてきた。トップとしての責任を感じている。
 ―経営で大切にしていることは。
 武部 現場が第一。より良いサービスをつくり、良い提案ができなければ会社の発展はない。営業面は気にしている。また、会社は社員がいてこそのもの。皆で課題に、夢に向き合い、取り組んでいくことが大切だと思っている。

自前で拠点造り多様な輸送

 ―業界の現状をどう見る。
 武部 日本のGDP(国内総生産)は伸び悩み、コロナ禍もあって市場環境は厳しい。さらに燃油高騰がコストを押し上げる中、業界に携わる全ての人の頑張りには頭が下がる。だが、残念ながら運賃水準は、皆が幸せになるようなものとは言えない。トランコムという会社ができ得る全てのことに取り組んでいきたい。
 ―業績について。
 武部 2022年3月期の連結売上高は、新型コロナウイルス流行前の20年3月期(約1600億円)付近まで回復する見込みだ。拠点新設など一層の回復に向けた準備も進めている。
 ―センター新設は。
 武部 当社は賃借が基本だが、今自社開発で進めている案件が2つある。岡山と愛知で今期中に着工する。新たな「はこぶ」仕組みづくりに力を入れており、自社開発であれば、トラックのセンターへの出入りに重点を置いた造りにして発着の回転数を上げられ、フルトレーラーの連結に必要なスペースの確保などもしやすくなる。
 ―自社開発により運ぶ力を高めると。
 武部 多種多様なトラックを運用して扱う荷種の対象を広げる。例えば平ボディー車で建機や資材を運んだり、冷蔵・冷凍の領域などが該当する。そのため、強みである求荷求車事業で培った輸送ネットワークを増強していく。
 ―増強の手段は。
 武部 DXの力で輸送協力会社やドライバーの利便性を高めていく。中継拠点の設置などドライバーの労働環境改善にも取り組み、大量に荷物を運べる環境をつくっていく。

DXで外部企業と協業加速

 ―DXに必要なリソースは。
 武部 毎期10億円ほどIT投資をしている。グループ会社のトランコムITSなどにIT系エンジニアも有する。一方、外部企業との協業によるDXも加速している。
 ―7月、アクセンチュアにトランコムITSの外販事業を譲渡する。
 武部 トランコムITSのエンジニアの4分の3に当たる約190人がアクセンチュアに移るが、当社はDXによる最適解の提案、提供を受ける。アクセンチュアはグローバルに事業を展開し、DX関連で多数、日系メーカーと取引している。サプライチェーンの安定と高度化に向け、ロジスティクスは切り離せない。協業に大きな期待を寄せている。
 ―課題は。
 武部 成長していくためには、人材が圧倒的に足りない。グループに1500人ほどいる総合職以上の体制を一層強化しなければならない。海外展開のさらなる拡大にも挑戦していきたい。

記者席 中国で唯一無二の財産

 2014年、大手商社との合弁で進める、自動車部品物流の中国でのプロジェクトで、天津へ赴任することに。駐在事務所には20人ほどの従業員。だが、周りに日本人は1人もいない。
 まず、外国人として扱われる事実に衝撃を受けた。言葉も通じない。現地責任者として、どう仕事を進めていくか。試行錯誤の連続。この経験が「かけがえのない財産になった」。
 2年後に帰国。海外担当に加えて自動車関連担当を兼務し、国内大手自動車メーカーを相手に1人で営業。19年、取引を成立させた。
 だからこそ、品質を担保する現場力と、ニーズに応える提案力を重視する。趣味はカフェでくつろぎ、街行く人を観察すること。「良い趣味とは言えないのかもしれないけれど」。