インタビュー

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【 社長インタビュー 】

コロナ禍こそ積極姿勢 自前化、コスト削減を追求

2021年09月07日

富士運輸 松岡 弘晃 社長

 大型トラックの保有台数を2025年に3000台、35年には5000台と200拠点体制を目指す富士運輸(本社・奈良市)。最先端のIT管理システムを武器に、厳しさが増す長距離輸送で存在感を示す。松岡弘晃社長は「コロナ禍だからこそ増車、新拠点、M&Aと単年度赤字を計上しても積極的に投資する」と語り、コロナ後を念頭に業容拡大に向けた種をまく。

 ―コロナ禍にもかかわらず積極的な姿勢を打ち出している。
 松岡 営業方針で取引先の荷主、元請けの現況をつかむよう努めている。物流は1日も止めてはならないという社会的使命を帯びているからだ。前期には8社のM&Aを行い、冷凍・冷蔵輸送の九州コールド支店(佐賀県基山町)をはじめ、グループで合計27拠点を整えてネットワークを強化。108拠点体制となった。
 ―なぜか。
 松岡 ピンチはチャンスだ。リーマン・ショック後の10~11年、単年度赤字を覚悟しても拠点の開設や増車といった投資を推し進めた。その後は景気が戻り、売上高は一気に33%伸びた。コロナ後を見据えた戦略と言える。
 ―直近の業績は。
 松岡 21年6月期の連結売上高は413億円(前期比5・0%増)、単体では316億円(同8・6%増)。受注減が要因で当初の計画は下回ったが、輸送網と保有台数が評価され新規顧客を獲得し、増収増益を確保した。今期は連結売上高470億円を見込んでいる。
 ―徹底したコスト削減も強み。
 松岡 その通り。トラックの大量一括購入、100人以上の整備士による車検・整備、33拠点の自家給油設備、ETCの直接契約などが挙げられる。さらに全車両の98%にミシュランタイヤを採用し、国産タイヤ比1・5倍の長寿命化で、整備の負荷は3分の1と利点がある。スケールメリットも生かし、他社と比べ1割ほど損益分岐点が低いのではないか。

1便ごと費用利益が見える

 ―業界の長距離輸送力が低下する中で、存在感が際立つ。
 松岡 自社で開発するITシステムが根底にある。GPSを活用する車両動態では速度、休憩時間などを管理する。さらに1便ごとに運賃からドライバーの給与、割り増し手当、運送経費、高速道路代といった費用、最終的な利益が一目瞭然。自前で課題を克服し、実績を積み上げた自社開発のシステムだからこそ成せる業だ。
 ―中継輸送も鍵を握る。
 松岡 積み降ろしを別のドライバーが担当する分業制を加速させている。例えば、関東発関西着便では奈良で乗り換えを行う。荷降ろしを別のドライバーが担うことで、複数箇所の納品先がある場合や、待機時間が長い場合も問題がない。現在は全国で50便以上と全体の1割に満たないが今後、広げていく。
 ―「2024年問題」は直面する課題だ。
 松岡 先のシステムで管理体制は万全。課題は現体制をどのように保ち、発展させるかだ。まず23年度にはドライバーを100人超採用する。24年1月から一足先に労働時間を一斉に短縮。同年4月までの3カ月間で確認し改正法令の適用を迎える算段だ。