インタビュー

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【 社長インタビュー 】

最小経費で最大限稼ぐ 利益率目標、前倒しで

2021年08月31日

新潟運輸 坂井 操社長

 新潟運輸(本社・新潟市、坂井操社長)は2021年4月期の上期を赤字で折り返したが、下期で大きく巻き返し黒字を確保した。コロナ禍をきっかけに収益力を高めた結果、「最小限の経費で最大限の売り上げをつくれば収益は伸びてくるというのが今期」と坂井社長。22年4月期は、中期経営計画の営業利益率3%の目標を1年前倒しで達成する見通しだ。

 ―前期は新型コロナウイルス感染拡大の影響を強く受けた。
 坂井 5月の出だしは先の見えない状況で、上期で赤字を計上した。19年の消費増税前からの荷動き鈍化を踏まえ、感染拡大の前から経費削減に着手。感染拡大後はあらゆる経費の見直しを進めた。下期以降、効果が表れ、21年4月期(単体)の売上高は前期比6%減の525億円、営業利益は同32%減ながら6億円、当期利益は前期並みの5億円を確保した。
 ―経費見直しの内容は。
 坂井 さまざまだが、最も大きかったのは集配で、外注費の抑制を中心に前期比17%削減、運行では16%削減した。仮に物量が新型コロナ前の水準に回復したとしても、経費を元の水準に戻すことはないだろう。
 ―今期は。
 坂井 一定の物量を確保しながら、最小限の経費で最大限の売り上げをつくれば収益は伸びてくるというのが今期。足元の21年5~7月期は増収増益で発進し、7月の売上高は20年比5%増だった。多少の物量増があってもいまの体制の中で回せるため、上期は継続して経費を削減できる。
 ―収益力向上を就任当初から掲げてきた。
 坂井 今期は営業利益率3%を目指す。現中計は来期が最終年度だが、利益率については1年を待たずして実現したい。前期からの経費削減に加え、物量の自然増プラスアルファ、上越支店のホーム併設倉庫の完成、海老名支店の新築移転も業績アップにつながると期待している。

設備と人の充実も並行して

 ―設備投資だけでなく採用にも積極的。
 坂井 もともと人手不足だった中で、18年に採用戦略の部署を設け人材確保に努めてきた。コロナ禍も採用にプラスに働き、前期、正社員は100人余り増員できた。うち7割はドライバー。今期も増員するが、輸送力の内製化に充てるか、従来人手が不足している所に補充するかは各現場で最適な在り方を検討している。人件費の負担増も相当だが、積極採用の成果がいま出てきている。
 ―働きやすさの点では休日も増やしてきた。
 坂井 4週間のうち3週間は2日休めるようになった。いずれ完全週休2日制にとの思いはあるものの、公休や年次有給休暇の未消化が一部で課題となっており、休みが増える分給料を上げ、増員し、サービスにも支障のない体制を整えることが前提になる。

特積みの配車自動化は複雑

 ―デジタル化はどうか。
 坂井 自動配車の研究を始めて1年になる。車両台数、店所所在地やドッキング拠点、運行日報など物流、施設、コンプライアンス(法令順守)のデータを基にコンピューターが配車を組む。県境をまたぎ数十店舗のネットワークを網羅する、運行・集配から成る特積みシステムは複雑なアルゴリズム(計算方法)になり、ハードルが高い。
 ―特積み業界ではロジスティクスとの一体運用が主流だ。
 坂井 自社で運べるため競争力がある。輸送力確保の点では、顧客にとって最大のメリット。また、今後はラストワンマイルがますます重要になるとみている。配達も集荷も幹線も、貸し切りも含め内製化が鍵になる。

記者席 出すものを出せてこそ

 「出すものを出せないと元気が出ない」と苦笑い。従業員への給料のことだ。2日の海老名支店のしゅん工式では「これほどきれいな施設の中で、みんなが仕事をしている姿を思い浮かべるのはうれしい」と目を細めていた。
 前期の出だしは相当の赤字を出し、本当に駄目かと思ったという。全員で挽回できたことへの感謝を、期末に「ありがとう手当」の形で表し、パート・アルバイトも含め一律5万円を支給した。直筆の手紙をコピーしたものも添えた。
 コロナ禍による物量減でドライバーの歩合給も影響を受ける中、今期から24年4月期にかけて運行、集配共に毎月の賃金5%アップを指示した。「必死になって汗をかく人たちが報われてこそ、運送会社はうまくいく」