インタビュー

【 社長インタビュー 】
変革期こそ「両輪」で 顧客、パートナーと共に

2021年08月24日
日野自動車 小木曽 聡 社長
幹線輸送を軸に物流効率化に挑むネクスト・ロジスティクス・ジャパンでの取り組みをはじめ、近年事業領域の拡大を見せる日野自動車(本社・東京都日野市)。6月に就任した小木曽聡社長は「CASEの変革の時こそ、ユーザーやさまざまな協業先と共に両輪でやっていくことが大事。価格や実用性の点でもユーザーに評価されるものを提供していく」と話す。
―就任直前、政府が2050年カーボンニュートラル(炭素中立)への成長戦略を示した。
小木曽 炭素中立はもともと重要だが、日本では単純に電気自動車(EV)を売ればいいという話ではない。部品を含め製造時の二酸化炭素発生やエネルギー事情も考慮すると、全て電気ではなく、グリーン水素を使った方が良いかもしれないし、バイオ燃料を使ってもいいかもしれない。炭素中立を目指す中で、さまざまな選択肢の組み合わせが必要になる。
―4月、下義生前社長(現・会長)が環境で30年度の中間目標を掲げた。
小木曽 50年に向けた通過点と位置付け、二酸化炭素排出量を新車走行時で13年度比40%、工場で同40%、製造から廃棄までの車両ライフサイクル(生涯)で同25%削減する。政府の支援も必要で、産業界の連携はもちろん、産学官が連携して目標に向かい一歩ずつ進むことで最終的にたどり着けるのではないか。
ユーザー目線での人づくり
―7月の就任会見では人づくりを強調した。
小木曽 ユーザーと社会の役に立つことが全ての起点。CASEの変革に対しても、ユーザーに必要とされない商品・サービスになってしまっては駄目で、きちんと考えられる人づくりができないといけない。親会社トヨタ自動車とも共同で、大型FC(燃料電池)トラックの実証プロジェクトを日米で進めている。普及させるための使い勝手、費用対効果にはまだまだ課題があり、進化させることで車両の普及とインフラ施設増加の好循環につなげていきたい。
―水素を使うFCの注目は高まりつつある。
小木曽 世界的に、商用車を中心にさまざまなプレーヤーが競争に乗り出しており、安穏としてはいられない。一方で、ライバルの存在は技術を進化させインフラ整備を促進する上で追い風だ。
CASEで貢献領域が拡大
―近年は物流効率化にも力を入れ始めた。
小木曽 ユーザーのニーズに耳を傾けるからこそ良いものが生まれる。その重要性がCASEによって従来以上に増しており、コネクテッドサービスを通じ車両管理、運行管理など物流そのものに当社が貢献できる領域が広がったと感じる。忘れてはいけないのは、ユーザーの保有のところで一緒に取り組まなければならないということ。ユーザーの側では優れた物流のアイデア、サービスがあって、当社の側では、例えば電動化ではコマーシャル・ジャパン・パートナーシップや(独フォルクスワーゲン傘下の)トレイトン、中国・比亜迪汽車工業(=BYD)とも協業して、両輪でやっていくことが大事だ。
―自身もユーザー目線の意識が強い。
小木曽 トヨタ自動車時代、初代プリウスに携わり、商品・サービスに関してユーザーと販売店の間に入って、ユーザーの生の声を聞き、スタッフと連携して要望に応えていくということを経験した。発売当初は年間約1万台の販売。当社は今期、世界15万台の販売を計画し、桁は違うが、車型も特装も使い方も多様な商用車では、そうした姿勢の重要性をますます意識している。