インタビュー

【 社長インタビュー 】
ネットワークさらに充実 MS推進協議会を中心に

2021年07月20日
全国通運 永田 浩一 社長
全国通運(本社・東京)は今年度、荷主と一体で鉄道コンテナ輸送を基軸とした物流の全体最適化を図るモーダルシフト推進協議会活動を中心に、「全通系ネットワーク」のさらなる充実を図る。永田社長は「環境が大きく変化しても、事業を継続でき、さらに発展するよう経営基盤を盤石にしたい」と意気込む。
―コロナ禍は鉄道コンテナ輸送にも大きな影響を及ぼした。
永田 企業間物流の需要減少などで厳しい経営環境に直面した半面、感染防止対策に明け暮れた1年だった。豪雨や豪雪、地震といった自然災害による輸送障害も重なり、全通系の2020年度コンテナ輸送実績は、前年度比8・9%減の797万6000トンだった。
―目下の事業環境をどう認識。
永田 直近では、物量減少に伴うトラックの余剰感から、一部で逆モーダルシフトの動きがあると聞く。だが、カーボンニュートラル(炭素中立)の実現、24年からのドライバー残業規制本格化、生産性向上やリードタイムの緩和といった「ホワイト物流」推進運動により、モーダルシフトの流れはむしろ加速すると考えている。
DXやIT化取り入れつつ
―今年度の基本方針は。
永田 コロナ禍からの復興・再生を期す年にしたい。ウィズコロナ、アフターコロナの環境下で急激に進むと思われるDX(デジタルトランスフォーメーション)やITを取り入れつつ、「全通系ネットワークの一層の充実」と「経営改革の推進による経営基盤の強化」に注力する。
―モーダルシフト推進協議会活動の展開は。
永田 内容をさらに深め、拡大する。既にウェブ会議を開催できる環境を整備し、ドライバー残業規制本格化に向けた輸送力確保の協議も開始した。本社主体だけでなく、支社独自の活動を立ち上げる計画もある。
オートフロアCの導入促進
―31フィート冷凍コンテナによる温度管理ニーズの開拓も強化。
永田 20年度は一部で利用拡大があったものの、当初見込んだ案件がコロナ禍で延期・中止となり、コンテナ新製を見送った。今年度は、温度管理ニーズを持つ荷主への再アプローチ、新規荷主の獲得を推進。特に冷凍菓子メーカーへの提案を進め、利用拡大を図る。
―安定輸送の確保へ内航船利用を拡大する。
永田 荷主の輸送モード選択で、鉄道を基軸にしてもらい続けるためにも重要だ。昨年、商船三井フェリーの大洗(茨城県)―苫小牧(北海道)航路の定期利用を始め、栗林運輸との試験輸送も実施。新たに商船三井との勉強会を開始した。今年度は、船社にも鉄道を使ってもらう相互利用に加え、井本商運のコンテナ船利用の有効性についても検討を進める。
―新たな取り組みも。
永田 通運企業が手掛ける集配先での荷役作業効率化を目的に、荷台の床面が移動する31フィートオートフロアコンテナを導入し、顧客の利用を促していく。パレット化が難しい条件下でも、手荷役を要するバラ貨物を積み込む際、コンテナの奥へ持ち運ばず作業できる利点のあるツールだ。
―JR貨物のブロックトレイン拡大に向けた動きにも対応する。
永田 通運貨物のための「フォワーダーズ・ブロックトレイン」を新設する構想があり、当社にも投げ掛けがあった。運賃設定や物量確保など実現へ課題は多いが、JR貨物と全通系の通運企業との信頼関係をさらに強める良い機会。将来にわたる輸送力確保のため、前向きに取り組みたい。
記者席 「誠意」こそが大切
今年度の基本方針には「経営改革の推進による経営基盤の強化」というもう1つの柱がある。会議体の見直しによる内部統制強化、組織の大ぐくり化による柔軟で効率的な業務体制の確立、社員の待遇改善、人材の確保・育成、DXを見据えたデータ化の推進と業務支援システムの拡充といった重点戦略を掲げ、「着実、迅速な改革で盤石な経営基盤をつくる」。
「至誠にして動かざる者はいまだこれ有らざるなり」「天網恢恢(てんもうかいかい)疎にして漏らさず」の故事を座右に置く。誠意を示せば、相手は動く。だが、お仕着せはいけない。「自ら足を運び、直接会って話し合うことが、強固な信頼関係につながる」。コロナ禍で出張や訪問が制限される中だからこそ、その思いを強くする。