インタビュー

【 社長インタビュー 】
増収増益へ営業が鍵 今期は「人材育成の年」

2021年05月11日
中越運送 中山 元四郎 社長
中越運送(本社・新潟市、中山元四郎社長)はコロナ禍に直面した2020年12月期を、愛知県一宮市に新設した中部ロジスティクスセンターの倉庫フル稼働や国際事業の回復、コストの見直しによって乗り切った。今期は新潟県上越市に物流センターを新設するとともに、「〝育成の一年〟と位置付け、若手の成長を促す」(中山社長)。
―前期は新型コロナウイルスの感染拡大が大きな影響を及ぼした。
中山 外出・移動抑制で飲食店向けの酒類・食品や土産物にも影響が見られた半面、ホームセンター、通販、半導体関係は堅調だった。当社全体では特積みの物量減が大きく響いた。
―物量の状況は。
中山 全国で緊急事態宣言が出された昨年のいまごろはおととしに比べ2割ほど減少。その後、1割減程度まで持ち直した。人の移動の回復もあり10、11月と一層回復を見せたが、年明け以降は芳しくない。中国経済の影響が強い国際貨物は、航空主体に昨年前半の落ち込みから急回復している。
中部でも物流メニュー充実
―中部ロジが昨年2月にオープンした。
中山 もくろみ通り順調に稼働している。新たに倉庫を構え、関東や新潟で取引のある顧客の商品保管も受注し、満床となった。10月には新潟東港ロジスティクスセンター内に危険物低温倉庫も増設した。県内をはじめ施設や機能が充実してきたことで、顧客ニーズにより柔軟に対応できる体制となった。
― 前期の業績は。
中山 減収減益ながら経常利益はほぼ横ばい。コストを見直し合理化を図った。特積みでは、運行便の土曜日の空車回送削減を目的に出発店の見直しや便数の絞り込みを実施した。出発時間の前倒しや業務の内製化も推進。燃料費減少も寄与した。
―今期の滑り出しはどうか。
中山 1~3月は収益は順調だったが、内訳を見ると収入、コスト共に減少した。一方、4月は収入が回復しコストも増加した。コスト削減効果が一巡してきた。
上越に新倉庫東京は強化を
―今期は何が鍵に。
中山 営業だ。3~4月はキャンペーンを展開し、一部成果を上げ、種まきもできた。物量の回復に努め増収増益を目指す。秋口には上越市で危険物を扱えるセンターが稼働する。好調な業種の顧客をどれだけ取り込めるか。関東エリアの営業強化も重要だ。交通事故ゼロ、輸送品質向上にも引き続き取り組む。
―人材も強化する。
中山 今期を「育成の一年」と位置付けた。世代交代を進めていく上でも、若い社員の育成は欠かせない。2月の人事では例年より多く執行役員を選任した。若手はどんどん成長してほしい。部長クラスにも部下を育ててほしいと言っている。ドライバー採用については、コロナ禍でエッセンシャルワーカーへの認知が進み、以前よりも採用環境は改善している。
―新型コロナの下で教育はどうしている。
中山 ドライバーの場合、独り立ちする前に本社で1日初任運転者研修を行うが、昨年から本社研修は対象地域を限定している。安全のための全ドライバー向けの集合研修も現在は現地に資料を送付するにとどまる。ビデオ会議システム「ズーム」の活用が進んだことで、各所長への指示や意思伝達はしやすくなった。
―おととし導入したハンディーターミナルは1月の大雪で活躍した。
中山 配送管理に役立てており、配達完了が照会システムに即時に反映される仕組み。1月の上越地区の大雪では問い合わせの電話を減らすことができ、現場の負荷軽減につながった。
記者席 提案生きる環境に
コロナ禍に見舞われ厳しい経営環境下でも、計画してきた設備投資が着実に実行され、実を結んでいる。上越市に新センターが完成すれば、危険物倉庫も含めて新潟県内のネットワークはさらに充実する。中部エリアでも倉庫を構え、「新たな展開が可能になる」と期待をのぞかせる。
特積み業界では適正運賃への理解も進み、値下げを巡る大きな動きは見られない一方、「全体のコストを削減したいという相談はある。運用を見直して車両台数を減らせないか、倉庫を見直せないかといったことで、提案の幅が広がる」。
特積みの他、医・食・住の共同配送、国際、成長業種と裾野を広げてきた結果が業績の安定ぶりにも表れている。安全と品質を向上させ、社員の成長も図りながら、さらなる発展へ歩を進める。