インタビュー

【 社長インタビュー 】
逆風下で増収増益へ 「物量3%減」はね返す

2015年04月28日
西濃運輸 大塚 委利 社長
セイノーホールディングス(本社・岐阜県大垣市、田口義隆社長)グループの中核を担う西濃運輸(同、大塚委利社長)の平成27年3月期連結決算は増収増益の見込み。物流量落ち込みの逆風下で、収入増施策やコストの適正管理などの成果が功を奏した。大塚社長に前期の総括と今期計画を聞いた。
――前期1年間を振り返っての心境は。
大塚 もがき耐えながら、懸命に増収増益の方策を練り実行してきた年だった。
――取扱量に変化が。
大塚 年度当初に物量は前期比3%減を予測したが、実際は通期で3%強落ち込んだ。減少幅は第4四半期が最も大きく、第1四半期が続く。
――前期業績は。
大塚 苦しみながらも増収増益を果たした。厳しい経営環境だったが、全社の努力の積み重ねが結果に反映された。
――社長に就任し4年目を迎えた。
大塚 社長に就いて2年目から据えた「3つの柱」が徐々に社内に根付いてきたと実感している。新規開拓による収入増、費用の適正管理の推進、利益の創出を三位一体で取り組んできた。
新規荷主獲得70億円増収に
――荷主獲得の成果は。
大塚 新たな顧客で年間70億円の増収を達成した。平成25年度から営業マン「アタッカー」の名称を「プランナー」に変更。西濃を代表する営業マンとして300人の社員に認定証を与え、プライドを高めた。高度な交渉力を身に付けた人材が成果を引き寄せた。
――運賃・料金の是正にも手応えが。
大塚 コストアップ要因がめじろ押しの状況下で顧客に理解を求めてきた。中継料、付帯作業料など実費負担も要請し、納得してくれる顧客が増えてきている。
――費用管理も厳密に。
大塚 使う費用以上の収入を確保するだけでなく、社員数・車両台数・時間・日数・単価の5項目を物差しに、総費用を収入以下に抑える適正管理システムを徹底した。
――打ち出した手が全社で功を奏した。
大塚 運賃是正、運行コースの見直し、事故防止など34項目の施策の結果は19勝15敗で終了した。引き続き今期の展開につなげていく。前進できる余地はある。
――事故防止策の効果は。
大塚 自社に責任がある商品事故は33件。確実に減ってきているのは、地道なオペレーション技術の向上と「事故ゼロ」を目指す社員たちの努力のたまもの。
安全運転採点で新評価制度
――店所への新評価制度もスタート。
大塚 2200台の運行車にデジタルタコグラフ(運行記録計)とドライブレコーダー一体機を導入。機器による運転採点評価で平均95点以上の店所を「セイノーセーフティグランプリ」として、4月の合同会議で表彰した。全店所の半分以上が受賞できた。
――社員意識も向上。
大塚 同じ職場のセールスドライバーにも好ましい影響を与え相乗効果をもたらしている。燃費も導入後8%改善した。
――設備投資計画は。
大塚 成田の新拠点は青写真が完成。今期にも稼働できる見通し。来年には2階にもホームを備える東京支店や、埼玉県三郷市、静岡市での拠点建設計画が控えている。
――新年度の出だしはどうか。
大塚 4月20日までの実績は収入が前年同期比4%増。まずまずのスタートが切れた。今期は輸送量で2%の回復、運賃是正で1%増を見込み、収入で2.71%増を目指す。
記者席 利益創出の気概前面に
仕事のことは片時も頭から離れない大塚社長が、取材時に安堵(あんど)の表情を見せた。物量の減少が進む1年だったにもかかわらず、会社として目標数字を手中にした。
「厳しい年だったが、いまは堂々と振り返ることができる。全社の真剣な取り組みの成果」。立ちはだかる壁を突破できた達成感が見て取れた。
営業開拓とともに、収支を重視した費用管理や戦力の適正配置にも力を入れた。「利益そのものをわれわれの努力で生み出していく」。その気概が全社を引っ張った。
気分転換は休日の菜園の手入れ。60歳ごろに始めた。エンドウ、イチゴの収穫期。実りを手にする時期である。
(略歴)
大塚 委利氏(おおつか・しずとし) 昭和23年10月28日生まれ、66歳。岐阜県出身。46年愛知大法経卒、西濃運輸入社。航空海運事業部航空海運部長、取締役営業本部担当、セイノーホールディングス取締役経営企画室担当兼西濃運輸取締役経営改革本部担当などを経て、平成22年セイノーHD輸送事業企画部担当兼西武運輸(現・セイノースーパーエクスプレス)社長、23年西濃運輸社長。(谷 篤)