インタビュー

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【 トップインタビュー 】

週休2日制、完全取得へ 福岡で複合C運営を拡大

2020年11月24日

久留米運送 二又 茂明 CEO

 10年越しの夢―。今年4月、完全週休2日制に移行した久留米運送(本社・福岡県久留米市)。二又茂明CEOは社長に就任した2010年、若年層のドライバーが集まりにくくなる状況に強い危機感を抱き、現場の労働環境を世間並みに改善すると誓った。約4年にわたった準備、現況、今後の取り組みを聞いた。

全社員の96%が達成に

 ―今年4月に本格移行した完全週休2日制はどうなったか。
 二又 目指す姿は100%の取得で、一人一人が充実した日々を過ごすこと。全社員の取得率は9月実績で平均96・3%だったが、完全週休2日の環境・体制は整った。職種別の内訳では、職員、業務員は100%達成。集配ドライバーは39カ所のうち3カ所、大型ドライバーは24カ所のうち2カ所で未達となった。
 ―ごくわずかだが、未達の要因は。
 二又 顧客の予測し難い大量出荷と、土日祝日の営業だ。大量出荷には全戦力で対応するため、集配ドライバーなどが影響を受ける。また、土日祝日に稼働する顧客も少なくないが、近い将来は収束すると考える。今後も創業時の「お客様ファースト」精神を貫くサービスを提供する。
 ―振り返ると、17年1月にプロジェクトチームを立ち上げた。
 二又 10年の社長就任時に抱いていた1つの夢が現実となり、万感の思い。08年のリーマン・ショックを端緒に不況に陥ったが次第に好転する中、高卒ドライバーが減少の一途をたどった。業界は長時間労働に加え、3K(きつい・汚い・危険)のイメージが強く、高校の進路担当者からトラック企業を推薦しづらい状況と聞き、強い危機感に襲われた。そこで時間外労働の短縮に着手し安心・安全・安定な企業を目指した。

「人は宝」正社員数が1・7倍

 ―具体的には。
 二又 人材は企業にとって大切な財産。プロジェクトでは、週休2日制に必要な人員を各店で割り出し、次に業績に左右されない雇用計画を策定した。18年度には人件費増を別枠とする事業計画を定め、現場責任者の評価にも配慮した。同時に、面接から採用決定までの手続きに対処するため、面接時に現場の判断でアルバイトとして即雇用できるといった施策を講じた。結果、正社員は1173人(10年3月末)から2030人(20年3月末)と約1・7倍になった。
 ―既存社員の時短で給与に影響は。
 二又 とても重要なこと。時短すると給与は目減りするため賃金体系を見直した。例えば、前年と比較して労働時間が短くなった場合、生産性向上手当を支給する制度を19年度に導入。基本給、賞与は継続的に上げるとともに、月額手当を改定し固定部分の割合を高めたことで賃金水準はむしろ上昇した。

品質に自信、着実な運賃改定

 ―前出の方策には原資が欠かせない。
 二又 ハブ機能や中継輸送を生かした運行システム、集配体制の充実、長年培った顧客への「おもてなし精神」など、総合的な輸配送品質には自信があり、10年前に値上げを決断した。一時、交渉を控えたが、3年前の大手宅配が契機となった値上げ機運もフォローとなり、10年比で約2割の運賃・料金アップを得られた。
 ―次の戦略は。
 二又 働き方改革や、今後改正される改善基準告示を考慮すれば、長距離幹線輸送はさらに厳しくなる。そうなると九州は物流センターの需要がさらに高まると予測する。福岡一極集中が加速すると確信し、福岡県古賀市に約3万6000平方メートルの用地を取得し、物流拠点を併設したトラックターミナルを建設する。センターには第4世代AI(人工知能)ロボットを活用した自動倉庫や、多層階ランプ構造といった構想を描いている。25年の完成が楽しみだ。