インタビュー

メインビジュアル

【 社長インタビュー 】

人材育成が鍵を握る 無限の可能性を追求する 

2019年12月03日

ヒガシトゥエンティワン 金森 滋美 社長

 2025年3月期を最終年度とする10年長期経営ビジョンが進行中のヒガシトゥエンティワン(本社・大阪市)。19年3月期の売上高は、計画が始まった15年3月期と比べ1.3倍強の234億9900万円となった。金森滋美社長はデジタル化の進展で取り巻く環境が大きく変わる中「人材育成を軸に置き、従来にない事業とサービスを提供し、難局に挑む」と語る。

 ――長期経営ビジョンの中で、第2段階「進化成長期」を歩んでいる。
 金森 18年3月期までは第1段階「構造転換期」と位置付け、首都圏の事業基盤の強化、組織力強化などを図り、着実な成果を上げた。現在、21年3月期まで進化成長期の前半3カ年として、売上高250億円以上、経常利益10億円を目標に掲げている。
 ――達成の鍵は。
 金森 最も重要な課題は人材育成だ。優秀な若手を確保するため「アメロジ(アメージング・ロジスティクス)」を策定した。アメージングとは、アメーバ(多様性)とアメージング(奇想天外)の造語。無限の可能性を追求できる企業だと発信している。社員数は16年3月末で470人だったが、19年9月末には871人と強化された。

既成概念通じなくなる

 ――人材強化の背景とは。
 金森 旧来の体制が大きく変革する中、業界が持つ既成概念が通じなくなる恐れがある。例えば大手IT(情報技術)企業の戦略はさまざまな業界を席巻し、破壊力がすさまじい。デジタル革命の波は人類が経験したことのない速さで進んでいる。物流業界も他業界から参入され、主導権を一気に握られる可能性さえある。
 ――対抗するための打つべき手はあるのか。
 金森 業界ではアセット企業が強いといわれているが、果たして今後も強みだと言えるのだろうか。デジタル化の進展で将来、物流センター、ドライバーが企業の重荷になるかもしれない。激動する環境下で生き残るには、少ないアセットで優秀な人材を持ち合わせ、顧客の想像の先を行く物流サービスの提案と実現を行う。

遊び心とチャレンジ精神を

 ――難しい課題だ。
 金森 時代の変化を敏感に感じ取り、ビジネスとして育てる力が必要だ。従来の成功体験にこだわらないためにも世代交代が欠かせない。今年、役員に44歳、課長には31歳を抜てきした。
 ――社員は自己研さんが欠かせない。
 金森 ワクワクするような遊び心を持つこと。世の中にない新しいものを見つけ出して挑戦する。失敗しても構わない。いずれにせよ発想力、決断力、リスクマネジメント力が養われる。10月からオフィスカジュアルスタイルを始めた。水曜日はカジュアルな服装で仕事を行っている。遊び心を養う一環だ。
 ――事業の拡大や強化が期待される。
 金森 この10年で取り巻く環境が変わることは間違いないが、その先の答えを持ち合わせていない。大型センターを通じた3PL事業、介護サービス、M&A(企業の合併・買収)など新規分野で若い世代が成長している。物流という仕事を楽しみながら、大きく羽ばたくことを期待している。

記者席 安定から挑戦へ

 長期経営ビジョンの狙いは、しがらみからの脱却だ。物流企業の中には主要な顧客を持ち、相互に依存する関係は少なくない。第4次産業革命ともいわれる大きな変化に強い危機感を抱き、進化と成長へかじを切った。
 事業を支える社員には「物流にとらわれないように」と望む。オフィスカジュアルスタイルの導入では当初、反対もあった。どこまでがカジュアルな服装なのか、目安をとの声だった。最終的には自己判断に落ち着いたが、「各人が気付くことが重要」と変革の土壌をつくる。
 1944年に運送会社13社が統合して設立。長期経営ビジョンの最終年度は80周年の節目に当たる。どのように変貌を遂げるのか、大いに注目したい。