インタビュー

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【 近畿ブロック特集 】

従来の意識を転換せよ 相当な覚悟と決意を

2019年11月19日

近畿トラック協会 辻 卓史 会長

 長時間労働の改善と運賃適正化に向け、行政の後押しが図られている。近畿トラック協会の辻卓史会長は「従来の意識を転換し、各社の自助努力が欠かせない」と語る。

 ――改正貨物自動車運送事業法が成立し、間もなく1年を迎える。
 辻 標準貨物自動車運送約款の改正、「ホワイト物流」推進運動など行政のバックアップで、業界の窮状を打破する環境が整った。あとはトラック企業自身が相当な覚悟と決意を持って立ち向かわなければならない。
 ――標準的な運賃告示制度には期待が高まる。
 辻 ドライバーの労働条件を、少なくとも世間並みの労働時間と賃金を前提として算出する「指標」と解釈している。従って「伝家の宝刀」を授かったような過度の期待を持つべきではない。
 ――時間外労働の上限規制まであと4年半だ。
 辻 いまや人材は地域・業種・企業間で奪い合いの様相で、人手不足倒産も聞かれる。厚生労働省の2018年の監査結果では、労働基準法違反が全体の8割強、改善基準告示違反が7割弱というのが業界の実態。働き方改革法への準拠はハードルが高いが、やり抜かなければならない。
 ――求められているものとは。
 辻 意識改革だ。私が1989年に鴻池運輸社長に就任後、まず取り組んだのが「意識改革、制度改革、構造改革」。当時はバブル経済で業績は好調だったが、潜在的なリスクに備えるため新規分野に挑戦した。最も苦労したのが社員の意識改革。必要性が納得されれば、制度改革や構造改革もスムーズに進む。
 ――具体的には。
 辻 生き残るにはIT(情報技術)、AI(人工知能)の導入で省力化、効率化を進展させ、生産性を向上させることが不可欠。業界の約80%を占める保有20台以下の企業も対応が必要。さもなければ荷主、大手企業に対して隷属的な立場に追い込まれて主体性を持った経営が難しくなり、事業継承にも影響する。

米ロス型都市参考に発展を

 ――近畿2府4県の現況をどう見る。
 辻 近畿地方は多様性に富む文化に特色がある。今年7月、大阪府の百舌鳥・古市古墳群が世界遺産に登録され、近畿全府県が埋まった。訪日外国人は大阪府だけで1200万人となり、にぎわいを取り戻した。ワールドマスターズゲームズ(中高年齢者のための国際総合競技大会、2021年)、万国博覧会開催(25年)などを通じ、国内外から観光客はさらに増えるだろう。
 ――物流面は。
 辻 物流の量的拡大には、製造業を発展させる政策が欠かせない。大阪府はロサンゼルス型都市を目指すべきと考える。同市はディズニー、ハリウッドなどの観光振興に注力する半面、港湾、空港、鉄道を拡充し、物流や工業化、新規産業の誘致を進めた。毎年、人口増と雇用増をもたらしている。学ぶべき点は大いにあるのではないか。