インタビュー

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【 社長インタビュー 】

誠実、信頼で人材力磨く 教育に重点投資へ

2019年09月24日

トールエクスプレスジャパン 山本 龍太郎 社長

 6月、熊谷義昭前社長からバトンを引き継いだトールエクスプレスジャパン(本社・大阪市)の山本龍太郎新社長。日本郵便グループに入り4年が経過し、業績は大きく改善した。山本社長はさらなる事業の発展のためには「人材教育は欠かせない」と重視する姿勢を打ち出す。その上で、「品質を高めて顧客に選ばれる会社をつくりたい」と抱負を語る。

 ――就任の感想は。
 山本 3月下旬に内示があった時は非常に驚いた。年齢が65歳(当時)で、一区切りと思っていたところだった。初の単身赴任、大阪勤務と心新たにしている。

原点はドライバー、現場重視

 ――これまでの経緯は。
 山本 旧・郵政省の集配ドライバーから社会人の歩みを始めた。その後、郵便局長やオペレーション部門を渡り歩いた。日本郵便の役員時には、同業他社との会合に顔を出し、外の風を肌で感じ新たな学びも探ってきた。原点は現場で培った経験だ。
 ――現況をどう見る。
 山本 当社が2015年に日本郵便グループの一員に加わり、非常勤取締役として経営に携わってきた。先の経営者が事業の道筋を立てたことで、業績が大きく改善した。
 ――環境は厳しい。
 山本 労働人口減少、ドライバー不足、高齢化など課題は枚挙にいとまがない。だがピンチはチャンスと捉え、チェンジするためにチャレンジできる機会と考えれば、成長できる余地は大いにあるのでは。
 ――成長の原動力は。
 山本 企業は人なりというが、鍵は人材だ。顧客に選ばれる会社、社員には入社して良かったと思われる会社をつくりたい。社員には顧客と誠実に接し、信頼を醸成することを求めている。一見当たり前のことだが、当たり前のことを実践するほど難しいことはない。

JPG2社連携強化へ

 ――具体策は。
 山本 サービス・品質日本一の目標を掲げた。今期、教育分野への投資を大幅に増額。4月から新入社員を全国から大阪へ集め、6日間の集合研修をスタートした。4日間の座学・実技に加え、外部の自動車教習所で2日間の技能講習も取り入れた。教習所のプロから個人の癖や特性を踏まえた的確な指導を受ける。拠点ごとだった教育水準を一元化することで、品質を底上げする。また大阪支店(大阪府茨木市)の敷地を活用し、実車訓練と座学を行える施設を今年度末に開設する。
 ――源流は日本運送だ。
 山本 日本運送、フットワークエクスプレスを源流に、経営母体は変わったが、当社を愛し長く勤めているドライバーが数多く在籍することは強みだ。働く社員が何を求めているのか、そこに成長のヒントが隠されている。半面、弱点は全国ネットワークを持たないこと。日本郵便、JPトールロジスティクスとの連携で補完可能だ。3社で小口から大型貨物まで物流の総合サービスが展開できる。まずグループのネットワークでサービスを完結させ、外部流失しない体制を整備したい。
 ――他社との連携は。
 山本 同一エリアで複数社が集配する現状は非効率。ドライバー不足などを考慮すればエリアごとに強みを持つ同業他社との連携は自然な流れだ。
 ――労働環境改善に積極的に取り組んでいる。
 山本 人材確保に直結するため、スピード感を持って結実させたい。土曜集荷を取り止めた拠点は全体の4割まで達し、半数程度まで引き上げる。一方、土曜配達の見直しは顧客と協議が欠かせずハードルは高い。例えば土曜前後の日を含め全体の効率化を追求したい。ドライバーが働きやすい環境を築き上げる。

記者席 ポジティブ思考

 特積みの名門を受け継いだ重責、取り巻く経営環境の厳しさと緊張感が漂うが、現実を直視した上で「ピンチはチャンス」と明るい表情で語る姿が印象的だった。自らポジディブ思考だと言う。
 2014年10月に心筋梗塞で倒れ、心臓が一時、止まった。偶然が重なり一命を取り留めた。「悩み、ストレスを楽しまない手はない」。いまある苦労は、数年先に共に戦った同士と昔話で盛り上がるネタになると考えれば「肩の荷が下りるはず」と人生を豊かにする術(すべ)を説く。
 もう一つの信念は誠実さ。中国の故事「楊震(ようしん)の四知(しち)」を部下に伝えてきた。どんなに秘密にしても、いつか必ず公になるという意味。2つの信条を貫いて業界の荒波を乗り越える覚悟だ。