インタビュー

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【 日通の海外戦略 】

世界一丸の営業開拓推進 売上高6000億円へ

2019年09月10日

堀切 智 専務執行役員海外事業本部長

 日本通運(本社・東京、斎藤充社長)は、2024年3月期までに海外売上高を19年3月期比40.2%増の6000億円にすることを掲げている。米中貿易摩擦や、イギリスのEU離脱など、国際情勢が不透明感を増す中で、どう成長を遂げるのか。堀切智専務執行役員海外事業本部長に聞いた。

 ――国際情勢が不透明感を増している。
 堀切 米中関係やイギリスのEU離脱など保護主義の動きが顕著になっている。世界経済が冷え込み物量全体が落ち込む可能性がある一方で、生産や消費、流通が変化することは新たなビジネス獲得のチャンスでもある。
 ――変化に対応する。
 堀切 中長期的に成長の芽を見つけ育てて行く。今年は、中期経営計画の初年度で仕込みの時期。一時的に景気が冷え込んだとしても、チャンスにつながるような変化を見つけていきたい。
 ――足元は堅調。
 堀切 数字だけ見ればそうだ。だが5年後に6000億円の目標に到達するには堅調では足りない。経済的にマイナスの動きが目立つが、年ごとの目標をクリアしつつ、一層の飛躍を目指す。
 ――ターゲットを明確にしている。
 堀切 日通グループ経営計画2023『非連続な成長~Dynamic Growth~』では「電機・電子」「自動車」「アパレル」「医薬品」「半導体」の5産業を重点ターゲットに掲げた。この5産業に対し、全世界一丸でのビジネス掘り起こしを進める。一方でアメリカの自動車関連、欧州のハイファッション事業など地域別の取り組みも継続する。
 ――先進国でも拡大の余地がある。
 堀切 アパレルに強みを持つトラコンフとフランコバーゴの2社が連結したことで、イタリアが欧州で最大の売り上げ規模を持つ国となった。このような変化はどの国でも起こり得る。北欧や東欧など、十分な荷物開拓ができていない国にも成長の余地がある。

中国と欧州をつなぐ鉄道網

 ――中国をどう見る。
 堀切 中欧間の物流が活発化しており、船よりも早く飛行機よりも安い鉄道輸送を強化している。これまで当社は、中国沿岸部を中心に事業拡大を進めてきたが、鉄道を武器に内陸部にも切り込んでいく。
 ――背景となる動きは。
 堀切 米中関係が緊張していることで、中欧のモノの流れが活発化している。まさに変化がチャンスとなる部分だ。さらなる、発展が見込めるのがアジアだ。その先にはインドもある。
 ――伸び代が大きい。
 堀切 インドは、人口も多くIT(情報技術)産業も盛ん。背後にはアフリカも控えている。インドを含む南アジアは、重点5産業が全て伸びている印象だ。とはいえ、交通インフラが不十分であるなど、状況は国によってさまざま。どの地域にどう注力するのか見極めながら取り組みたい。
 ――ベースとなる海上輸送獲得に注力する。
 堀切 国際物流で大きなボリュームを占める部門だが、航空に比べて取り組みが弱い部分があった。体制を見直し、営業強化につなげたい。
 ――長期ビジョンの達成に向けては。
 堀切 長期ビジョンを達成するにはM&A(企業の吸収・合併)も必要だ。目的に適う企業があれば、見極めて進めたい。
 ――グローバル化を一層推進する。
 堀切 現在、欧州の営業責任者やスペイン、スイス、フランスなどの各現地法人のトップなど、現地採用の人材が活躍し、頼もしさを感じている。日本から出向している人材も国際・国内などの部門を問わず現地で活躍している。一層の相互交流を進め、それぞれの強みを融合していきたい。