インタビュー

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【 インタビュー 】

求荷求車で30年 周囲が憧れる組織に

2019年06月11日

日本ローカルネットワークシステム協同組合連合会 迫 慎二 会長

 今年、創立30周年を迎えた日本ローカルネットワークシステム協同組合連合会(=JL連合会、迫慎二会長)。全国の118の協同組合を組織し、独自の求荷求車ネットワークを構築。1600社以上が加盟する国内屈指の組織に成長した。迫会長にJL連合会の強み、課題、抱負を聞いた。

 ――2月に創立30周年記念式典を行った。
 迫 会員の運送企業幹部、国会議員、関係省庁などの来賓を合わせ1300人余りが出席した。多数の関係者に支えられているとの思いが湧くと同時に、さらなる発展に向け、気持ちを新たにした。2018年度の年間取引高は538億円、登録契約数は93万件に達し、100万件の大台も視野に入った。
 ――強みは。
 迫 全国118の協同組合を有する組織力。ベースには会員同士の信頼関係がある。平成の初めに兵庫のある組合が発案したものが、いまの求車求荷の仕組みにつながっている。現状に満足しない先人たちの挑戦する姿勢は受け継がれ、アイデアは洗練されていった。IT(情報技術)を利用したシステムにも応用され、いまに至る。

信頼関係の構築と醸成が鍵

 ――求荷求車の手法にはどういったものがある。
 迫 大きく2種類ある。一つはマッチングの成立時に発生する受発注業務を、会員同士が直接、電話やファクスなどで行うもの。取引高全体の8割超を占め、残りの2割弱がITを利用したシステムを介したものになる。
 ――協同組合の特質をうまく生かした団体。
 迫 重要なのは信頼関係の構築と醸成。会員間で求荷求車情報を頻繁に交換できるよう、環境整備に努めてきた。全国各地で定期的に、会員各社が交流できる場を提供している。30年間、築き上げてきた独自のヒューマンネットワークは、かけがえのない財産になっている。
 ――ITを使った求荷求車システムはどのようなものか。
 迫 ウェブ上でリアルタイムに求荷・求車の情報検索と登録ができる。バージョンアップを重ね、特許を3件取得し、国からも表彰された。利便性は高いと自負している。
 ――具体的には。
 迫 求荷・求車の検索画面には都道府県別にクリックできるウインドーを設け、複数の積み地、降ろし地の選択が可能だ。求車検索では発地に加え、途中の経由地も含めて1度に検索ができる。帰り荷の確保などで重宝する。システムはどのプロバイダーでも利用可能で、震災など非常時対応にも万全を期した。
 ――求荷求車にかかる手数料も下げた。
 迫 会員の声をくみ取った。調整は簡単ではなかったが、健全な運営には欠かせないことだ。
 ――課題は。
 迫 時代の変化は早い。自動運転やAI(人工知能)などの技術革新に対し、運送企業がどう対応するか。会員が個々に成長できる方針を示したい。会員に寄り添いながら、将来の経営の在り方について、有意義な議論ができる場を提供するのも、当会の重要な役割だと認識している。

新時代に対応し地位向上へ

 ――ビジョンは。
 迫 30周年を機に、10年後のあるべき姿を示したビジョン「ネクスト10」を掲げた。法令順守を含め、品質に誇りを持つ企業が集まる、周囲から憧れられるハイステータスな組織を目指していく。昨年末は改正貨物自動車運送事業法が成立。運送業界の健全な発展に向けた新しい時代の幕開けと言える。業界の地位向上に貢献していきたい。

記者席 「積小為大」

 118ある協同組合は北海道から沖縄まで7つの地域ごとにまとめられ、各地域を統括する本部長が主体となり独自の活動を展開している。年に1~2回開催する交流会では他地域のメンバーとの情報交換を促し、ニーズが合えば求荷求車の契約成立へ。こうした事例が少なくない。
 会員増強の取り組みについては、「30年築き上げてきたヒューマンネットワークの資産は外部から見えにくい。この魅力をどう伝えていくか」。
 好きな言葉は二宮尊徳の「積小為大(せきしょういだい)」。13年前、海難事故で大けがをした。リハビリは「やり過ぎた時は3日寝込んだ。1歩進んで3歩下がる状態になった」。1日1時間と決めて辛抱強くやれば、動かなかった足も応えてくれた。「一つ一つの積み重ねが大切」