インタビュー

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【 インタビュー 】

〝運び方改革〟普及の要 インフラ、規制緩和が鍵 

2019年05月28日

敬愛大学 根本 敏則教授

 トラックの生産性を高めるため、車両の大型化や自動運転実現に向けた施策が進められている。国土交通省は1月、特殊車両通行許可基準を見直し、条件を満たす25mフルトレーラーの走行を解禁。後続無人隊列走行の実験も始まった。敬愛大学の根本敏則教授は「(利用しやすい環境整備として)インフラ整備が重要」とし、効率的な取り締まりを行いつつ、規制緩和も進める必要があると話す。

 ――生産性向上のため、国交省が車両の大型化を推進。
 根本 大型化ではフルトレ(=ダブル連結トラック)と、40フィート背高コンテナ車に限り特車許可なく通行できる重要物流道路の2つの動きがある。1月解禁の25mフルトレは、1人のドライバーで大型車2台分を輸送でき、業界の評価も高い。道路は物流を下支えするインフラで、施策としても効率的にモノを運ぶ手助けをする方向に舵(かじ)を切った。

フルトレ安全性高く

 ――25mフルトレへの期待は。
 根本 貨物量の多い特積みを中心に利用が進むだろう。企業からも「車両を発注した」との声を耳にする。東名阪(東京・名古屋・大阪)間の輸送と異なり、貨物量が限られる方面では、前後の荷台の稼働・積載率を高めるため、共同輸送の導入が望まれる。
 ――現在は新東名高速道路しか走行できず、対象拡大を求める声も。
 根本 もちろん拡げるべきだろう。25mフルトレは多くの安全装置の装着を義務付けており、一般的なトラックより安全性が高い。新東名から始めたが、国交省も問題ないと判断すれば拡大する予定だ。

規制緩和と取締り強化

 ――重要物流道路と同じく、特車通行許可を不要とする考えは。
 根本 走行を認めても特車通行許可に時間がかかっては意味がない。手続き効率化に加え、走行データを転送する優良企業に対しては、特車通行許可を不要とすることも検討に値する。
 ――実現には企業の法令順守が不可欠。
 根本 運送企業による法令順守と同時に、行政もIT(情報技術)を使った効率的な路上取り締まりが必要。ウェイ・イン・モーション(走行車重量計測装置=WIM)で走行中の車両重量を測定するとともに、カメラで撮影したナンバーで違反車を特定することにより、効率化できる。過積載をなくし、国民にトラックは安全と認識してもらわないと規制緩和は進めにくい。

隊列5~6台実現を

 ――生産性向上に向けては、1月から後続無人に向けた隊列走行実験が始まった。
 根本 現在は後続3台で隊列を組んでいるが、将来的には5~6台まで増やさないと経済的なメリットは生じない。インフラ整備では、まずは6車線化が必要になるだろう。車線を増やすだけでなく、東名と新東名のように高速道路が平行している場合は、トラックを優先するルートを指定することも考えられる。
 ――本線出入り口での合流・分流が課題だ。
 根本 中・長期的な構想として、国交省は高速道路の中央寄りレーンを物流優先レーンに指定。同レーンから直接出入りできるターミナルを整備し、そこで隊列を組む仕組を検討している。この優先レーンは米国の「HOV(High Occupancy Vehicles)レーン」を参考にしている。
 ――HOVレーンとは。
 根本 通勤での相乗りを奨励するため、2人乗り以上の車両専用とした高速道路中央寄りレーンのこと。近年は2人乗り車両が一般道から直接HOVレーンに乗り降りできるよう、立体的なランプを整備している。同じように、一般車は外側、トラックは内側から出入りすれば、台数の多い後続無人隊列も可能ではないか。
 ――特積み業界への影響はどのように考える。
 根本 隊列形成・乗り継ぎのためのターミナル運営や、拠点間共同輸送のビジネスモデル、その担い手を考える必要はある。だが路線事業も付加価値の源泉は、荷主の輸送ニーズへの対応いかんで、幹線輸送部分の自働化の影響は限定的ではないか。