インタビュー

【 社長インタビュー 】
週休2日へ新賃金体系 「空飛ぶコンテナ」構想も

2019年03月26日
久留米運送二又 茂明CEO
久留米運送(本社・福岡県久留米市、二又茂明CEO)は、平成32年4月からスタートさせる完全週休2日制実施に向け、1年前倒しで新たな賃金体系を導入する。「時短でも給与水準は下げない仕組み」と二又CEO。一方、物流センター事業をグループ経営の新たな柱にする方針を示し、複数機のドローン(小型無人機)でつるして運ぶ〝空飛ぶコンテナ〟幹線運行構想があることも明らかにした。
――4月から残業上限規制が課される。
二又 例えば1人で行っていた業務を複数人でカバーするといった体制構築が不可欠になる。人件費増加は免れず、当面、運送業界には経済性、効率性、合理性の3要素は通用しなくなる。
――時短に向けて取り組んできた。
二又 設備投資、輸配送システムの刷新、ホーム動線の見直しなどで改善を図ってきた。また、昨年10月から付帯料金の収受交渉を開始。神奈川県と千葉県では7割強の荷主のうち8割が自ら付帯作業を行うことで対応してくれることとなった。交渉しなければ何も始まらない。時短という観点で見れば、成果は決して小さくない。
時短しても給与水準は維持
――32年4月から週休完全2日制を導入する。
二又 従業員満足の向上が導入の動機。平成29年春、32年度からの本格始動を宣言した。進ちょくは順調。今年4月、一年前倒しで完全週休2日制対応の新賃金体系も導入する。
――どのような賃金体系か。
二又 従業員の労働時間が短くなっても給与水準は維持させる。詳しくは言えないが国内で初めての試みになると思う。
――土日は休むのか。
二又 完全休業ではなく、仕事量を大幅に減らす。日曜配達分で特定通販業者の企業向け荷物が75%を占める。月曜配達を振り替えられる余地は十分あり、完全週休2日制へとつなげていく計画だ。
福岡中心に物流C積極展開
――首都圏との距離的ハンディへの対応策は。
二又 見方を変えれば、九州では物流センター運営で新たなチャンスが生まれている。福岡を中心に在庫を持つメーカーが増加。2月福岡で工場建設を公表した資生堂のように九州に東南アジア向けの生産拠点を構えようとする動きもある。
――昨年、物流センターを手掛ける子会社の名称を変えた。
二又 福岡ロジスティクスサービスから「ニッポンロジ」へ、区域配送を行う子会社も「ジャパンロジ」に社名を変えた。関東をはじめ全国区へと認知度を高めるのが目的。今後は福岡を中心に九州域内での拠点増設を進め、足回りを含めたセンター運営をグループの経営の柱に加える。物流メニューを充実させ、さらなる収益拡大を目指す。
集配は自走するオリコンで
――労働人口の減少加速を見据えた将来の青写真があるとか。
二又 持続的に成長するには、科学技術との融合は欠かせない。例えば10年後、幹線輸送は陸送せずドローン8機ほどでコンテナをつり上げ、線路や高速道路の上空を飛行させる構想もある。強力なモーター、膨大なエネルギーを蓄える蓄電池などの研究開発は日進月歩。夢物語ではない。
――集配はどうする。
二又 個配の重要性は高まっていくが、折り畳み式コンテナに動力源と車輪を付け、自らコンテナと集配車の荷台を行き来させる。ターミナルでは配達番線のバースまで自走。ハンディーターミナルでバーコードを読み取る作業も不要だ。運用にはAI(人工知能)活用も要る。出荷元、到着先双方のデータ入手などで荷主との情報共有が一層必要になるだろう。
記者席 聞いて楽しくなる
久留米運送は本州発九州向けの特積み輸送が強み。残業上限規制で生じるリスクに対して活路を見いだし、グループの将来像を描いてみせた。
アイデアマン。幹線は空飛ぶコンテナ、集配は自走する折り畳み式コンテナを使い極限まで効率化を図る。情報収集に重きを置き、科学技術の動向にも詳しく、湧き上がる疑問を次々に打ち消していく。話を聞くほどに楽しくなった。
平成22年春、顧客満足より従業員満足を優先させると社内外で宣言。業界のドライバー不足は深刻だが、そうならないよう環境づくりを第一に施策を講じてきた。
時短でも給与水準は下げない新賃金体系とはどのような仕組みなのか。「簡単なことだが」と思わせぶりな口調。成果主義でもないという。期待せずにはいられない。