インタビュー

【 社長インタビュー 】
適切な成長 目指す 「涵養」の精神、大切に

2019年02月05日
中越運送 中山 元四郎社長
リーマン・ショック以降、経営基盤の強化に努め業績が堅調な中越運送(本社・新潟市)。昨年12月に就任した中山元四郎社長は「地域密着で顧客の成長を支えると同時に、従業員の生活向上を実現できる適切な成長を目指していく」と話す。
――業績は好調だ。
中山 平成30年12月期は、上期を終えた段階で利益目標を上積みした。その上で、年初の大雪や台風による鉄道の長期運休、燃料高の中でも増収増益を達成できた意味は大きい。
――要因は。
中山 荷量が増え、運賃単価をはじめとした取引条件の改善も進んだ。例えば付帯作業に関し、本来2人の人員が必要な業務で1人分の料金しか収受できていなかったのを、顧客に事情を説明し負担してもらう形に改めた。特に一昨年来、顧客の側がドライバー不足の現状に理解を示し、お願いに耳を傾けてくれるようになっている。
個別原価が浸透し地盤整う
――取引条件の改善は長年の取り組みの成果でもある。
中山 堅調な業績は、長年取り組んできた個別原価管理の浸透や財務基盤の強化、安全面など品質の高まりによって、経営の地盤が出来上がってきた証しだろう。
――そうした中で昨年12月に社長に就任した。
中山 小林和男会長の言葉を借りれば、経営の地固めは家でいう土台造り。いま柱を立てているところだ。今期は、その柱造りの2カ年計画の2年目に当たる。働き方改革関連法や改正貨物自動車運送事業法など、制度整備も進められており、企業として適切な成長を目指していく。
――どのような企業像を描くのか。
中山 時短が求められる中でも従業員の給与を上げ、十分な生活ができるようにして従業員満足度を高めたい。また新潟発祥の企業として、地域密着で顧客の物流課題に対しより良い物流の仕組みを提案、サポートすることで共に成長していきたい。引き続き、「涵養(かんよう)」の精神を大切にして経営に臨む。
――実際、前期には地域密着の姿勢が実を結んだ。
中山 新潟でも年初に大雪に見舞われたが、例えば燕・三条地区で出荷ができず困っていた顧客の荷受けに現場が真摯(しんし)に対応。継続的な取引につながったケースがあった。
来春に名古屋営業所を刷新
――投資も着々と進めている。
中山 来春をめどに、名古屋営業所(名古屋市西区)を愛知県一宮市に新築・移転する。既存の営業所は、住宅設備関連などの取扱量が増えホームが手狭になっている。中京エリアでのさらなる営業拡大に向け新たに倉庫を併設し、全天候型とする計画だ。関東での拠点新設も構想中。新潟県内については投資はほぼ一巡。働きやすい職場づくりでは前期、事務所やトイレの改修にも注力した。
――IT(情報技術)関係はどうか。
中山 業務負担軽減のための配送管理システムのほか、デジタルタコグラフ(運行記録計)やドライブレコーダーの映像データ解析といった技術については、将来的な検討課題になりそうだ。デジタコやドラレコによって品質改善が図れているが、一層の活用や、使いやすいシステムへの改善の余地がある。
――海外も伸ばす。
中山 国際事業では新たな部署を立ち上げた。上海、ベトナムなど現地での日系顧客開拓や、海外から日本へのフォワーディング機能の強化に取り組んでいく。
記者席 魅力ある家造り
地元新潟を代表する物流企業のトップに、40歳で就任。創業家の先々代、修氏の面影を強く宿す。指針でもある「実力の涵養」の言葉通り、地域に根を張り、これからも堅実な成長を目指す方針。
「強固な団結力」という点では、分かりやすいメッセージも同社の特徴。会社を「家」に例えることもそうだ。取引改善の取り組みでも、目指すものが役員・従業員にきちんと浸透してきた結果、目下の好業績に結実していると言えそう。
出来上がった土台の上に立派な柱を立てて、屋根を載せていく。「適切な成長」の先に、家に住まう従業員も、関わりを持つ顧客も満足げに笑う未来がある。
就任以降、暮れも新年も何かとお酒を飲む機会も増えた。その分、正月は自宅でゆっくりと過ごした。これも伝統だとか。どのような家が建つか楽しみだ。
(略歴)
なかやま・もとしろう=昭和53年10月30日生まれ、40歳。新潟県出身。平成13年拓大商卒、中越運送入社、16年取締役、20年専務、26年代表取締役副社長、30年12月21日社長に就任。新潟グランドホテル取締役、CMC中越モータース会長、CEC新潟情報サービス会長を兼務。