インタビュー

【 社長インタビュー 】
関東で4拠点に投資 乗務員の時短も推進

2018年10月16日
新潟運輸 坂井 操 社長
新潟運輸(本社・新潟市、坂井操社長)は今年から来年にかけて、関東で新築、増築を合わせて4拠点を稼働させる。「適正運賃収受を、労働環境の改善や設備投資につなげ、一層の成長を図る」と坂井社長。働き方改革を推進し、運行80時間以内、集配70時間以内の月間残業目標も実現のめどをつけた。
――7月に就任した。
坂井 10月で設立75周年。代々受け継がれてきたものを継承していきたい。先日全店所を回り終えた。現場の状況を見てきた中で、やはりドライバー確保が優先課題だ。
――対策に着手した。
坂井 現場の採用を支援するため今年に入り、本社に「人事採用強化戦略室」を設置した。労働環境の改善へまずは、新しい期が始まる来年5月から定年を60歳から65歳に引き上げる。再来年5月からは4週6休制から週休2日制への移行も実現させる。人の採用や顧客交渉をはじめ、来年1年を地固めに充てたい。
――週休2日は必須。
坂井 条件を満たせないと、学生から就職先候補として選ばれにくい時代。定年引き上げについては、60歳を超えても安心して働き続けられる環境を整える狙いがある。
日帰り運行のモデルつくる
――ドライバーの時短も推し進めている。
坂井 前期、集配ドライバーの月間残業80時間以内をほぼ達成した。集荷の前倒しによる運行便の出発前倒しも図り、今期は運行ドライバー80時間以内、集配ドライバー70時間以内の目標を立てて取り組んでいる。今期の目標も繁忙期を除きほぼ達成できる見通し。コンプライアンス(法令順守)強化のために、付帯作業や遠距離の集荷を見直したケースもある。
――事務・管理職は。
坂井 来年4月からの月間45時間に向けて、伝票仕分けなど夕方以降の業務は、アルバイト採用も含めて対応していく。
――人への投資に加え施設もテコ入れする。
坂井 車両の代替えは今期と来期がピーク。いま償却サイクルを8年にして、修繕費がかさむ前に計画的に入れ替えていく方針に改めた。施設については、11月に北関東で増築、来年8月に新築を計画。東関東と南関東でも来年以降、新築・増築を行い計4拠点に投資する。
市街地走行ではEVも活用
――東関東に新設する拠点では新たな試みも。
坂井 取扱物量以上に広いホームを整備し、新潟と関東を結ぶ日帰り運行のハブ拠点とする構想を持つ。これまで長距離は2泊3日運行が基本だったが、新規にドライバーを採用する上で日帰りにしていくことが重要だ。
――環境へも配慮。
坂井 大型CNG(圧縮天然ガス)トラックを新潟―東京間で運行しているが、街中を走る車両ではこの先、電気トラックの活用も視野に入れる。集配車の平均走行距離は1日100㎞以内が中心。夜間に充電する仕方で運用できる。
――原資が不可欠。
坂井 平成30年4月期の業績は、適正運賃の収受、物量増、貸し切り部門の新設効果もあり、売上高は前期比4%増の546億円、営業利益は同25%増の13億円。今期も前期に続き1%程度の物量増を見込む一方、運賃を値上げした効果が軽油価格の上昇で相殺されている状況。
――だが目標は高い。
坂井 営業利益率で3%を超えたい。物量は現状を維持しつつ、運賃を含む条件改善、より収益性の高い荷物の獲得、貸し切り部門の強化に努める。貸し切りでは、全国5つの統括地域に担当者を配置し、携帯アプリで荷物情報を共有できる仕組みを構築した。人手不足と相まってマッチング率は高まっている。
記者席 県の木ユキツバキ
来年4月、同社の女性ドライバーたちから集めた声を形にした、集配トラック2台を新たに導入する。ラッピングデザインには「新潟県の木ユキツバキをあしらう」。
昨年、女性ドライバーが関東に集まり、意見を出し合った。汗をかいた後の着替えをどうするかといった女性ならではの声も上がったという。彼女たちが使いやすいトラックを造ってもらうべく要望をまとめディーラーに注文した。
安全・安心の点では、今期計画する車両の代替えが完了すれば、衝突被害軽減ブレーキの搭載が50%近くまで進む。デジタルタコグラフ(運行記録計)やドライブレコーダーの導入も完了。「運行管理や事故の検証に役立て、大きな成果を上げている」。
「従業員は宝」。選ばれる職場づくりへ、手腕に注目したい。