インタビュー

【 社長インタビュー 】
トラックとの協力を推進 3日目配送がMSの鍵

2018年10月09日
オーシャントランス 髙松 勝三郎 社長
東京―徳島―新門司(福岡県)を結ぶフェリーを運航するオーシャントランス(本社・東京、髙松勝三郎社長)は、ユーザーであるトラック企業と協調した航路運営を進める。災害やトラックの人手不足で、フェリーに注目が集まる中、髙松社長は、「生産性が高く低燃費のフェリーの魅力を伝えて行きたい」とする。
――足元の実績は。
髙松 平成28年、就航船4隻を代替えし大型化した。ドライバー不足の影響もあり、代替え前より約3割トラックの航走台数は増加した。
使い勝手の良い航路を提供
――トラック企業に使い易い航路づくりを推進している。
髙松 トラックの無人航送や、中ロットなどのサービスを展開している。無人航送は、シャーシではなくトラックでも中継輸送を行うことができる仕組み。取り入れれば5人必要だったドライバーが両端の2人で済むようになる。
――共にモーダルシフトを推進する。
髙松 フェリーは動く橋。両端を担うトラックとの協力は欠かせない。どう提携していくは、課題だ。ドライバー不足はモーダルシフトの追い風でもあるが、フェリーにとっても大きな影響を受ける。協力して解決に努めたい。
――鍵は。
髙松 リードタイムだ。長距離フェリーは3日目配送。トラックだけの2日目配送には、スピードではかなわない。だがドライバー不足で、ワンマンでの長距離トラック輸送が難しくなる中で、どちらを選択するかの問題となってくる。トラック業界にアピールし、仕組みづくりを促したい。
――生産性、燃費効率はフェリーが有利。
髙松 1人当たりや1リットル当たりの輸送量は、フェリーの方が優れている。人手不足と燃油高の中、トラック企業に貢献できることを伝えていく。
――トラックの自動運転も研究されている。
髙松 無人輸送という意味ではフェリーも同じ。自動運転のために設備投資をしなくても、利用可能だ。フェリーを使えばトラックの寿命も伸びる。
――安定性も高い。
髙松 年間の欠航は台風などが原因の2~3便程度。昔に比べて天候が荒れることが多く、慎重に見ているが、それでも欠航率は低い。
――不安要因としては、32年にSOx(硫黄酸化物)規制が控えている。
髙松 供給側の石油メーカーの動向が見えない状況だ。低硫黄C重油を安定供給してもらえるかが課題。価格上昇も考えられる。荷主に対しても理解を得て行く。
――四国経済への貢献を願っている。
髙松 運航する4隻のフェリーは船籍が徳島。名前を四国各県からもらっている。入出港回数も四国が一番多い。四国をゲートウェィに関東と西日本をつなげたいと思っている。
――災害が増える中で、フェリーが見直されている。
髙松 政府の指定公共機関として、何かあれば協力できる体制を整えている。人・物資・資材を一度に運べるフェリーはいざという時に役に立つ。現在の運航船には、岸壁さえあれば乗り降り可能なサイドランプウェーを備えている。過去の防災イベントで実際に高知港に着岸した。
――安定輸送に貢献する。
髙松 労働環境が課題になる現在、物流も変わらざるを得ないだろう。少ない人数でどうやって効率よく運ぶかが課題になる。フェリーは、大量輸送が可能な交通インフラ。積極的に役立っていきたい。
記者席 目の付けどころ
「行政の統計は実感と離れつつあるのではないか」。通販の宅配や、3PLなど従来の倉庫企業ではない企業の運営する物流センターなど「これまでの手法では捕捉できないモノの動きが増えている」。メーカーの在庫拠点から、無店舗で消費者向けに荷物を運ぶ拠点が増えているのが原因とみる。それだけに「(センターまでの輸送は)計画的に大量輸送することが考えられる。船の出番も多くなっていくのではないか」。〝業界一のアイデアマン〟と呼ばれる独自の視点が光る。
東京五輪が盛り上がると「国民全体が疲れて経済が停滞するのは、自然な流れ。消費増税も加われば、影響は大きい」。それに備えた社内体制の整備を急いでいる。「船は、一度作ると15年は使わなくてはいけない。一時的な景気で楽観もできないね」