インタビュー

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【 社長インタビュー 】

海外売上高比率10%に 3PLと併せ拡大へ

2018年08月14日

丸全昭和運輸 浅井 俊之 社長

 今期、連結で売上高1150億円(前期比3.9%増)、連結経常利益72億円(同6.1%増)を目指す3カ年中期経営計画の最終年度を迎えた丸全昭和運輸(本社・横浜市、浅井俊之社長)。「国内の3PLとともに、海外事業売上高比率10%を目標にグローバル物流の拡大を加速する」と話す浅井社長に、今後の事業戦略を聞いた。

 ――前期の連結業績は増収増益。
 浅井 売上高は1106億8500万円(前期比5.6%増)、経常利益は67億8600万円(同10.3%増)と5期連続で最高値を更新。3期連続のベースアップ、4期連続の増配につなげることができた。
 ――好業績の要因は。
 浅井 モーター関連の取り扱いが好調な子会社丸全電産ロジステックが増収し、当社が手掛ける住宅建材関連3PLの売り上げも拡大。未開拓の分野では幼稚園・保育園向け教材の3PLを新たに受注した。関西地区でも顧客に品質が認められ、売り上げを伸ばせた。

海外でも「アセット型」を

――今期は中計最終年度。
 浅井 前期のペースでいけば、業績目標達成は可能。一方で人件費や燃料費、外注費といったコスト増加は避けられない。IT(情報技術)活用や省力化を進めながら、荷主への料金改定交渉を強めることも不可欠になる。
 ――営業面で注力する分野は。
 浅井 国内では新たな柱となる大型3PL受注を目指す。特に建材関連は平成32年の東京五輪以降も需要が続くと見込む。グローバル物流も加速度的に拡大させる。前期3.6%だった海外事業の売上高比率を近い将来、10%へ高めたい。グローバル拡大は次期中計の柱の一つになる。
 ――拡大への要素は。
 浅井 モーター関連の顧客がベトナム・ハノイで空調関連の新規生産拠点を計画しており、自社倉庫建設の準備を進めたい。また化学系の主要顧客が生産機能を海外で拡大することに対応し、強みの生産材輸送ノウハウを生かして物流面を支えたい。
 ――自社倉庫・車両による「アセット型経営」を海外でも推進。
 浅井 そうだ。自社アセットによるサービスを通じて現地に進出する日系企業への存在感を高めることが重要。現在、米国と中国2カ所に自社アセットを構えているが、今後はベトナムだけでなく、タイ、合弁会社のあるインドネシアやマレーシアでも自社倉庫・車両による高品質なサービスを展開することが理想だ。
 ――人材育成が急務。
 浅井 国内のトラック輸送・倉庫部門経験者を出向させるなど、現在30人程度の国内社員を海外で勤務させている。今後は新規採用者を含めた語学教育の充実を図り、海外で活躍できる人材の育成に拍車を掛けたい。

仙台地区で倉庫増設を計画

 ――国内の新たな取り組みは。
 浅井 北海道江別市の倉庫では10月、ポテトチップスの原料となる道産バレイショを保管するサービスを始める。4月には子会社丸十運輸倉庫の東京支店を当社関東支店東京営業所に改組。今後は関東支店の通運ノウハウと東京の主要貨物駅至近の倉庫を活用し、鉄道利用の農産物輸送など需要開拓の幅を広げたい。
 ――設備投資も積極化。
 浅井 今年は茨城県鹿島外港地区での火力発電燃料用の貯炭場、指定可燃物倉庫に続き、7月には堺市で2つ目の倉庫を開設した。昨年稼働の仙台物流センター(宮城県名取市)も順調で、早期に2棟目の倉庫を造り、「東北支店」開設を目指す。関西、名古屋でも3PL拡大に向けた大型倉庫建設を検討している。

記者席 プライド持てる会社に

 「待遇改善、働き方改革を進め、社員がプライドを持って働ける会社にしたい。一人一人のプライドの持ち方が顧客対応にも自然と表れる」
 昨年、全社で「働き方改革プロジェクト」を始動。残業管理徹底に始まり、時差出勤の活用、計画的な休日配置、ノー残業デーや有給休暇取得を促す制度の設定とさまざま。「有給消化率も着実に向上」。本社では6月から、夜10時消灯の取り組みもスタート。優秀な人材確保へ「多様な人材が無理なく働ける体制づくりも大切」。今期、結婚や出産・育児、介護などで退社した人材に短時間・短日勤務で再び活躍してもらう「リターン入社制度」を始めた。 座長を務める若手勉強会「マルゼン・ジュニア・ボード・ミーティング」は5期生が活躍中。次世代リーダーの育成にも力を注ぐ。