インタビュー

【 社長インタビュー 】
待遇改善へ交渉さらに ドッキング拡大を検討へ

2018年07月03日
第一貨物 武藤 幸規 社長
ドライバー不足への理解が深まる中、平成30年3月期に一層の運賃是正に取り組んだ第一貨物(本社・山形市)。「大口を中心に約半数の荷主で成約できた。今期は残る荷主にも理解を求めていく」と武藤幸規社長。都市間輸送持続の鍵は「車両大型化と高速道路の乗り入れ拡大」にあるとし、将来的には中間地点で折り返し運行を行うドッキング運行を増やしていく考えだ。
――人手不足が深刻だ。
武藤 対策として今期から、地域社員制度を導入した。従業員がエリアをまたぐ異動を前提としない働き方を選択できるようにした。学校の採用担当教諭の印象も変わるのではないか。平成26年から待遇も徐々に引き上げてきた。
大口を軸に交渉し成果得る
――前の中期計画で一区切りつけた運賃交渉に再度、乗り出した。
武藤 物流の現状に対する荷主理解が進んだ中で、従業員の待遇改善をさらに進め雇用競争力を高める必要がある。2カ年で取り組む方針で、初年度は大口を中心に約半数の荷主で成約できた。今期も交渉を継続させる。利益率については他産業並みにとの思いもあるが、バブル崩壊以降切り詰めてきた従業員の待遇を戻すことを先行している。
――30年3月期は業績も改善。
武藤 売上高は前期比3.2%増の712億6000万円、経常利益は同23.9%増の8億7200万円。物量が2.6%増え、運賃是正効果も後押しした一方、軽油価格上昇は利益を圧迫する一因となった。今期は売上高726億円、経常利益11億円を計画する。
――運賃是正と合わせ品質向上が求められる。
武藤 物量全体に占める割合はわずかながら、残荷の削減が課題。前期、物量が増えた中で容易には改善が進まなかった。運行途上でどこにどの方面の残荷が発生しているかを把握し、立ち寄るといった方法で減らしていく。iPhoneなどスマートフォン(高機能携帯電話)を活用し情報を収集・発信することでうまく運用できるのではないか。
需要予測Sを本格スタート
――需要予測に挑戦している。
武藤 人員・車両の配備、残業・休業日の調整も含む究極の効率化は、何月何日の物量を予測できれば実現可能。この4~5年、「PSS(ピーク・サポート・システム)」と呼ぶ需要予測システムの検証を重ね、今期本格的に稼働する。予測で導き出されたデータを現場でどう活用できるかを見ていく。
――効果は。
武藤 いまのところ未知数。支店単位まで落とし込もうとすると変数が増え予測の振れ幅が大きくなる。需要予測は、経費圧縮に加え今後の年720時間、年960時間の残業規制対策としても有効だ。労働力不足の状況下で時短を推し進めるには、物量を予測して時間と人員を割り付ける以外に方法はないだろう。
――ドライバーの減少に対し、自動運転は有効な解決策となるのか。
武藤 トラックの自動運転は確かに話題性に富み高速道路での実現であればあり得るだろうが、その他の場所では近未来的には現実的ではないとみている。
――では、特積みの都市間輸送を今後も維持していくための鍵は。
武藤 車両の大型化と高速道路の乗り入れ拡大。運行距離に占める高速乗り入れ率は近年急速に高め、現在80%。労働環境の改善も見据えながら、ドッキング運行を増やしていくことを検討している。
記者席 出張三昧
おもむろに手帳を広げ「とにかく忙しい」と1言。例えば、ある週の金曜午前中は愛知県三河地方。飛行機で仙台に飛び午後3時に山形。翌土曜は太平興業のオフサイトミーティングに出て、日曜午後5時に東京へ戻る。そうした出張が毎週のように続く。海外へ行っても「遊ぶ暇はなし」。7月半ばのベトナム出張の際も、帰国後すぐ山形へ移動だ。
心を落ち着けるのは、人の多い東京だそう。山形だと誰かにばったり会う。「周囲の目が気になってしまう」。最近はお酒も控えめにしている。
そんな中で昨年訪れたキューバ土産に、カストロとゲバラが一緒に映った写真の写しを持ち帰った。大使だった親戚夫婦が2人に巻き寿司をごちそうしている場面だ。
話がキューバ革命と自身の愛してやまないヘミングウェーのその後に及び、しばし目線が遠くなった。