インタビュー

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【 インタビュー 】

海外部門で成長けん引 現地化で非日系へ拡販

2018年06月26日

日本通運 伊藤 豊 副社長

 日本通運(本社・東京、斎藤充社長)の海外事業は、プラント移設から拠点間輸送、輸出入、販売物流まで、顧客の海外進出時の物流を状況に合わせた形でサポートできるのが特徴。近年は、食品や高級ファッションブランドといった販売物流にも力を入れており、さらなる売り上げ拡大を目指す。

 ――海外事業の足元の業績は。
 伊藤 平成30年3月期は、売上高が前期比16.4%増の3903億1400万円、営業利益は同33,4%増の138億8300万円で増収増益。特に、航空貨物の電子部品がけん引した。現地のロジ事業も改善を進め増収増益に寄与した。
 ――荷動きは堅調。
 伊藤 自動車のEV(電気自動車)化やスマートフォン(高機能携帯電話)、IT(情報技術)化などにより、電子部品の需要が好調だ。
 ――非日系の顧客の拡大に取り組んでいる。
 伊藤 2016年、シンガポールに非日系企業に特化した営業部門「グローバル・ロジスティクス・イノベーション・センター(=GLIC)」を設立。欧米とアジアを行き来する貨物の市場調査、分析、営業を担う。
 ――成果は。
 伊藤 ピックアップした60社程度の顧客に対して、欧米や東アジアの各ブロックとも連携し、強みの陸海空の総合力を生かした営業を行っている。現地スタッフが物流のコストやあるべき姿について論理的な思考で提案する。
 ――現地人材が活躍。
 伊藤 上海の営業本部では、アジアや欧米出身の営業マンが多く在籍している。欧州では、社長の現地化を進めており、アジアでも将来的には実施していきたい。
 ――グループの存在感が高まっている。
 伊藤 各国で、日通グループに興味を持つ優秀な人材が増えてきた。グローバルフォワーダ―としての存在感を示してきた結果だと思っている。
 ――共通言語は品質。
 伊藤 国際物流では一つの輸送に際して、多くの人が介在する。その中で、日通ブランドの下で一貫してモノを運ぶことが重要だ。品質は競争力の源泉だ。
 ――日本で培ったノウハウを世界で展開する。
 伊藤 日系顧客は、国内と同じ品質を求める。例えば、現地でジャスト・イン・タイム輸送ができればその国で評判が高まり、日系顧客以外も含めた次の仕事につながる。得意とする鉄道やトラック輸送で強みを見せたい。

アジアは地産地消の傾向に

 ――アジアでは地場輸送ニーズが高い。
 伊藤 日雑品や消費財などの仕事が増え、低温物流網やコンビニなど高品質な域内物流の需要が高まっている。拠点についても、食品やアパレルなど消費物流を意識したものが増えてきた。
 ――3月、高級アパレル向け物流を手掛けるトラコンフがグループ入り。
 伊藤 アパレルは、製品と原料がアジアと欧州を行き交うため、物流が介在する余地が大きい。特に高級ファッションブランドに関する物流は、高い技術が要求され参入障壁が高い。アジアでも富裕層を中心に高級品指向は強まっており、伸びしろはあると感じている。
 ――成長の鍵は海外。
 伊藤 日本市場の成長が期待できない中、伸びしろは海外だ。中期計画最終年度となる31年3月期の国際関連事業売上高8600億円に向け、着実に積み上げていきたい。
 ――課題は。
 伊藤 世界的に人件費が高騰している。今後貨物の伸びが落ち着くと、コスト高が目立っていく。生産性向上を後押しする評価制度などを導入し、メリハリをつけた対応を講じていきたい。