インタビュー

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【 社長インタビュー 】

堅実な増収策、M&Aも 4年で売上1000億円に

2015年08月18日

大和物流 緒方 勇 社長

 大和物流(本社・大阪市、緒方勇社長)は60周年となる平成31年度、売り上げ目標1000億円を掲げる。緒方社長は「毎年100億円ずつ積み上げなければならない。M&A(企業の買収・合併)も視野に入る」と話す。親会社大和ハウス工業との連携も強化し、堅実な収益の上積みを計画する。

 ――業績は。
 緒方 前期は消費増税の影響で、売上高の7割を占める建材の物量が低迷。単体の売上高は前期比1.5%増の519億円にとどまった。一方、値上げ交渉を含めた環境改善の取り組みにより、営業利益は同24.5%増えた。
 ――31年度に1000億円の売り上げ目標。
 緒方 前期の連結売上高は592億円。4年後の目標達成には400億円の上積みが必要になるが、手立てはある。
 ――というと。
 緒方 親会社大和ハウスの経営資源の有効活用を進める。住宅系は大和ハウスの工場を経由して建築現場に納品する。調達・保管・輸配送の物流はほぼ全て請け負っている。今後、住宅系の物量に過度な期待はできない一方、ホテル、高齢者施設、物流不動産事業は伸びている。これら一般建築はグループの工場を経由せず、当社の取り扱いも少ない。前期の売上高は年間2~3億円程度。今期、10~15億円に引き上げ、取引を太くしていく。
 ――具体的には。
 緒方 大手ゼネコンなど荷主との交渉を本格化する。彼らにとって大和ハウスは顧客。その強みを生かす。当社は着工、しゅん工はもちろん、繁閑期別で資材を現場に納品するタイミングなど詳細な情報を入手できる。建材物流のノウハウと組み合わせれば、業務効率も高められる。車両不足で集車が難しい中、歓迎する荷主もいるだろう。

センター増強収益積み増す

 ――拠点も増強する。
 緒方 今春、愛知県岩倉市、宮城県多賀城市、相模原市に物流施設を開設し、倉庫面積は4万㎡ほど増えた。岩倉と多賀城のセンターはほぼ満床。相模原は7割近くの稼働率で、9月中には埋めたい。今年度は3万~5万㎡の増床を検討している。昨年度に始めた文書保管事業も好調。こうした取り組みで売上高を積み増す。
 ――営業力の強化は。
 緒方 昨年度、営業推進部内に新たな部門を設けた。センターの延べ倉庫面積は70万㎡近くあるが、入居企業の契約満了時に更新するか、新たな顧客に入居してもらうかの検討が収益に大きな影響を及ぼす。そこで、適正料金や顧客選定などで見合いを図り、収益拡大につなげる必要がある。東京に5人、大阪に2人専任し、当たらせている。

流通向け拡大も視野に入れ

 ――M&Aは。
 緒方 4年後の売上目標を考えれば当然、視野に入る。大和ハウスがファーストリテイリングとの提携を深めており、アパレル関連事業者のM&Aもあり得る。コンビニ店舗向けに冷蔵庫などのリユース事業を展開しており、冷蔵冷凍事業者や惣菜の作業請負業者も候補。じっくり精査していきたい。
 ――輸送品質の向上については。
 緒方 1月、自社の車両530台にデータ・テックと当社グループのシステム会社フレームワークスが共同開発した車載器を導入した。デジタルタコグラフ(運行記録計)とドライブレコーダー一体型で、携帯端末で車両の現在地も分かる。繁忙期など車両不足が懸念される時期、顧客に素早い対応ができる。安全対策強化も目的だ。

記者席 全方位、上々

 2年前の取材時、緒方社長は「全方位で荷物を取り込む」と話した。ホームセンターなど小売り・流通分野に入り込み、荷主には最新の倉庫運営システムを導入したセンターを公開。新規開拓を加速させた。
 成果は上々だ。卸との取引が増加。店舗納品時に余剰商品を引き取って在庫に回す物流の仕組みを創出するなど「良い効果が出ている」。
 堅実な経営手法も光る。コンプライアンス(法令順守)が問われる中、長距離輸送に関しては、荷主も中継拠点の重要性を認識。そこで、「荷主に中継拠点の設置を提案して新倉庫の半分を満たす。残りは強化した営業部隊が中心になり獲得していく。こうした手法ならリスクは少ない」。

(略歴)
 緒方 勇氏(おがた・いさむ) 昭和24年3月8日生まれ、66歳。長崎県出身。47年北九州大商卒、大和ハウス工業入社、平成19年取締役、24年大和物流専務、25年4月社長。(丸山 隆彦)