インタビュー

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【 社長インタビュー 】

売上1000億円超、手中に M&Aと新規拡大寄与

2015年06月02日

丸全昭和運輸  浅井 俊之 社長

 M&A(企業の合併・買収)や国内外での新規拡大で、今期までの中期経営計画の連結売上高目標1000億円超をほぼ手中に収めた丸全昭和運輸(本社・横浜市、浅井俊之社長)。今期は、消費財物流など国内の新規事業領域への注力に加え、海外展開も加速。気概あふれる人材集団の構築に向け、「新卒採用に加え、経験豊富な人材の確保も進めていく」(浅井社長)。 

 ――平成27年3月期は増収増益。
 浅井 売上高は946億7200万円と前期比5.8%の増収。営業・経常・当期利益は10%以上の増益で過去最高を記録。株主配当を1円増配し、グループ全体でベースアップも実施。株主や社員に利益を還元することができた。
 ――好業績の要因は。
 浅井 2月に子会社化した日本電産ロジステック(現・丸全電産ロジステック)の連結化が大きい。3PL(サードパーティー・ロジスティクス)の新規拡大、日用雑貨など消費財を中心とした川下物流開拓の成果も出た。東南アジア向けプラント関連の取り扱いも増加した。
 ――運賃・料金適正化の取り組みも推進。
 浅井 傭(よう)車コスト上昇に対応し、おととしから交渉を開始。顧客の理解は進んでおり、利益面にも貢献している。今後も各部門で粘り強く交渉を続けていく。

丸全電産ロジを成長の糧に

 ――今期は中計の最終年度。
 浅井 連結売上高目標の1000億円超達成はほぼ現実的になった。今期の売上高予想は1030億円。丸全電産ロジの通期連結化に加え、国内外で受注した主要顧客向け新規3PLの稼働が売り上げ拡大に寄与すると見込む。
 ――丸全電産ロジの子会社化は成長の糧に。
 浅井 強化された国内外のネットワークを生かし、新規拡大や既存顧客の深耕に注力したい。日本電産グループ各社へもより良い品質をベースにした物流サービスで効率化に貢献していきたい。
 ――グローバル物流も拍車を掛ける。
 浅井 今後はさらに海外で売上高を伸ばす必要がある。今期はインドネシアで生産される化成品「ケミカル用アルミナ」の物流一括受託が本格的に動き出す。
 ――タイにも進出。
 浅井 昨年、合弁会社「協江丸全タイランド」を立ち上げ、機械設備の輸送から据え付け、メンテナンスまで一貫で扱う事業を開始した。今後は倉庫保管やトラック輸送を手掛けられる体制も整えたい。

マレーシアへの進出も計画

 ――ASEAN(東南アジア諸国連合)地域の事業展開を広げていく。
 浅井 東南アジアでの次の展開候補地として、マレーシアへの進出を考えている。既存顧客の物流ニーズや3国間輸送に対応する。
 ――丸全電産ロジのネットワーク活用も鍵を握る。
 浅井 丸全電産ロジが上海に隣接する浙江省平湖(ぴんふ)市に持つ約1万3000平方メートルの倉庫を活用し、新規顧客開拓を図りたい。平湖の工業団地に進出する日本電産以外の日系企業へのアプローチを積極化。中国の関連会社・徐州丸全外運の機能を生かし、トラック輸送を強化したい。
 ――国内での設備投資も加速。
 浅井 今期は宮城県名取市での倉庫新設を計画。三重県四日市市では需要拡大に応え、危険物倉庫を増設する。
 ――人材確保・育成も重要課題だ。
 浅井 今期は新卒採用に引き続き重点を置きながら、IT(情報技術)や海外、フォワーディングなどの専門スキルを持った人材の確保も強化していく。

記者席 将来を思えばこそ

 平成25年から開始した次世代リーダー育成のための勉強会「マルゼン・ジュニア・ボード・ミーティング」。2期生では女性グループ「新撫子(なでしこ)」が活動中で、女性活躍推進に向けた提言を検討している。社長自ら座長を務め、「体力を要するハードな仕事だが、企業の将来を思えばこその取り組み。今後も続けていく」
 人材不足が深刻化する物流業界。だが、丸全グループでは「ドライバーや現場作業員の定着率が良く、そこまでの不足感はない」。今春、グループ全体でベースアップを実施。充実した社員教育、資格取得の奨励、そして社員への利益還元を重視する姿勢が定着率向上にもつながっている。目前に迫った売上高1000億円超。長年の悲願がグループを支える「人」の手で、現実のものになろうとしている。
    
(略歴
 浅井 俊之氏(あさい・としゆき) 昭和20年6月27日生まれ、69歳。愛知県出身。43年愛知大法経卒、丸全昭和運輸入社、平成8年中部支店長、13年4月関西支店長、同6月取締役、17年常務、21年代表取締役専務、24年社長。(水谷 周平)