インタビュー

【 インタビュー 】
適正対価収受へ方向性 全国で「生の声」集約

2017年10月03日
全日本トラック協会 坂本 克己 会長
「豊かな労働環境の実現を目指し、ドライバーの幸せに全力を尽くしたい」と語る全日本トラック協会の坂本克己会長。労働環境の改善と生産性向上の両立に欠かせない適正運賃・料金が収受できる環境づくりを中心に、協会として取り組むべき課題について聞いた。
――「ドライバーの幸せ」を最重視。魅力ある業界づくりが必要だ。
坂本 トラック運送は「生活と経済を支えるライフライン」を担う素晴らしい仕事だ。現場で働くドライバーにとって魅力ある産業にするためには、やはり業界全体の賃金水準を高め、各企業がその原資となる適正な運賃・料金を収受できる環境をつくることがますます重要になる。
――11月の標準運送約款改正で、運賃と料金の区分が明確化。
坂本 業界にとっては大きな前進。運賃は「車上受け・車上渡し」が原則。荷待ちによる待機時間や付帯作業にかかる料金は、運賃とは別の対価として支払わなければならない。全ト協としても約款改正の周知徹底に努めていきたい。
――運賃・料金の在り方をはじめ諸課題については、地域や業態で意見が異なる。
坂本 8月、関東を皮切りに全国9ブロックとの意見交換会をスタートした。年内には全ブロックを回り生の声を集めたい。各ブロックや行政と同じテーブルにつき、共通課題の解決へ互いの心を合わせる機会にしていく。地域ごとで異なる意見や要望を把握・集約し、行政と話し合いながら、実現に向けた方向性を示していきたい。全ト協の各部会を通じて、業態ごとで異なる意見をいかにまとめていくかも重要になる。
――国への働きかけも強める。
坂本 国土交通省、厚生労働省、警察庁といった行政との連携を強めつつ、業界に対する手厚い支援と協力を強く求めていく。政府には高速道路料金の大口・多頻度割引恒久化や集配車両の駐車規制の緩和などをかねてより要望している。運輸事業振興助成交付金の確実な交付なども含め、引き続き要請していきたい。
安全の確保へさらに磨きを
――長時間労働の抑制を含めた働き方改革とともに、生産性の向上も重要な課題だ。
坂本 時間を短縮するだけで、ドライバーの賃金が減ってしまっては意味がない。適正な運賃・料金の収受に努めつつ、働き方改革で生産性・効率性の高い仕事を追求し、その成果を従業員に還元していく姿勢が不可欠。
――安全運行の確保が業界の社会的使命。
坂本 安全はさらに磨きをかけていかなければならない。このほど策定した「総合安全プラン2020」では、事業用トラックを第1当事者とする死亡事故件数を車両1万台当たり1.5件以下にする共有目標を定めた。各都道府県のト協と連携し、目標達成へ全力を挙げて取り組む。
ドライバーに自信と誇りを
――次代を担う若年層確保も必要。
坂本 例えば、災害発生時のボランティア活動に積極的に取り組む若者の姿を見ていると、人のため、地域のために尽くそうという気概を感じる。やり方によっては、こうしたボランティア精神を持つ若者をトラック運送業界へ呼び込むこともできる。3月に新設された準中型免許は、高卒者を含む若年層にドライバーとして活躍してもらうための大きなきっかけだ。
――協会活動への若手や女性の参画も積極化。
坂本 全ト協では年内にも女性部会を設立する。業界のイメージアップには青年部会の力や、女性のアイデアも欠かせない。
――全国のトラック運送企業が集結する事業者大会をどんな場に。
坂本 業界が担う社会的な役割を、消費者や荷主、社会に広く発信するため、心を1つにして、協調と団結を強める機会としたい。また安全運行の確保を誓い合い、「社会との共生」を力強くアピールする大会にしたい。
――働く人にやりがいを持ってもらうためにも業界の役割を誇示。
坂本 そうだ。東日本大震災や熊本地震など災害が発生した際、トラック運送は復旧・復興の原動力となった。トラックが止まったら国民生活や経済・企業活動も動かなくなることを社会へ訴えることが大切。働く人には「自分たちがライフラインを担っている」という自信と誇りを持って仕事に励んでほしい。そのためにも業界が火の玉のごとくまとまり、前へ進むことが最重要になる。