インタビュー

【 社長インタビュー 】
使い勝手の良さ追求 小口混載で需要を喚起

2017年08月22日
オーシャントランス 髙松 勝三郎 社長
ドライバー不足や法令順守への対応で、海上輸送の需要は日に日に高まっている。東京―徳島―新門司(北九州市)間でフェリーを運航するオーシャントランスの髙松勝三郎社長は「少子高齢化が進む中、物流網を維持するには、トラックと他のモードの連携が欠かせない」とする。小口混載輸送や、トラックの無人航送を推進する髙松社長に今後の戦略を聞いた。
――足元の実績は。
髙松 昨年フェリー4隻を代替え建造し、大型化した。モーダルシフト需要もあり、トラックの航送台数は好調に推移している。
――7月には九州に豪雨も。
髙松 自衛隊や支援物資輸送に対応した。災害時にも力を発揮する海上輸送の強みを生かした。
――九州でも徐々にモーダルシフト需要が高まっている。
髙松 料金と法令順守を考え、片道だけ利用するというような利用の仕方も増えてきた。
99%無人航送働き方を改善
――無人航送も増加。
髙松 99%がシャーシや大型車の無人航送だ。少子高齢化などでドライバーのなり手が減る中、労働環境の改善としてフェリーが見直されつつあると感じる。
――トラックとの連携がますます重要になる。
髙松 労働力不足は、国全体で考えるべき問題。フェリーは動く道路。トラックと連携して日本の物流を支える存在だ。
――自動運転をはじめ新技術も登場する。
髙松 物流の仕組みが変わってくるのは間違いない。そこで、急ぐ荷物はトラックの自動運転。そうでないものはフェリーと、それぞれにすみ分けが進めばいい。労働時間に対する規制が進むことで、おのずと変わるのではないか。
――多様なサービスを提供している。
髙松 荷物量が全体として減少している。利用してもらうにはさまざまな荷物を受け入れるのが一番。危険物も運べる、大物も運べる、食品にも対応できるというのがわが社の強みだ。
パレット1枚から受け入れ
――中ロットを対象にした小口混載も実施。
髙松 パレット1枚単位、1トン程度からの荷物を受け入れることが可能だ。自社保有シャーシを活用し、荷物の積み合わせを行うことで、いままで海上輸送を利用できなかった会社にも機会を提供する。
――利用も確実に伸びてきた。
髙松 毎日20トンシャーシで5本は送っている。いままではシャーシ1本半分の荷物でも、2本分の料金を払わなければいけなかった。だが、小口混載を利用してもらえば、1本は自社、半分は混載に回すこともでき選択肢が広がった。
――トラックの利便性が第一だ。
髙松 フェリーは装置産業。一度新船を投入すると20年は使い続ける。そのため、利用者であるトラックにとって使い勝手の良いサービスを考えていく必要がある。
――平成32年の東京五輪に向け需要は拡大中。
髙松 短期的にはそうだ。一方で五輪後の見通しは、不透明。物流の仕組みが変わることも見据え、利用者の選択肢をより増やすことを考えたい。
――本州―九州の航路が増えている。
髙松 清水―大分航路開設や苅田航路の大分寄港など、九州向け航路が変わりつつある。モーダルシフト需要の掘り起こしへ刺激になりそうだ。
――モーダルシフトの風を吹かせる。
髙松 フェリーとトラックの協調関係がなければ進まない。一致協力し需要掘り起こしに努めたい。
記者席 業界一のアイデアマン
シャーシの固縛システム、小口混載輸送の開発など、周囲が一目置く内航業界1のアイデアマン。髙松社長本人は「ユーザーや働く人の利便性を考えているだけ」と至って謙虚。物流企業にのみ営業を行う姿勢も、「トラックと船との協調」を考えればこそ。
船を愛する気持ちも強い。今年、大手清涼飲料メーカーのコマーシャルに新造船「びざん」が使われた。CM後半、船が大写しになるシーンを記者に示しながら、「こんなふうに使われると思っていなかった。最高だよな」。
(佐藤 周)