インタビュー

【 戦後72年 物流トップなに思う 】
出会いで広がる人生

2017年07月18日
鴻池運輸 辻 卓史 会長
昭和17年の戦中生まれ。3歳の時に、兵庫県芦屋市に大空襲。畑の中を逃げるうちに、姉が靴を落としたことだけが脳裏に残っている。小学校の成績は良くなかったが、行きたい中学校を決めてから猛勉強。大学も一橋大学1校しか受験をせず、落ちたら浪人という覚悟で突破した。
大学時代は、麻雀や囲碁に熱中。麻雀ではツキの流れを読む力と勝負勘を養う。囲碁は理詰めで、論理的な思考方法や形勢判断力を磨き、後にビジネスでも役立った。卒業後、宇部興産中興の祖といわれた中安閑一社長(当時)に誘われ同社に入社。新入社員教育の一環で海底炭鉱の最先端の切り羽まで行った。
午後4時には仕事が終わるので、現場のおやじとよく酒を飲んだり海釣りをしたりした。別の姿を見せてやると言われ行ってみたら、キャバレーの前座でギターを弾いていた。
国と財界が出資し設立された貿易研修センターの2期生として43年に参加。行政やマスコミ、商社などから派遣された仲間と1年間の寮生活で、語学と国際ビジネスを学んだ。その時に訪れた皇太子夫妻(当時)から、第2外国語で学んでいた中国語について質問されるハプニングもあった。
41歳で鴻池運輸に転じ、国際物流に注力した。63年に米国で土地を購入したのが最初の本格的な海外進出。平成5年には、日系物流企業として最初にベトナムに拠点を開設。当時のホーチミン市長チュオン・タン・サン(後の国家主席)が、初来日した時には京都の焼き鳥屋に案内した。
これまでを振り返ると、国籍・人種・宗教・言葉の分け隔てなく、多くの人々との出会いや縁で、自分の人生がつくられてきたと実感している。(文責・佐藤 周)