インタビュー

メインビジュアル

【 社長インタビュー 】

得意分野開拓に注力 3PLと国際 拡大へ 

2017年07月04日

丸全昭和運輸 浅井 俊之 社長

 平成29年3月期の連結決算で、売上高1048億円2400万円(前期比4.9%増)を計上した丸全昭和運輸(本社・横浜市、浅井俊之社長)。今期もさらなる成長へ、3PLとグローバル物流を強化。電子部品や住宅建材、危険物といった「堅実に拡大を図れる得意分野の開拓に注力する」(浅井社長)。労働環境改善に向けた働き方改革も全社で推し進める。

 ――29年3月期、念願の連結売上高1000億円超を達成。
 浅井 計画の1070億円には届かなかったが、前の期に比べ50億円近く増収となり満足している。リーマン・ショック前の20年3月期に過去最高の974億円を計上した後、100億円近く減収したことを思えば、「1000億円企業」となれたことは感慨深い。利益面も営業、経常、当期全て過去最高だった。
 ――好業績をバネに今期も増収増益へ。
 浅井 売上高は前期比4.0%増の1090億円とさらに大きな目標を掲げている。柱事業である3PLとグローバル物流の拡大を推進。優良な顧客基盤を持つ物流子会社に対するM&A(企業の合併・買収)も検討していく。
 ――3PL拡大への強化策は。
 浅井 関東、中部、関西、九州を中心とした自社施設と輸配送ネットワークによる「アセット型3PL」を強みとした高品質なサービスの提供で新規開拓に注力。得意とする電子部品や住宅建材関連で顧客層を広げたい。子会社の丸十運輸倉庫が持つ都内の拠点を生かし、通運と流通加工のノウハウを組み合わせたサービスの展開も模索したい。

鹿嶋市に火力発電用貯炭場

 ――5月に開設した仙台物流センター(宮城県名取市)をはじめ、国内の設備投資を加速。
 浅井 仙台物流センターは「東北支店」開設に向けた、3PL拡大の足掛かりにしたい。また、子会社の丸全九州運輸が7月12日、北九州市小倉に延べ床面積約8000㎡の一般倉庫をしゅん工する。主要顧客向けに東南アジアなどの工場から日本国内への海陸一貫輸送を手掛けていく。
 ――インフラ関連物流では新たな動きも。
 浅井 子会社の鹿島バルクターミナルが5月、来年春の完成を目指し、茨城県鹿嶋市の鹿島港外港地区で貯炭場を着工した。海運で輸入した石炭を貯蔵し、神栖市に新設される火力発電所への納入を扱う拠点。大型荷役機械と共に、可燃性危険物を扱うので散水設備を設置し万全な消火設備を整えていく。鹿島港の活性化にもつながる施設だ。

5月、働き方改革PJ発足

 ――グローバル物流は。
 浅井 インドネシア、ベトナム、タイといった東南アジアでの事業拡大を図る。メキシコでは双日ロジスティクスとの合弁事業もスタート。グローバル物流でも新たな柱を立ち上げていけば、売上高1090億円の達成は可能だ。
 ――労働環境改善にも力を注ぐ。
 浅井 5月、人事担当役員をリーダーとする「働き方改革プロジェクト」を立ち上げた。①長時間労働の是正②若手社員の離職防止③多様性のある働き方の導入④人材育成、異動、評価制度の見直し――といったテーマで研究を重ね、社内の意識改革を促したい。
 ――ソフト・ハード両面で効率化を追求。
 浅井 顧客ニーズへの対応力強化と業務効率化に向け情報システムの高度化を図るとともに、音声ピッキングなどの技術を取り入れながら、現場作業の省人化、自動化を進めていく。

記者席 丸全の魅力、伝えたい

 「〝10年後の丸全の在るべき姿〟を経営者になったつもりで考えてほしい」。自ら座長を務め、次世代のリーダー育成を図る勉強会「マルゼン・ジュニア・ボード・ミーティング」は今年度で4期目。これまでに約40人のOB・OGを輩出した。
 1期生が出したアイデアが実際に新しい海外研修制度の設計に生かされるなど、成果も出始めた。「焦らず一生懸命に勉強する仲間をつくることが目的。答えを出しやすいテーマではダメだと言っている」
 人材の確保へ、「やる気ある20代に活躍してもらいたい」と今年度から第2新卒の採用を開始。「マルゼン・ジュニア・ボード・ミーティング」をはじめ、若手社員が活躍できる活動のPRを強め、「当社で働くことの魅力を感じてもらいたい」と意気込む。

(略歴)
 あさい・としゆき=昭和20年6月27日生まれ、72歳。愛知県出身。43年愛知大法経卒、丸全昭和運輸入社、平成8年中部支店長、13年4月関西支店長、6月取締役、17年常務、21年代表取締役専務、24年社長。(水谷 周平)