インタビュー

【 社長インタビュ― 】
共同配送に活路 顧客と社員に恵まれ

2017年06月20日
大西物流 大西 三喜男 社長
大西物流(本社・愛媛県四国中央市、大西三喜男社長)は製紙関連の輸送を基盤に、その他の分野で20年以上前から、複数メーカーの商材を扱うハブ・アンド・スポーク型の共同配送に注力。年々売上比率を高めてきた。前期は2期連続の増収増益で、「顧客と社員に恵まれた」と大西社長。今年3月に仙台、6月には神戸に拠点を開設し、関東、関西圏での事業拡大で成長を目指す。
――前期の業績は。
大西 増収増益だった。売上高は前の期に比べ1.4%増の60億5500万円。目標の63億円には届かなかったが大台には乗った。荷主に恵まれ、社員は勤勉。輸送品質でメーカーから評価されることも多い。
――今期はどうみる。
大西 増収の見通しだが減益は避けられないのではないか。コストアップ要因が少なくない。軽油価格が上昇に転じ、人件費、傭車費も上がっている。
――製紙関連貨物の取り扱いがメーン。
大西 本社がある愛媛県四国中央市は製紙業が盛んで、売り上げの2割強を占める。当社は昭和29年、製紙会社の運輸部門が独立し発足した会社でもある。
幹線から配送までトータル
――共同配送が強み。
大西 製紙以外の荷物を取り込む必要があるとし、20年以上前から、本社近辺にある四国中央デポに荷物を集約し、四国全域に配送するハブ・アンド・スポーク型の物流サービスで共配を始めた。四国中央市は四国のへそに当たる。四国各地への配送拠点として優れ、高速道路も早期に開通した。長距離貸し切り輸送に比べ幹線輸送、保管、流通加工、配送をトータルで行うことは他社との差別化になる。運賃競争にもなりにくい。
――規模は。
大西 四国中央デポの延べ床面積は約9000㎡で、ほか本社近辺に計1万8000㎡の倉庫群がある。共同配送は日量200~300トンの取り扱いがあり、品目は食品、菓子、日用雑貨、潤滑油などさまざま。売上比率は年々高まり、安定経営に大きく寄与している。
――集配はどのように。
大西 集荷は主に大型車を使う。メーンの製紙関連を関東、関西などに輸送した後の帰り荷にもなり、積載率が向上する。集めた貨物は四国中央デポで仕分けなど流通加工を行い、自社、協力会社を合わせ約100台の車両で四国各地に配送する。
3月仙台、6月神戸に拠点
――関東、関西にも倉庫を持つ。
大西 埼玉県越谷市と大阪府大東市に支店を構え、それぞれ倉庫を併設している。3月に仙台、6月には神戸に拠点を新設した。中四国地区のSOFTグループ(新生倉庫運輸、大西物流、服島運輸、徳山トラック)をはじめ、九州、関西、関東、東北の各地区でも輸配送ネットワークを構築している。
――どこを強化していく。
大西 四国は人口減少で物量に限りがある。関西、関東圏の豊富な需要を取り込んでいく。拠点を新設する神戸には顧客も多い。徳島など四国東部向けの荷物は、神戸から運んだ方が効率的だ。四国中央デポが手狭になっており、倉庫内作業の効率化、安全確保の面でも効果が見込める。
――慢性的な人材不足だ。
大西 状況は都市部より厳しいのではないか。四国中央市には製紙工場など働く場所が多く、パート・アルバイトの時給は高騰している。人材確保には運賃値上げが欠かせないが、簡単ではない。輸送品質を武器に、品質の維持・向上にはコストがかかるということを、荷主に粘り強く訴えていくしかない。
◆記者席 幸せな家庭のために
「スローガンは創業当初から『幸せな家庭、立派な社会』。この目的のために、みんなで頑張ろうと言っている」
社内報「ふれあい」の中身もひと工夫。ソフトボール大会は選手一人一人の奮闘ぶりを臨場感あふれる語り口調で報告。従業員の弁当を写真付きで紹介したり、小学校入学児童のコメントを掲載したり。「社員が幸せと思ってもらえることが第一」
だからこそ、業界の行く末を憂う。「3年後、5年後にどうなっているか」。四国の人口減少に歯止めがかからず人材不足は深刻だが、適正運賃の収受は道半ば。「厳しさはじわりじわりとやってくる。共に成長できる道はあるはず」
好きな言葉は「凡事徹底」。趣味はゴルフ。健康法はウオーキング。
(略歴)
おおにし・みきお=昭和30年1月3日生まれ、62歳。愛媛県出身。54年武蔵工大(現東京都市大学)工学部機械工学科卒、学習研究社入社、平成3年大西物流入社、5年取締役、9年常務、11年専務、13年社長。(丸山 隆彦)