インタビュー

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【 社長インタビュー 】

「正しい努力」継続し チームワークこそ要 

2017年03月21日

愛知陸運 星野 晴秋 社長

 昨年6月、愛知陸運(本社・愛知県小牧市)の社長に星野晴秋上級参与が就任した。トヨタ自動車(旧・トヨタ自動車工業)で35年間勤務。海外の関連会社3社で社長を経験し、安全・品質とともに、チームワークを重視する組織づくりを推進してきた。初めて指揮を執る物流の経営でも、全員の努力を結集させた総合力を前面に掲げる。「人々から信頼され感謝される企業」が最大の目標だ。

「感謝される」を企業目標に

 ――物流事業に立ち向かう心境は。
 星野 就任が決まった時、特に驚くことはなく、気負い立つような思いもなかった。気持ちは真っさらだった。愛陸の社員たちには、「皆さんと一緒にさらに良い会社にしたい」と協力を求めた。
 ――抱負を伺いたい。
 星野 私の夢は人々から感謝される会社になること。社員たちと家族、顧客、協力会社、周辺地域の方々の営みで会社は成り立つ。その人々から信頼され、愛陸が存在していて良かった、助かったと感謝してもらえることを一番の目標に据えた。
 ――トヨタでは約半分の17年間が海外勤務。
 星野 英国工場の現地会社の課長として赴任したのを皮切りに関連会社3社の社長を経験した。文化、慣習、ビジネススタイルが国ごとに異なる中、いかに社員たちの協力を得て成長できるかを考えていた。正しい努力こそ実践の要と確信した時期だった。

3つの大切さ守り抜く決意

 ――考え抜いた方策は。
 星野 仕事で大切な3つを全て守り抜くこと。安全、品質を何よりも優先して実現させる。さらに、真のチームワークをつくり上げて行動で証明することを重視した。
 ――強いリーダーに依存するのではなく、主体性を持たせようと。
 星野 個人が自立している中で仲間を信頼し、共有した目標に向かって協力する活動が真のチームワーク。さまざまな危機の局面に立ったこともあったが、考え方を社員に明確に説明し、チーム意識を高めた積極的な取り組みで中国や台湾でも成果を生んだ。
 ――愛陸の中でも同様にチームワークを重視。
 星野 社内だけではなく、パートナーである顧客も協力企業も、さらには地域の住民も一体となったチーム。協力会社を下請けとは見ない。トヨタでは「上から下への工程」とは言わない。後工程部門から前工程部門にオーダーが来るのに合わせて送るという〝水平表現〟を使っている。

厳しい環境にこそ好機あり

 ――どう将来を切り開いていくか。
 星野 ドライバー確保の困難さ、燃料高騰、天災など危機はやってくる。その時ほど安全・品質・チームワークを大切に行動したい。高い志を持って、失敗を恐れず再挑戦が許される会社には必ず未来がある。人材、資金の確保など、困難な事態を乗り越えていくために平時に先手を打っていく。
 ――来年度のテーマは。
 星野 顧客の抱える課題にさらにしっかりと耳を傾け、効率化への提案力を練り上げる。現場・営業・管理の各部門が三位一体となっていまの仕事を深く耕していく。ドライバーもチームの主戦力だ。
 ――トヨタの厳しい要求にも応えていく。
 星野 トヨタがわれわれに望むこともますます高度なものになってくるが、好機と捉えている。実力は困難の中で鍛えられる。トヨタの培ったノウハウも物流で展開できるチャンスになる。絶えず改革していく気概で、物流企業としての実力を高めたい。

記者席 現地社員の成長に驚き

 トヨタ自動車勤務時代、海外現地会社3社のトップを務めた。物流企業経営者として異色の経歴。「同じボートに乗った仲間のようなもの。チームで身に付けた競争力で儲けよう」と気さくに語り、現地社員の士気向上に成功。
 四川大地震、リーマンショックの非常事態では、冷静に対処した彼らのチームワークの良さに心が震える感動も。今年8月、設立75年を迎える名門・愛知陸運の経営でもその手腕が期待される。
 前任社長の小林隆志氏とはトヨタ時代、職場で熱い激論を交わした先輩後輩の仲。「何でも言える兄弟のような関係」。早朝の愛犬散歩が日課。空にきらめく星に美しさを感じるロマンチスト。

(略歴)
 ほしの・はるあき=昭和30年10月16日生まれ、61歳。東京都出身。55年早大理工大学院修了、トヨタ自動車工業(現・トヨタ自動車)入社、平成9年海外事業2部主担当員、17年2月海外事業企画室主査、6月四川トヨタ自動車出向、23年国瑞汽車出向、27年10月トヨタ自動車物流管理部主査、11月愛知陸運上級参与、28年6月社長就任。(谷 篤)