インタビュー

【 社長インタビュー 】
「社員との絆」重視 顧客目線こそ経営の軸

2017年02月21日
東海西濃運輸 田口 幸太郎 社長
昨年7月、東海西濃運輸(本社・岐阜県土岐市)の社長に田口幸太郎専務が就任した。昭和59年から32年間、社長を務めてきた父親の田口利寿氏からバトンを受け継いだ。「顧客目線」を経営の根本に据えて、特積みを中心とした小口商流貨物輸送、3PL事業などの主力事業の基盤強化を目標に掲げる。社員たちとのきずなを大切にしながら、着実に企業成長の道を切り開く方針だ。
――社長に就いて7カ月。現在の心境は。
田口 責任の重さは日々、強く感じている。就任前から経営理念である「会社の発展と社員たちの幸福」を念頭に置き仕事に当るよう、先代から教育を受け経営に携わってきた。その思いをベースにかじ取りをしていきたい。
昇格突然決定 前準備怠らず
――トップへの昇格はいつ伝えられたのか。
田口 株主総会の場で、親会社セイノーホールディングスの田口義隆社長(東海西濃運輸代表取締役)から、名指しで就任を要請された。事前に何も聞いていなかったので驚いたが、父が32歳で社長に就いたこともあり、いざという時の準備はしていた。
――若さと行動力に周囲の期待を受けての就任。
田口 経営者としてどうあるべきか、そのよりどころとすべきは何か、外部の方々の話もノートに書いて勉強を続けてきた。
――大学を卒業し3年弱、アパレル企業で勤務。
田口 セイノーグループが最重視する「お客さま目線」と全く同じ考えでの経営姿勢だった。店舗での接客を通して、おもてなしの気持ちがいかに大切かをたたき込まれた。
――サービス業のあるべき姿を体で覚えた。
田口 世間をよく知らない学生が社会に出て、真っ先に鼻っ柱をへし折られたようなもの。商品の「お直し」でミシンが使えるようになったのも思い出。
大型車運転で現場感覚養う
――顧客本位の視点を重視。
田口 荷を送る人、荷を待っている人がいる以上、その心をつなぐことがわれわれの仕事。どんな時でも判断基準は顧客の目線に置く。
――西濃運輸出向時代にトラック乗務も経験した。
田口 小型、中型に限らず、大型車両も運転した。夜間の首都高速道のトラックの列を鮮明に覚えている。最前線でハンドルを握る社員たちの気持ちが理解できるきっかけとなった。
――社員との家族主義を設立時から掲げている。
田口 先々代社長だった祖父福太郎は、長距離便のドライバーにおにぎりを出発時に手渡していた。社員を気にかける姿勢は私も大切にしたい。「心の通じ合う、深い理解と正しい管理」。祖父が残したこの言葉は常に私と共にある。
――新施策にも反映を。
田口 今年から本社も24時間体制で夜勤勤務を総括する部署を設置。いつも見守っているという思いをドライバーに伝える意味合いも込めている。
――会社は上昇機運。
田口 合理化、効率化、サービスレベルの向上のために、店所の統合・新設を推し進めてきた。セイノー輸送グループ施策の下、長野県全域も担い、売上高、社員数ともに倍近い規模に拡大。その勢いで6年連続、グループ表彰を受賞できた。手応えは十分。半面、課題も見据えて手を打っていく。
――課題とは。
田口 会社の成長に、戦力となる社員の労働力や組織がついていっていない面がある。至らぬ点を克服し、顧客や取引先からも評価いただける会社にしなければならない。
――今後の成長のポイントはどこに。
田口 当社のノウハウ、資産を有効に活用できれば、まだまだ新しい事業にチャレンジできる。今は主力の特積み事業のさらなる拡大が重要だ。着実に伸びている3PLも多角的、かつ積極的に力を入れていく。2月に新設した「運び方改革ワーキンググループ」でも事業強化につながる企画を練り上げていきたい。
記者席 荷主の肉声に耳傾け
専務時代と比べると回数は減ったものの、定期的に荷主訪問を続けている。いまのペースでいくと1年間で合計100回訪れて話を聞くことになる。「叱られることもしばしば」というが、貴重なナマの声をしっかり受け止める。期待に応え改善策を練り実行するのが責務と捉えている。
小学1年生の長女を頭に3人の子供の父。平日は帰宅が遅くあまり話ができない。休日の習い事の送り迎えでの会話に心を弾ませる。その合間を縫ってマラソンで心身ともにリフレッシュ。1回、15kmを走り抜く。
(経歴)
たぐち・こうたろう=昭和55年3月20日生まれ、36歳。岐阜県出身。平成14年名古屋学院大経済卒、アパレル企業に入社、16年退社し東海西濃運輸入社、西濃運輸出向、20年東海西濃運輸営業部次長、取締役営業部長、23年専務、28年7月1日社長就任。(谷 篤)