インタビュー

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【 社長インタビュー 】

10年で売上高7割増 環境変化を「逃さずつかむ」

2017年01月17日

つばめ急便 石原 修 社長

 つばめ急便(本社・大阪市、石原修社長)はこの10年で売上高が1.7倍に拡大。リーマン・ショックなどの環境変化を「逃さずつかんだ」(石原社長)。センター増強、執行役員制度の導入、営業強化策などが奏功。来期はIT(情報技術)システムを導入して業務効率化を図る。社員のやる気を引き出して輸送品質を上げ、成長への好循環を生み出す。

 ――今期の売上高は。
 石原 120億円(前期比4.6%増)の着地とみている。今期から始めた3カ年中期経営計画の1年目の数値目標はクリアしそうだ。来期は127億円(前期比5.8%増)、最終年度の31年3月期は134億円(同5.5%増)の目標を掲げている。ターゲットを明確に定めた新規開拓と既存顧客の深耕を軸に実現可能な目標を設定している。
 ――10年前の売上高は70億円。急成長した。
 石原 環境変化を逃さず攻めた。平成20年のリーマン・ショック後から大阪府門真市、愛知県小牧市、京都市などに保管面積1万㎡級の物流センターを相次ぎ開設した。今年8月にも千葉に約1万㎡の物流センターを開設する。
 ――物量を確保しないと売り上げは増えない。
 石原 営業力を強化した。景気が冷え込み運送会社が倒れ出す中、当社はメーカー系荷主数社と取引を開始。これが売り上げの約4割を占める建材の3PL事業の拡大に大きく寄与した。つばめ急便の知名度も上がってきている。

執行役員制度導入で対応力

 ――営業強化の具体的な施策は。
 石原 5年前に執行役員制度を導入して組織の若返りを図り、環境変化に迅速、柔軟に対応できる体制にした。大事なのは業績目標。数値目標の裏付けを積み上げ、その上で競争原理を働かせた仕組みを構築して営業力を底上げした。事業部ごとの会議では目標に対する現状分析を行い、改善を図っている。
 ――競争原理を働かせた仕組みとは。
 石原 社員、事業所、事業部ごとに売上高、利益、新規獲得数などのランキング表を作り、社内のパソコン端末で「見える化」している。どの会社でも営業に関するデータはあるが、月次で締めて発信することで意味が生まれる。ランキング下位の社員、事業所を盛り立てるのは執行役員の仕事。目標達成に向け、会社一丸で取り組むことが大切だ。
 ――利益をどう向上。
 石原 当社では走行距離に対する単価を重視している。1km当たりいくら稼いでいるかのランキングも見える化し、無駄な運行が一気に減った。原価管理や不採算業務に対する料金改定も行っている。

97点台運転手は落ちこぼれ

 ――輸送品質という裏付けが欠かせない。
 石原 品質には自信がある。自社管轄の運行では厳しすぎるぐらい管理している。当社のデジタルタコグラフ(運行記録計)の平均点は99点。97点台のドライバーでさえ落ちこぼれのレッテルを貼られるほど。フォークリフトには内と外の両方にドライブレコーダーを装着し、商品事故撲滅に取り組んでいる。こうした会社は珍しいのではないか。
 ――ITの活用は。
 石原 来期から、自動配車システムと新たな動態管理システムを導入する。前者は多忙を極める配車係の環境改善が目的で、ドライバーとのコミュニケーションを密にして現場力を高める。後者は車両の正確な位置情報をリアルタイムで顧客と共有する。医薬品物流では分単位の納品が求められ、他社との差別化で大きな武器になる。

(略歴)
 いしはら・おさむ=昭和34年10月4日生まれ、57歳。兵庫県出身。53年兵庫県立伊和高卒、宏協運輸倉庫(現・つばめ急便)入社。平成元年取締役、7年専務、12年社長。

記者席 ピンチはチャンス

 料金収受が難しい付帯作業にコストをかけていたが行政の取り締まりが厳しくなり、もう長距離輸送はできない――。事業者が倒れ出す中、「(業界の)ピンチをチャンスと捉えた」。集めた情報を基に営業展開し、退場を余儀なくされた事業者に代わって物流業務を受注。会社を大きくした。
 それでも、「毎年7億円分の仕事がなくなっている」。増収にするには7億円以上の稼ぎが必要になる。「厳しい世界。だからといって社員の尻をたたくだけでは動かない。営業をやっていて、〝面白い〟と思える仕組みがないと」
 「輸送品質がないと話にならない」と強調。来期は2億5000万円を投じたIT(情報技術)システムが稼働する。現場力のさらなる向上に向け、社員を引っ張る。(丸山 隆彦)