インタビュー

【 社長インタビュー 】
安定輸送で信頼に応え 新規取引拡大も

2014年12月16日
西濃運輸 大塚 委利 社長
消費増税後の荷動き回復が遅れる物流業界。逆風の中、西濃運輸(本社・岐阜県大垣市、大塚委利社長)は安定した輸送力と時間、精度、安全に磨きをかけ、新規取引を着実に拡大。セイノーホールディングス(同、田口義隆社長)が今期スタートした中期3カ年計画の目標達成に向け、「輸送事業の中核としての責任を果たしていく」(大塚社長)考えだ。
――上期の業績は。
大塚 4月1日に行ったグループ再編の影響を加味した調整値では、西濃運輸単体で増収増益を確保した。再編により上期で売り上げにして32億円分を切り離したが、営業努力で3分の2は取り戻すことができた。利益は絶対額でもプラス。通期では最低でも2%の増収を目指す。
――荷動きはどうか。
大塚 持ち直すとみていた第2四半期も、物量は回復に至らなかった。上期は前年同期比で2.7%の物量減。一方、収入は調整値で2%増えている。(1)新規顧客との取引開始(2)運賃是正(3)燃料サーチャージの浸透――などでカバーした。運賃是正やサーチャージ浸透の効果は下期の業績に、より反映されるはずだ。
4つのネットワークそろえ
――運賃改定への理解は。
大塚 昨年末と今年度末は、人不足で「運びたくても運べない」状況が顕在化した。そうした中、きちんと運賃を出すことについての理解は、業界全体として得られたのではないか。
――新規顧客獲得に手応えが。
大塚 上期で約3万件の新規取引を獲得。下期も引き続き力を尽くす。
――今期の目標達成に向けた重点策は。
大塚 運賃アップの代わりに提供できるのは品質だ。時間、精度、安全をさらに高める。全運行車に映像記録型ドライブレコーダー搭載のデジタルタコグラフ(運行記録計)を装備したことで、事故は前年同期に比べ半減している。運行車の定時出発の取り組みでも成果を得られており、良い循環に向かいつつある。
――輸送力の安定供給にも注力。
大塚 年間を通じ安定して運ぶ力を顧客は評価する。特積み、急便、航空貨物輸送の3つのネットワークに加え、昨年10月からドア・ツー・ドアで運ぶ積み合わせ貸し切り輸送の全国ネットワークを構築。荷物の形状に応じた適正な運び方を提案できる体制になった。
――提案の幅が広がった。
大塚 顧客は複数の提案の中から、スピードやコストなど自らのニーズに合ったものを選べるようになった。経営資源である4つのネットワークを活用して、顧客の要請に応えていく。
女性活躍の場拡大を視野に
――人不足の中、他社で自社比率を高める動きがあるが。
大塚 もともと自社比率は高い。幹線は8割が自社。現在の比率を維持するとともに、将来的にさらにシェアを高めていく必要がある。上期で幹線ドライバー約40人、セールスドライバー約100人の増員も実施した。
――女性の活用は。
大塚 女性をドライバーとして活用する道筋は社内で積み上げたものがある。今後は物流センターのマネジメントなど、より広く女性が活躍できる場を整えていきたい。男性が気付かない部分に目が向き、品質向上にもつながるはず。女性だけで運営する都市部の集配拠点の実現にも挑戦できれば。
――創立70周年を見据えたグループの3カ年計画が今期スタート。
大塚 輸送事業では輸送ネットワークの安定やロジスティクス事業の拡大、国際化への対応に注力する。中核を担う事業会社として、まずは増収増益という形で責任を果たしていく。
記者席 野球部は社員の誇り
西濃運輸は今年7月、社会人野球の最高峰を競う第85回都市対抗野球大会で悲願の初優勝を果たした。東芝やJX-ENEOSなどの強豪を下し、3年ぶり33回目の出場で勝ち取った栄誉だ。
「顧客から『おめでとう』と、ドライバーが声を掛けられることも」。野球は優勝したが、仕事で評価を得られなければ元も子もない。期待に応えるため、全社一丸で輸送品質にさらに磨きをかける。その原動力が野球部優勝の〝誇り〟だ。
「社員の気持ちに、いままでにない高まりがある。仕事も頑張らなければ、と」。顧客満足度向上に、いままで以上の力が入る。(藤本 裕子)
(略歴)
大塚 委利氏(おおつか・しずとし) 昭和23年10月28日生まれ、66歳。岐阜県出身。46年愛知大法経卒、西濃運輸入社。航空海運事業部航空海運部長、取締役営業本部担当、セイノーホールディングス取締役経営企画室担当兼西濃運輸経営改革本部担当などを経て、平成22年セイノーHD輸送事業企画部担当兼西武運輸(現・セイノースーパーエクスプレス)社長、23年西濃運輸社長。