インタビュー

【 インタビュー 】
発展へ支援策拡充 災害、労働力を中心に

2016年11月15日
日本倉庫協会 藤岡 圭 会長
倉庫事業者を取り巻く環境が変わろうとしている。業界では停滞する荷動きに加え、労働力不足や災害対策などが喫緊の課題。各社は経済を支えるインフラとして公益性を高めつつ、環境変化への対応が重要になっている。6月に就任した日本倉庫協会の藤岡圭会長(三井倉庫社長)に今後の業界の展望を聞いた。
――倉庫業界を取り巻く経営環境は。
藤岡 荷動きは横ばいから下落傾向が続いている。国土交通省の営業普通倉庫21社統計を見ると、昨年よりも入出庫高・保管残高ともに前年同月比でマイナス傾向にあり、荷動きが停滞している。
――物流不動産による大型施設の供給も続く。
藤岡 巨大最新倉庫だけが物流の主役かといえばそうではない。物量全体のうち、巨大施設で業務が必要な貨物がどのくらいのシェアを占めるかを考える必要がある。既存倉庫事業者の施設でも遜色ないサービスはできる。いまは雰囲気に押されているが、将来巨大施設がなくても需要に対応できる時代が来るだろう。
――日倉協としてどんな活動に注力する。
藤岡 多くの公益性を有する倉庫業の発展、環境変化に対応し得る会員事業者支援策の拡充に注力する。特に災害時のBCP(事業継続計画)を人材やノウハウが不足する中、個社で策定することは難しい。最低限必要なものをまとめた簡易版BCPの策定を支援し、各社が肉付けできるように取り組みを進めたい。
自治体との広域協力も視野
――地方自治体との協力協定締結も重要に。
藤岡 災害に強い物流システム構築のため、地方協会と自治体の協定締結を促している。発災時は初動対応が重要。協定を結んでおけば、支援物資物流をスムーズに立ち上げられる。隣県にも物資拠点を構えた4月の熊本地震のように、周辺自治体との広域的な取り組みも検討していく。
――業界では労働力不足も喫緊の課題。
藤岡 倉庫周辺で商業施設開発などが進み、人材確保が難しくなりつつある。少子高齢化により、労働力不足は中長期的に避けることのできない課題。いまから対策に取り組まなければならない。
小中学生などへのPR加速
――どんな取り組みを進めているのか。
藤岡 各地区協会で小中学生などを対象に「倉庫見学会」を長年開催している。一般の人には、多くのフォークリフトが動く光景でも面白い。保管、流通加工などを通じ、日頃手にする商品がどう扱われているかを理解してもらい、倉庫業の魅力を伝えることが重要。一つのアイデアが生まれれば、他の地域で共有することができる。
――従来の仕組みの見直しも必要になる。
藤岡 働き方改革、先進技術の採用といった労働力を補う解決策が重要になる。情報の見える化を図ればより効率的な物流を実現できる。IT(情報技術)とビッグデータを活用して生産性を高める「インダストリー4.0」などの情報を収集し、会員に発信する機会も増えるだろう。
――10月に改正物流総合効率化法が施行した。
藤岡 国交省が物流生産性革命を目指す中、倉庫業界にも重要な政策となる。保管と輸送の連携は手待ち時間の削減など、オペレーション全体の効率化につながる。この数年、物効法認定件数は増加しており、さらなる利用拡大を図りたい。
――具体的には。
藤岡 協会内に「物効法認定取得相談室」を設け、倉庫建設を計画する会員事業者に、一つ一つの事例に合わせ対応している。どんなメリットがあるかを分かりやすく説明することが重要になる。
――来年8月には法人化50周年を迎える。
藤岡 2月に検討委員会を設置し、来年に記念事業を行う。会員の意見や要望を聞きながら、協会の求心力向上、次世代に向け業界発展の契機につながるものを考える。
(経歴)
ふじおか・けい=昭和28年12月23日生まれ、62歳。52年早大商卒、三井倉庫入社、平成23年常務、24年社長、26年三井倉庫ホールディングス社長。日倉協では24年から4年間副会長を務め、28年6月会長就任。(小林 孝博)