インタビュー

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【 社長インタビュー 】

新中計で成長への礎を 専門性と魅力 高める 

2016年08月23日

日通商事 新居 康昭 社長

今期、新中期経営計画「ALOZ2018経営3カ年計画~成長への礎~」をスタートした日通商事(本社・東京)。5月に就任した新居康昭社長は「事業の専門性と商品・サービス群の魅力を高め、次の経営計画に向け、事業領域の裾野を拡大。成長への礎を築く3年にしていく」と意気込む。

――抱負は。
新居 日本通運グループ連結売上高の約2割を担う筆頭子会社のトップとして、責任の重さをひしひしと感じている。今期スタートした新中計の施策を従業員と共に推進し目標を達成する使命感でいっぱいだ。
――新中計の内容は。
新居 重点項目は、前中計で掲げた「事業構造の改革」「国際関連事業の拡大」「経営基盤の強化」の3本柱を継承。基本方針は「事業の専門性を高め、戦略的投資を通じて、社会インフラである物流を核にグローバル経済を支える企業へと変革を図る」。利益にこだわる経営を進め、最終年度の営業利益は80億円を目指す。
――渋沢登前社長時代に組織を見直した。
新居 9つあった総合支店を札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、福岡の7つに再編。総合支店下の支店を「営業センター」に変更した。事業部門も物流商品と物流機器を統合し、「物流商品・機器」「リース」「保険」「整備製作」「石油」「LPガス」「ロジスティクス・サポート(=LS)」「国際営業」の8部門に。サービスを効率的に販売していく体制が整った。これを定着させ、各部門が機動力をフルに生かせるようにしていく。

国際関連サービスを拡充へ

――強化する分野は。
新居 当社の売上高は「石油」「LPガス」2部門で5割を占める。エネルギーは物流・生活インフラとして不可欠。長年培ってきた調達力を維持・強化しつつ、選択と集中で効率的に安定供給できる体制を築いていく。整備製作事業は投資を積極化している分野。自動運転など技術革新が進展しても根幹は「安全」。人が支える整備の存在意義は不変だ。人材確保・育成を含め、事業基盤をより強固にしたい。
――輸出こん包中心のLS事業も成長分野。
新居 LS事業の売上高比率はまだ小さいが、自動車関連など技術力には定評がある。グローバル展開を加速するためにも伸ばすべき事業の一つだ。
――海外展開も加速。
新居 国際関連の売上高は約1割。中国や東南アジア、米州に拠点を置き、自動車関連の特定顧客に対するLS事業をメーンにしている。今後は日通グループ全体の企業価値向上に貢献するために、当社が顧客に提供できるサービスの幅を拡充していくことが必要だ。

鮮度維持技術で新たな価値

――「物流商品・機器」部門では鮮度維持技術を取り入れた商品を開発。
新居 楽しみな分野だ。高鮮度保持機能を持つ20フィート冷蔵コンテナ「フレッシュバンク」の試作1号機を完成させ、量産化に向け実証実験を実施中だ。長時間鮮度を保持する「雪状氷」とともに、TPP(環太平洋経済連携協定)の進展を見据え、日本の農・水・畜産品をアジアなど世界に流通する手段として価値のある商品になり得る。
――顧客ニーズに合わせ新サービス・商品を。
新居 例えば、当社は着用するだけで作業時の腰への負担を軽減する腰部サポートウエア「ラクニエ」という商品を販売している。7月に熊本地震の復興支援を目的に熊本市役所に寄贈した。こうした商品は労働力不足解消をテーマに、働く人が楽に作業できる環境づくりにも貢献できる。

 

記者席 情熱家が貫く組織論

ラグビーに打ち込んだ高校時代を経て、日通時代から貫く信条がある。「One for All, All for One」。個は全体のために、全体は個のために――。燃える企業集団づくりに情熱を注ぎ続ける姿勢がこの信条に象徴される。
各従業員が「One」であれば、会社は「All」。一人一人が責任を持ち役割を果たし、個を生かすために会社がフォローする。「ラグビーは明快な戦術と一人一人の高いスキル・体力がなければハイレベルな試合を展開することはできない。企業経営も同じ」。広い視野で見れば、「Oneは日通グループ、Allは市場全体」。OneとAllの相互作用で生まれた熱が企業、市場を活性化する。
息抜きは家族同伴で行く温泉。趣味はゴルフ。「ルールに基づいた汗をかくゴルフが好き」と笑う。

(略歴)
にい・やすあき=昭和31年8月20日生まれ、60歳。徳島県出身。55年北大経卒、日本通運入社、静岡支店長、総務・労働部長兼NITTSUグループユニバーシティ部長などを経て、平成23年取締役兼執行役員関西ブロック地域総括兼大阪支店長、26年取締役兼常務執行役員、28年5月日通商事社長。(水谷 周平)