インタビュー

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【 社長インタビュー 】

中計目標上回る成果を 新規開拓分野も構想

2016年08月02日

丸運 荒木 康次 社長

今期、3年で売上高521億円、経常利益15億6000万円を目指す中期経営計画をスタートした丸運(本社・東京)。6月27日、市原豊前社長(現・相談役)からバトンを受けた荒木康次社長は「顧客に確かなサービスを提供しながら、会社の永続的発展を導くことが私の使命。中計目標を少しでも上回る成果を出したい」と意気込む。

――物流業界の印象は。
荒木 国内外のネットワークの広さ、ち密さに驚いている。以前は荷主としてモノが指定の時間・場所に届くことが当然と捉えていたが、システムが構築された上でうまく運用されないとモノは届かない。貨物が血液なら、物流は血管だ。
――就任の抱負は。
荒木 創業者・金原明善が唱えた「利他自利」の精神に、「コンプライアンス(法令順守)行動最優先」「環境マインド醸成と持続可能な社会づくり」「人材育成・活用とダイバーシティー(多様性)推進」の3つを吹き込む。出身地である近江商人の理念「3方(売り手・買い手・世間)よし」に通じる精神として私自身も大切にしたい。
――市原前社長が築いた基盤で中計を推進。
荒木 グループ経営理念制定やコーポレートガバナンス(企業統治)標準化といった新たな時代を乗り切るための基盤が整った。これらと中計を2000人のグループ社員が理解・共有し、個別の行動計画に落とし込むことが重要。全社でベクトルを合わせ、中計に新たな戦略を加えながら、目標以上の成果が出せる経営を進めたい。

JXグループ関連の開拓を

――国内の強化分野は。
荒木 拠点を見回りながら感じたが、丸運には潜在能力がある。例えば、主要顧客のJXグループ関連では仕事を取りこぼしている分野がある。JXは石油や金属以外に幅広い事業領域を持つ。新規開拓を図る〝横掘り〟と既存業務の〝深掘り〟による新しい発想と提案力で、業容に幅と深みを持たせたい。
――構想は。
荒木 一つは「スポーツ物流」。JXには野球、バスケットボール部がある。キャンプや遠征時に従来個別に頼んでいたユニフォーム、応援グッズなど関連用品の輸送を丸運がワンストップで扱うイメージだ。これを全企業のスポーツ担当に提案していきたい。JXのリサイクル事業と連携した太陽光発電パネルの回収物流も開拓できる分野だ。
――JX以外では。
荒木 自動車用アルミ部材を造る顧客のニーズに対応した、栃木県真岡市の物流センター増床工事が11月にも完了する。今後は需要の高い首都圏でのセンター機能増強が急務になる。
――3温度帯物流も成長の種に。
荒木 実を結ぶには時間と経験を要する分野だが、埼玉県新座市の拠点で扱う輸入野菜の流通加工業務は「鮮度維持が飛躍的に改善した」と顧客からも好評だ。こうした新規領域は急がず慎重に育てながら、まずは取り組みやすい分野で事業拡大を図りたい。

中国に4カ所目の拠点検討

――海外は。
荒木 好調な天津はじめ上海、常州での中国事業が軌道に乗りつつある。秋には天津の拠点能力を増強。広州辺りに4カ所目の拠点開設を検討中だ。ベトナム、タイ、ミャンマー、マレーシアなどインドシナ半島でのネットワーク拡充も検討していく。
――人材育成にも注力。
荒木 企業活動の原点は「人」だ。手間をかければ人は伸びる。今期開始した階層別研修には私も関わり、手作りの体験型チーム研修を取り入れるなど工夫を凝らした。社員一人一人が成長しようとするパワーが企業の活力につながる。

 

記者席 趣味も多彩な行動派

「山中の賊を破るはやすく、心中の賊を破るは難し」。儒学者・王陽明の言葉を座右に置く。「業務上の困難は力を合わせれば解決できるが、心の中の障害を打ち消すことは難しい。社員の心に賊が住み着かないようにするには、その人にスポットライトを当てた育成が大切」。就任内定後には大型トラックの免許を取得。「体験を乗務員の育成に生かしたい」
「武芸も文芸も百般」と趣味は多彩。モータースポーツや野球、サッカーなど各種球技を観戦。運動は「ハードな種目が好き」。約30年スイミングスクール通い。週1回1000~1500mを泳ぐ。
異色なのは、早大時代から続ける琴古(きんこ)流の尺八。「呼吸量が多く脳内が酸欠状態になり、座禅と同じく無の境地に」。精神面も鍛え続ける、エネルギッシュな行動派だ。

(略歴)
あらき・やすじ=昭和30年3月31日生まれ、61歳。滋賀県出身。53年早大政経卒、日本石油(現・JXエネルギー)入社、新日本石油広報部長などを経て、平成26年JX日鉱日石エネルギー取締役兼常務執行役員潤滑油企画部・潤滑油需給部・潤滑油販売部管掌、27年取締役兼常務執行役員潤滑油カンパニー・プレジデント、28年4月JXエネルギー顧問、6月丸運社長。(水谷 周平)