インタビュー

【 インタビュー 】
特積みは戦略上不可欠 名鉄運輸と共同化加速

2016年06月28日
日本通運 植松 満 執行役員
特積みネットワークの強化へ、名鉄運輸との資本業務提携に踏み切った日本通運(本社・東京、渡辺健二社長)。「総合物流企業として特積みは営業戦略上、必要不可欠」と話す植松満執行役員に、提携の狙いや特積みネットワーク効率化の戦略を聞いた。
――特積みを巡る環境をどう認識。
植松 今後、特積みの大幅な数量増加は見込めないと考える。国内製造業の空洞化や人口減少に加え、大手小売り・卸による自社物流拠点整備や物流機能強化で、店鋪・中小卸への納品が減少するといった企業間物流の変化による影響もある。
――人手不足や労務管理の規制強化など課題も多い。
植松 当社も危機感を持っており、提携事業者との協力関係強化や鉄道・船舶を活用したモーダルシフト推進を加速させているところだ。
――特積みの強化・効率化へ再構築を進めた。
植松 平成21年からグループ内で重複するネットワークを整理・統合し、中核拠点の運用を日通トランスポートに集約。ローカルエリアは地域の専業事業者の協力を得てきた。
都市部でも集配共同化検討
――昨年12月、名鉄運輸と資本業務提携契約を締結。
植松 名鉄運輸とは従来、配達委託中心に取引があったが、さらに効率化を図るには拠点、集配エリア、幹線といったネットワークの1元化を検討しなければならない。一歩踏み込んだ「戦略的事業パートナー」として、信頼関係をさらに強める必要があると判断した。
――協業の内容は。
植松 まずは集配の共同化。25年以降、東北、四国、九州の一部地域などで配達委託・共同化を進めてきたが、関東圏や名古屋、阪神地区 などでも配達の共同化を推進すべく取り組んでいる。渋滞や駐車禁止対策で配達効率が悪いオフィスエリアや住宅地といった都市部での配達共同化は、2社でエリアごとに担当を定め配達網を細分化すればサービスレベルや生産性の向上が図れる。
――ターミナルや集配拠点共用、幹線共同化も。
植松 施設の共同化は相互の資産効率向上を視野に検討を進めている。幹線共同化は空きスペース活用で双方の積載率を高め、コストの低減を図ることを目的とする。
――他事業へのシナジー(相乗)効果も追求。
植松 引っ越しなど当社商品の販売委託や、鉄道コンテナ輸送の活用を促進した協業を進める。 双方が得意なサービスをワンストップで売ることで、相互の売上高を拡大させるチャンスも増える。
――戦力確保にも有効。
植松 例えば引っ越しだ。名鉄運輸の特積みは法人顧客が休みの土日は車両運行に余裕があり、当社の引越しに車両を融通してもらえば、戦力確保と車両稼働率向上という双方の利点が生まれる。今年の3?4月も多くの車両を提供してもらい、スポット傭車に比べ外注費抑制効果も出た。
輸入貨物対応の大きな武器
――グローバル事業拡大には国内輸送網が鍵。
植松 当社は海外から国内への一貫輸送のさらなる獲得を目指している。例えば消費財は国内製造業の海外シフト進展で輸入の割合が増加。輸入消費財の国内配送ニーズに応じる上で、玄関口となる首都圏、名古屋、阪神地区など都市部の充実した特積みネットワークや日通航空の集配網が武器になる。
――ラストワンマイルを支えるのは自動車輸送。
植松 鉄道、内航、航空と倉庫保管を組み合わせた提案を行うにも自動車輸送は欠かせない。将来、自動運転などが実用化されてもラストワンマイルの重要性は変わらない。今後も名鉄運輸はじめ同業他社との協業を推進。ネットワークを質・量とも拡充させ、コスト低減と競争力向上を図りたい。
(略歴)
うえまつ・みつる=昭和33年5月9日生まれ、58歳。56年日本通運入社、ペリカン・アロー部小口事業戦略室専任部長、JPエクスプレス東京支社長兼東京統括支店長などを経て、平成22年日通小口貨物事業推進本部部長、24年日通小口貨物企画部長、25年自動車企画部長、27年執行役員自動車企画部・小口貨物営業部・通運部・引越営業部担当。(水谷 周平)