インタビュー

【 社長インタビュー 】
九州航路の成長が鍵 着実な集貨目指す

2014年11月12日
商船三井フェリー 中井 和則 社長
北海道と首都圏を結ぶ長距離フェリーや北九州向けRORO船を運航する商船三井フェリー(本社・東京、中井和則社長)。船舶へのモーダルシフトへの期待が高まる中、顧客のニーズをどう取り込んでいくのか。中井社長は「細かな需要を見極め取りこぼさないようにする」と語る。
――足元の荷動きは。
中井 4~6月は、北海道、九州ともに消費増税の駆け込み需要の余韻もあり前年同期比で3%ほど増加した。
――夏場は。
中井 北海道は堅調。8月の集中豪雨の影響も懸念されたが、農作物への影響は少なかったようだ。 九州では自動車の国内需要の落ち込みや長雨の影響で荷動きは悪かった。旅客でも、台風など天候の影響を受けた。
――下期に注力することは。
中井 北海道はもともと季節変動が大きく、下期は閑散期に当たる。ニーズを捉え、荷物を集める。九州の工業製品獲得にも力を入れる。物量確保につながる営業をしていく。
――燃料価格は高騰している。
中井 中国や欧州の景気停滞で一時的な落ち着きを見せているとはいえ、燃料価格の上振れリスクは大きい。燃料油価格変動調整金は顧客に丁寧に状況を説明し、だいぶ理解を得られている。
――安全対策も重要。
中井 年間通して何度も訓練を実施する。10月にも大洗で実施。色々な方法で訓練を行う。例えば乗船客を対象としたミステリツアー形式の訓練。楽しみながら、避難経路を覚えられる。安全に絶対はない。あらゆる角度からのアプローチが必要だ。
集荷力に合う最適船型模索
――新造船については。
中井 検討中だ。内航は寄港地も決まっていて新規貨物の確保は難しい。
――単なる大型化ではない。
大型化したからいいということではない。速度や燃費性能も含めて生産性の高い船を模索している。船は1度造れば10年、20年と使わなくてはいけない。長く使えて、集荷力に見合う船にしたい。
顧客の声聞き需要取り込む
――モーダルシフトの需要は高まっている。
中井 長期的に見て物流の再編は起こる。法令的にも労働人口減少を見ても、いまの物流モデルが変わってくるのは間違いないだろう。問題はいつ起こるかだ。九州―本州を直行で走っているようなトラックではフェリーへの移行も起こるだろう。
――そうでない場合も考えられる。
中井 大阪や名古屋の荷物を積み合わせていることも多い。積載効率を考えると、こういったケースでは一概にモーダルシフトとは言えないのではないか。
――マーケティングが重要。
中井 例えば北海道では有人トラックの長距離フェリー利用が増えてきた。そういうニーズを確実に取り込む。そのためには顧客の声に耳を傾ける必要がある。来年から平成32年の東京オリンピック・パラリンピックまでは建築資材の動きが活発になる。これも押さえる。
――将来を見据えたかじ取りをする。
中井 北海道は、貨物量が堅調に推移している。九州はアジアと近く経済が活発化する可能性のあるところ。いまは陸送が物流の中心だが、ドライバー不足などで、シャーシ化や長距離でのフェリー活用など海上輸送の需要も高まるだろう。慎重に見極めて収益確保につなげる。
記者席 新造船2隻建造
インタビュー後、「さんふらわあ さっぽろ」「さんふらわあ ふらの」の2隻を代替し新造船を造ると発表があった。
取材時の言葉通り、単なる大型化ではない。車両積載能力は大型トラック(13メートル換算)で6台増強の160台。推進システムには新しいプロペラを採用し、高速化と高い環境性能を両立させた。客室はよりプライバシーを重視。家族連れからドライバーまでゆったりと過ごせる。
普段は慎重に言葉を選びゆっくり話すが、趣味の事になると別。好きな仏像などについて語る時は弾けるような笑顔。
(佐藤 周)