インタビュー

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【 インタビュー 】

安全、人材対策に全力 4年後の開催控え

2016年05月24日

関東運輸局 濱 勝俊 局長

 日本最大の消費地を抱える首都圏。4年後には東京オリンピック・パラリンピックを控え、今後は訪日外国人旅行者の急増など、物流需要のさらなる増加が見込まれる。業界で深刻な労働力不足が課題となる中、どのように安全で合理的な物流を構築するのか。物流行政を所管する関東運輸局の濱勝俊局長に取り組みを聞いた。

 ――物流事業者の経営環境をどう見る。
 濱 全国的に景気がやや弱含みの状態にある中、大消費地の東京を抱える関東は特異なエリア。通販需要の拡大によって宅配貨物が一貫して伸びるなど、消費物流を中心に物量は堅調といえる。全国的に見れば〝恵まれた地域〟なのではないか。
 ――局長はこれまでさまざまな物流施策に携わってきた。
 濱 国土交通省の本省で課長、審議官を担当した際、物流総合効率化法や総合物流施策大綱の策定に取り組んだ。近年は圏央道の延伸により、周辺では大型物流施設の整備が進む。輸送、保管、流通加工を集約した多機能倉庫を交通の結節点に造り、物流の合理化と環境負荷低減を図るといった政策効果が首都圏の物流にも寄与しつつある。

ト協と一体で取り組み推進

 ――4年後には東京オリンピックを控える。
 濱 東京を中心に訪日外国人旅行者が増えるなど、物量のさらなる増加が予想される。今後、五輪関係の交通規制がどう設定されるのかなどを踏まえ、事業者と協力して円滑な物流を実現したい。
 ――物流に配慮した施策も必要なのでは。
 浜 物流を円滑に進めるには、貨物専用レーンを設置するといった対応が重要だろう。(五輪開催中の)交通規制、インフラの利用状況などを含め、具体的にどんな対策が必要かを考えたい。また近年は圏央道周辺に大型物流拠点が整備され、そこから多くの貨物が都内に配送されている。安全対策をさらに徹底しなければならない。
 ――安全対策ではどんな取り組みを。
 濱 国交省の「事業用自動車総合安全プラン2009」を基に、業界関係者と一丸となった取り組みを進めている。安全対策は掛け声だけでは前進しない。関東地方の各トラック協会も事故の特徴や原因を分析し、対策に乗り出してくれている。
 ――具体的には。
 濱 トラックで発生しやすい交差点の右左折時の事故を防ぐため、東京都トラック協会は今年度中にも注意突起を図るチラシの配布、車両カメラ・モニター装置を使った取り組みを展開。どこに死角があるかなどを科学的に分析し、対策を検討してもらう。関東の各トラック協会も事故分析を基に安全対策を積み上げている。運輸局も業界と一体となり、物量が増えても事故を起こさない体制を整備したい。

好事例を積み上げ横展開へ

 ――労働力不足の解消をどう進める。
 濱 来春にも始まる準中型免許により、就職活動で課題だった制度面のハードルは解消されるのではないか。各運輸支局長も高校を訪問し、学生に運輸業界で働く魅力をPRしている。現在は昨年設置した地方協議会の議論を通じ、トラックの適正取引、労働時間改善にも取り組んでいる。
 ――秋には協議会でパイロット事業が始まる。
 濱 具体的な内容は調整中だが、例えば首都圏では「消費物流の配送をいかに効率化するか」などの課題がある。パイロット事業は荷主と事業者が互いに協力し、実施後にどこに利点があったかを検証することが重要になる。2年間かけて好事例を積み上げ、取り組みの普及に力を注ぎたい。
 ――物流では新技術の活用も重要な課題に。
 濱 自動運転、ドローン(小型無人機)といった新技術は物流の効率化につながることが期待できる。安全を前提に実用化が進めば、労働力不足の課題解消や物流の地位向上など、現状を大きく変える部分もあるのではないか。運輸局として好事例を一つでも多く生み出し、横展開できるように、特区や実証実験を活用していく。

(経歴)
 はま・かつとし=昭和34年2月3日生まれ、57歳。徳島県出身。昭和57年東大法卒、運輸省(現・国土交通省)入省。平成24年大臣官房審議官(情報政策・危機管理・物流担当)、25年警察庁審議官(交通局担当)、27年同兼交通局交通指導課長などを経て、27年7月から関東運輸局長。(小林 孝博)