インタビュー

【 インタビュー 】
倉庫運営スキルが鍵 顧客からの信用が武器

2016年05月17日
大阪倉庫協会 柴山 恒晴 会長
――近畿経済の現況をどうみる。
柴山 平成27年10~12月の実質GDP(国内総生産)は前期比0.3%減で良くはない。近畿経済はこの数値より悪いのではないか。近畿は大阪発祥の大手家電メーカーがグローバル競争の中でシェアを失い、古くは大阪の強みだった繊維産業も衰退傾向。これら要因が倉庫の回転率にも影響を与えているとみている。
――倉庫業界の現況は。
柴山 昨年、当協会管轄の倉庫入庫高と出庫高はともに前年を下回った。リーマン・ショックがあった平成20年から右肩下がりで、昨年の入庫高は20年比27%減、前年比で8%減。楽観できる状況にはない。
――近畿でも外資系ファンドなどが大型物流施設の開発を進めている。
柴山 保管面積が増えライバル関係にはある。新規の大型設備は新たな需要を喚起する側面もあるが、いずれ供給が需要を上回るだろう。そうなると倉庫料金が値崩れし、当協会管轄の倉庫経営にマイナスになるのではと心配している。
小ロット化対応のスキルを
――競争過多になる。
柴山 その可能性はある。倉庫業は顧客ニーズに応えることが第一。業務効率化で中小規模の倉庫を集約化して新しい大型施設に移ることを検討する顧客が出てくるかもしれない。だが、倉庫の運営ノウハウは一朝一夕には得られない。小口・小ロット化が進む荷物をどう保管し、スムーズな入出庫につなげるか。保管型の倉庫運営だけではダメだと危機感を持つ会員は少なくない。
――対策は。
柴山 倉庫業界も人手不足。機械に頼る部分は増えるかもしれないが、結局は人によるマネジメントが物を言う。当協会では、倉庫運営のスペシャリストを育てる研修に力を入れており、いままでにない反響がある。例えば倉庫人件費の原価計算などのコスト分析能力は、提案型を要求される新しい倉庫業で欠かせない能力。顧客の「この人に任せておけば安心」という信頼感は大きな武器になる。
――南海・東南海地震に向けた対策は。
柴山 大阪府と防災協定を結び、当協会会員205社のうち23社が手を挙げてくれた。府下には北部、中部、南部に3カ所の災害対応倉庫を設けているが、それら倉庫がオーバーフローした時、23社の倉庫が使われる。今回の熊本地震を対岸の火事とせず、議論を深める契機にすべきだろう。
(略歴)
しばやま・つねはる=昭和34年11月27日生まれ、56歳。京都府出身。57年大阪市立大卒、野村証券入社。人事部長、執行役員人事担当、常務執行役員を経て、平成23年杉村倉庫副社長、24年社長。26年6月大阪倉庫協会長。(丸山 隆彦)