インタビュー

【 インタビュー 】
物効法改正で省力化推進 トラックと連携進める

2016年02月09日
国土交通省 坂巻 健太 大臣官房参事官
国土交通省が物流総合効率化法(物効法)の改正に向けた準備を進めている。物流業界で労働力不足が続く中、同省が今後目指すのが潜在的輸送力を活用し多様なニーズに応える「究極に効率化した物流」の実現だ。坂巻健太大臣官房参事官は「トラックドライバーにも優しい倉庫を普及し物流の省力化を図り、業界の抱える課題解決につなげたい」とする。
――倉庫業界の経営環境をどう見る。
坂巻 普通倉庫21社統計によると、入庫高は昨年10月まで前年を下回る状態が続いた。保管残高も高止まりし貨物の回転率は順調とは言いにくい。経済政策「アベノミクス」によって景気の好循環が加速し、業界の経営環境改善につながることを期待している。
中小事業者にも使いやすく
――課題は。
坂巻 労働力不足が続く中、課題に対応した倉庫整備が重要になる。究極に効率化した物流の実現には、倉庫事業者がトラックなど他業界のプレイヤーと連携を深めることが欠かせない。顧客から選ばれる倉庫づくりを施設を通じて支援する。臨海部を中心に進む施設の老朽化も課題だ。
――どんな取り組みを進めるのか。
坂巻 現在、物効法改正に向けた準備を進めている。平成17年の施行から昨年9月までの総認定数は277件。高機能な大型施設を普及させ、物流を効率化するという当初の政策目的は果たしつつある。今後はトラックとの連携を促進し、物流の効率化と省力化をさらに進める。
――改正のポイントは。
坂巻 トラックの営業所を併設するか、車両の予約受付システムを導入する倉庫が税制特例措置の対象となる。今国会に提出予定の改正案が成立後、一定期間を経て施行する。認定要件から、ハードルが高いと言われていた垂直型連続運搬装置を外すなどの見直しも行う。これまでトラックとの連携がなかった中小倉庫事業者にも、新たな制度を積極的に活用してほしい。
予算増額し低炭素化を加速
――物流施設の低炭素化促進も重要な課題。
坂巻 来年度予算案では物流のCO2(二酸化炭素)削減対策促進事業を新設し、エネルギー対策特別会計において環境省との連携で37億円を確保。このうちの一部を物流拠点の低炭素化に充てる。今年度も高天井LED(発光ダイオード)、自動化保管装置などの補助事業に対する倉庫事業者の関心は高かった。大幅に増額する予算を活用し物流施設のCO2削減を加速させる。
――近年、物流不動産が急速に拡大している。
坂巻 EC(電子商取引)の拡大に伴い、大消費地近郊に大型施設の需要が高まっている。物流不動産はその受け皿となっているのだろう。施設の需給バランスは注視したい。
――業界内には物流不動産の拡大に懸念を示す事業者も少なくない。
坂巻 物流不動産は倉庫事業者のライバルといわれるが、物流不動産を活用するケースもある。競争と連携により、物流全体の高度化・サービス向上につながればいい。倉庫事業者は、改正物効法を活用しトラックと連携することで、新たな商機を生み出すこともできるのではないか。
(略歴)
坂巻 健太氏(さかまき・けんた) 昭和44年12月10日生まれ、46歳。愛知県出身。平成4年京大経卒、運輸省(現・国土交通省)入省、20年新潟県産業労働観光部観光局長、24年第10管区海上保安本部総務部長などを経て、26年7月大臣官房参事官に就任。(小林 孝博)