インタビュー

【 インタビュー 】
倉庫から見た支援物流 関係者の連携で円滑に

2015年10月27日
宮城県倉庫協会 黒川 久 会長
宮城県倉庫協会(黒川久会長)は4年前の東日本大震災で、会員事業者と共に災害支援物資の受け入れと管理に携わった。その経験から「在庫情報の一元化が急務」と黒川久会長。当時の混乱と浮き彫りになった課題の現状を聞いた。
――東日本大震災から4年が経過。東北の現状はどうか。
黒川 まだ土地のかさ上げをしている最中の場所もある。全ての復興が終わったとは思わず、自分の目で被災地を見て実態を知ってほしい。
喫緊の課題は情報の一元化
――国、自治体による支援物資物流の議論を進めてきた。
黒川 各自治体も国土交通省も対策を練っている。民間でも、今後南海トラフ地震で被災し得る臨海部は危機感を持って対応している。静岡県の清水港に本社を置くある会社はBCP(事業継続計画)で、倉庫を高台に移転、本社機能を静岡市に移転した。
――震災では在庫管理の面で課題に直面した。
黒川 倉庫事業者と県と国の間での情報管理の一元化の問題。仕分けの品目分類など物資明細を共通化すれば管理がスムーズになるが、十分に進んでいない。災害に対応した物流支援用ソフトの開発は経済産業省が主導しているが、非常時なので関連のある国交省、総務省、外務省が横断的に関わることが必要だ。
――現場の情報収集はどうする。
黒川 自治体が把握できるのは避難所までで、より小さな避難所や個人宅についての情報は収集困難。一方、ボランティアは自治体よりも詳細な情報を持っており、ボランティアと情報を共有するとよい。自宅で頑張っている人もおり、避難所で物資を受け取れる人と自宅でしか受け取れない人の格差が生じることは避けたい。
――実際どのようなことがあったか。
黒川 県が把握し切れていなかった情報が、宮城県の多賀城地区で役立ったケースがあった。避難所から(自治体経由の)物資の要請はなかったが、水や食料を持っていくと実際には物資が必要な状態だった。
――首都直下が起こればどうなる。
黒川 東京、神奈川、埼玉、千葉が被災し物資を直接送ることが難しくなる可能性がある。群馬や栃木に流通加工を行う一次集積場所を設け、そこから輸送できる体制も求められる。震災では日本倉庫協会から支援を受けた経緯があり、宮城倉協では日倉協が被災した際に仙台に拠点を一時移せるよう基金もつくった。
――物資の集積拠点の準備状況は。
黒川 宮城県は災害避難公園建設を構想しているが、医療や避難に割く場所、予算を優先する関係で、水や非常食などの物資を専用倉庫で備蓄することは行わない考え。首都直下については、物資受け入れのために広いスペースを持つ公共施設の利用を想定し、あらかじめ選定しておくことが行政・自治体には欠かせない。(鈴木 洋平)