インタビュー

【 社長インタビュー 】
改革の実を上げる年に 新規顧客の獲得進む

2015年10月13日
札幌通運 下斗米 寛泰 社長
札幌通運(本社・札幌市)は、サービス向上による適正運賃収受を徹底させる。「会社が生き残るために、どう利益を出すか。コスト意識を全社に徹底させたい」と下斗米寛泰社長。特積みの貨物事故削減や労働時間短縮にも取り組む。
――足元の状況は。
下斗米 売上高、利益とも前年に比べ伸びており、増収増益。良いスタートを切れた。値上げ効果が、徐々に出てきている。
――新規顧客の獲得も進んだ。
下斗米 本州内で完結する地場輸送を中心に区域輸送で新規顧客の獲得ができた。大手の衣料メーカーや小売り、通販事業者など大口の新規顧客を獲得した。
――本州、北海道のどちらも伸長した。
下斗米 本州では大阪を中心に不採算貨物からの撤退と新規貨物誘致を同時に推進できた。北海道内も業務改善や適正運賃収受が進んで、好調に推移している。
良いサービスで適正な運賃
――サービスの有料化が基本だ。
下斗米 物流業界は3年前まで安売り競争だった。その中で会社がどう成長していくかを第三者も交えて議論を重ねてきた。そこで打ち出したのが良い仕事を提供し、適正な料金を収受しようという方向性だ。
――社内で浸透させている。
下斗米 「蛻変(ぜいへん)計画」という計画を立てた。2年目となる今年は「実践!蛻変計画」として、改革の〝実〟を上げる。①利益基軸の業務運営②顧客満足度ナンバーワン③コミュニケーション能力向上――の3つが柱だ。
――具体的には。
下斗米 まず輸送品質。業界ナンバーワンを目指さなければいけない。以前にも増して高い数値目標を設定して、貨物事故削減に取り組んでいる。オリジナルの養生資材活用などを含めて細かいところまで徹底する。さらに支店長を中心に、管理職の現場臨検を義務付けた。
――管理職が責任を持って現場に臨む。
下斗米 朝、夕に責任を持って管理職が現場に立ち、安全意識を高める。責任を持って荷物を送り出す。
――事故は減ったか。
下斗米 責任を問える輸送システムの確立で大幅に減少した。
全社にコスト意識浸透させ
――社員全員のレベル向上を図る。
下斗米 そのために階層別に教育を実施している。若手社員にはモノの流れを実際に見せている。物流全体が見渡せるように教育する。幹部クラスには会計制度などを勉強させている。
――そして利益を追求する。
下斗米 そうだ。利益を上げるためには原価計算をベースにした営業が必要だ。売上高から利益をいくら残すかを計算する。達成のためには費用をいくらにすればよいのか。営業マンは常にそれを意識して仕事をする。
――経営陣がコストをチェックする。
下斗米 経営陣が一つ一つの契約に目を通すようにした。収入を上げることもそうだが、無駄な費用削減も必要だ。そのチェックを確実にしていく。グループ会社内で経営者会議を開き、数字だけでなく決定の経過も検証するようにしている。
――しっかりと利益を残す体制をつくる。
下斗米 昨年度が理念の浸透ならば、今年は実行の年。収入を増やし支出を削減する。グループが目標とする利益額を達成するために、全社挙げて、取り組みを進めていく。
記者席 ユーモアと熱情と
「仕事の話はいいよ」とユーモアたっぷりに切り出された。だが話をし始めると一転、熱が入り思わず咳き込むほどに。「ちょっと失礼」といって戻ってきた手には親会社ロジネットジャパンの商品「ゆきのみず」。「これを飲めばすっきりする」とまた笑顔。
昨年打ち出した蛻変(ぜいへん)計画も2年目に突入し社内に浸透してきた。「今年は実行の年に」と、運賃改善とともにコストの引き締めを図る。計画推進のためにも社内の風通しを良くしコミュニケーションを密にする。社員同士の情報共有を促し、利益を生む体制を構築する。
社員教育に熱心だ。若い頃からさまざまな経験をしさまざまな人に会って、「大きく育ってほしい」。ロジネットジャパングループの中核を担う企業のトップとして強い思いで挑む。
(略歴)
下斗米 寛泰氏(しもとまい・ひろやす) 昭和22年11月2日生まれ、67歳。青森県出身。45年小樽商大商卒、大成火災海上保険(現・損害保険ジャパン)入社、平成18年札幌通運執行役員、23年専務、25年3月社長。(佐藤 周)