インタビュー
【 トラック特集・インタビュー 】
「明るい未来」へ共に歩み 取引条件改善、実現の鍵に
2026年03月24日
国土交通省 岡野 まさ子 総括審議官兼物流統括調整官
ドライバーの残業上限規制の適用から、4月で2年を迎えるトラック業界。現時点で深刻な輸送力不足は起きていないが、いつ顕在化するか分からない問題を抱え続けている。国土交通省の岡野まさ子総括審議官兼物流統括調整官は「取引適正化を通じ賃上げの原資となる運賃をしっかり収受できるよう後押しする」とし、業界の明るい未来を切り開くため、共に行動しようと呼び掛ける。
――残業上限規制の適用から2年を迎える。
岡野 (2023年に策定した)物流政策パッケージに基づき、官民連携で取り組みを進めてきた結果、24年の輸送力不足は乗り越えることができた。だが、乗り越えたら終わりではなく、人手不足は引き続き深刻化している。手を緩めることなく、対策を進めていかなければいけない。
――荷主・元請け、実運送企業などの意識や行動変容はどうか。
岡野 24年度のトラックドライバー全体の拘束時間は20年度比で約40分減少したのに対し、荷待ち・荷役時間は3時間程度と横ばいだった。一方、25年度の数字は現在集計中だが、足元では改善傾向にあると聞いている。関係者の意識の高まりとともに、行政の取り組みの効果も上がっていると感じる。
公取委と連携大きく
――この数年、トラック・物流Gメンの活動を強化してきた。
岡野 取引環境の適正化に向け、トラック・物流Gメンの取り組みは非常に重要で、これまで2500件以上の是正指導を講じてきた。現在、各都道府県トラック協会に設けた「Gメン調査員」を合わせ、計360人規模まで体制を強化するとともに、昨年には外部チームの「Gメンアシスタント事務局」を設置。収集情報の調査・分析などを任せることで、行政はやるべきことに集中できる体制を整えている。
――昨年の集中監視月間では初めて公正取引員会と連携した。
岡野 1月に中小受託取引適正化法(取適法)が施行されることを踏まえ、昨年、合同パトロールを実施するなど連携を強化している。取適法では(特定運送委託の新設により)発荷主と元請けの取引も指導対象になる。公取委という法的拘束力のある機関が行うことで、取引適正化への意識が高まることが期待でき、連携には大きな意味がある。
新制度で取り組み加速
――今後も是正指導の取り組みを強める。
岡野 取引適正化が進むことで、最終的に是正指導の件数が減っていくことが理想だ。社会的に24年問題への関心が高まり、荷主も「運べなくなること」への危機感を持っている。標準的な運賃の調査では、回答した運送企業の74%が「取引先が運賃交渉に応じた」と答え、そのうちの75%で「荷主が一定の理解を示した」との結果も出ており、前進していると理解している。
――改正物流効率化法の全面施行により、4月から一定規模以上の「特定事業者」にさまざまな義務付けが始まる。
岡野 これまでも物流効率化などの取り組みを進めてもらってきたが、4月以降は(指定基準値に該当する)特定事業者に対し、中長期的な計画の提出と、毎年の定期報告が義務付けられる。国が目標達成状況をしっかり確認することで、物流の持続的な成長が期待できる。
――関係者への周知はどうか。
岡野 セミナー、シンポジウムなど、あらゆる機会を捉えて周知している。重要だが、新たに始まる取り組みなので、引き続き関係者への周知を徹底したい。
――荷主や物流企業の中には理解が追い付いていないケースもある。
岡野 特定事業者に該当するか否かは、行政が通知するのではなく、特定荷主・特定連鎖化事業者は取扱重量(9万トン以上)、特定倉庫事業者は貨物保管量(70万トン以上)、特定貨物自動車運送事業者は保有車両台数(150台以上)に応じて判断してもらう。このため、自発的に重量などを把握してもらうことが重要で、今後も必要な周知を続けていく。
適正化二法、順次施行へ
――昨年成立したトラック適正化二法への関心が高い。
岡野 4月から、荷主による違法な白トラックの利用規制、再委託の回数を2回以内までとする委託次数制限の努力義務などが始まる。業界では、多重下請け構造が非常に大きな課題の一つで、是正効果があると期待している。
――適正原価と事業許可更新制の予定は。
岡野 公布から3年以内に施行することが決まっており、28年6月までに適正原価と事業許可更新制が施行されることになる。このうち、事業許可更新制は施行後2年間の経過措置が設けられる。適正原価はまず実態をしっかり把握した上で、施行前にできる限り時間的な余裕も持たせながら、周知できるように検討を進めたい。
まず実態把握進め
――適正原価に関し、業界では一日でも早い施行を望む声が強い。
岡野 難しい問題で、低過ぎても高過ぎても良くない。実効性のあるものにするためには、実態に即したものでないと意味がなく、慎重に検討する。荷主や業界、有識者の意見を聞きながら慎重に議論していく。
――事業許可更新制はどんなイメージか。
岡野 基本的には新規事業許可と同じような項目を確認することになるだろう。加えて、適正原価など新たな確認項目が必要かも検討していく。施行から2年間の経過措置を設けるが、運送企業にはその間、適正原価に基づく運賃収受を進めてもらう。
魅力=業界の価値
――トラック運送が持続的な成長を実現するためには、自らで価値を高めることも不可欠。
岡野 トラック事業が魅力的な職場になっていくことが重要だろう。そのためには法令順守とともに、取引適正化を通じ、賃上げの原資となる運賃をしっかり収受することが欠かせない。国交省も運送事業全体の明るい未来が開けるような政策を打ち出していくので、ドライバーの処遇改善にぜひ努めてほしい。
――女性の視点から気付いた点はあるか。
岡野 トラックターミナルの視察で仮眠室を見せてもらった際、女性専用の部屋がないことが気になった。働きやすい職場環境を整備するため、運送各社は努力しているが、この部分で改善の余地があるのではないか。一方、女性の視点で見ると、長距離の宿泊運行は難しい。日帰りの需要は強く、中継輸送ができる拠点を増やすことも重要。
――魅力的な職場整備には消費者の協力も重要になる。
岡野 最も身近な宅配で見ると、現在も再配達の課題はあるが、24年問題への関心が高まる以前に比べると、再配達率はかなり改善している。国交省として、再配達削減の意識を高めてもらえるよう周知を継続すると同時に、宅配ボックスなど対面以外の受け取り方法の普及を促進するほか、大手宅配会社の会員サービスに登録していながら活用していない人も多く、そういったことの重要性も呼び掛けていく。
