インタビュー

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【 社長インタビュー 】

ループ一丸で対応力強め 物流機能の拡充に注力

2026年01月20日

三井倉庫ホールディングス 古賀 博文 社長

 米国関税政策や地政学的リスクなどを理由にサプライチェーン分散の機運が高まる中、三井倉庫ホールディングス(本社・東京)はグループ一体で顧客ニーズに素早く対応できる体制づくりに注力している。古賀博文社長は「顧客が何かを始める際、真っ先に声が掛かる『ファーストコールカンパニー』を目指す」と話し、グループ間のシナジーを深化させつつ、総合物流企業としてさまざまな物流機能の拡充に努める。

一番最初めの相談相手目指し

 ――物流を取り巻く経営環境が変化している。
 古賀 疫病や米国関税政策、戦争などの地政学的リスクの影響で、顧客によるサプライチェーン分散の機運が高まっている。現在物流はさまざまな面で脚光を浴びており、物流企業に対して求められるものも大きい。価格だけでなく、拠点分散や環境負荷低減など、顧客の幅広いニーズに対し細やかに対応できる提案力や実行力が求められる。
 ――さまざまな物流機能を持つことが強み。
 古賀 当社はこれまで積極的なM&Aを通じて事業領域を拡大し、総合物流企業としての体制を整えてきた。特に素材原料をはじめ自動車部品や家電などの分野で培ってきた物流ノウハウを生かし、顧客のニーズに細やかに対応できるグループ力が強みだ。顧客が何かを始める時、相談相手として一番初めに声が掛かる「ファーストコールカンパニー」を目指し、社長就任当初から提唱している。
 ――4年目となる中期経営計画の進ちょくは。
 古賀 おおむね順調だ。特に重視する営業利益目標230億円の達成は射程圏内にある。最終年度の27年3月期は、本社移転に伴う一過性費用の解消、不動産事業での主要ビルの通期のフル稼働と物流事業のさらなる利益成長により、資本効率向上を図る。

本社統合でシナジー創出へ

 ――具体的な戦略は。
 古賀 中計では、柱の一つにグループ総合力結集によるトップライン(売上高)成長を掲げている。調達から生産に関わる物流、保管、通関、輸送まで一気通貫に実行できるグループ力をフル活用し、サプライチェーンの計画から実行までをワンストップで提供する統合ソリューション(解決策)サービスの拡大に力を注ぐ。総合物流企業として、サプライチェーン最適化に対する顧客の多様なニーズに機動的に対応していく。
 ――昨年5月に東京地区のグループ会社の本社機能を集約・統合。グループシナジーも深化させた。
 古賀 組織や事業の垣根をなくす座席配置や、フロア間の回遊性を高める内階段の設置など、設計を工夫した。従業員のコミュニケーションを促しさらなるグループ総合力強化を加速させる環境を整えた。従業員からも好評で、新規事業開発などでさらなるシナジーを発揮していきたい。
 ――中計最終年度に向けた展望は。
 古賀 既存事業を拡大しつつ、次期中計や長期的成長に向けた基盤をつくる。総合物流企業としての機能はそろっているが、細かく見れば足りないところもある。不足を補うため1~2年かけて拡充していく。
 ――具体的には。
 古賀 例えば、食品原料は得意分野の一つ。だが、製品物流はまだまだなので、冷凍や冷蔵物流なども選択肢として視野に入れている。また、現在九州で手掛けている半導体関連物流では、シリコンウエハーの貯蔵倉庫など製造に必要な周辺分野にも範囲を広げており、事業領域のさらなる拡大に注力していく。

記者席 M&Aの成果、花開き

 これまでM&Aを通じ業域を拡大してきた同社だが、その道のりは決して順風満帆ではなかった。2017年6月に社長に就任した際、17年3月期の業績は234億円の赤字だった。
 「当時は全員に危機感があったが、買収した会社も含めグループ一丸で互いに協力し合い仕事を引き受けるようになっていった。おかげで利益も上昇し、(グループとして)バランスが取れてきた」。十数年かけた成果に手応えを感じつつ、今も気を引き締める。
 昨年5月、本社を移転した。より自由な雰囲気を醸成するため、「時折Tシャツで来るようにしている。従業員も感化されたのか、カジュアルな服装で出社している」と話す。従業員に「来るのが楽しい、良い仕事がしたい」と思われる会社にするため、人的資本の強化に努めている。