インタビュー
【 新年特別インタビュー 】
子どもに「感動」つたえて
2026年01月06日
絵本作家 宮西 達也さん
近年は空前の「絵本」ブーム。映画や舞台にもなった『おまえうまそうだな』など数多くの作品を手掛ける絵本作家・宮西達也さんは「絵本は感動や優しさ、思いやりがずっと記憶に残るのが魅力」とし、「大人は子どもたちに夢を持って輝く姿を見せてほしい」と話す。物流にも理解と関心を示し、若い世代に魅力を伝えるために「トラックのラッピングや制服に目に留まるようなデザインを取り入れてみては」とアドバイスする。
大人の輝く姿を発信し
――絵本作家を目指したきっかけは。
宮西 若い頃から絵を描く仕事に就きたかった。大学在学中のアルバイトで絵本制作に携わり「絵本ってたくさん絵が描けていいな」と考えるようになった。卒業後はグラフィックデザイナーになったが、絵を描く仕事がしたいという夢を見つめ直し、退職。広告代理店などに絵を持ち込む中で、かつて絵本を作った経験を思い出し、絵本作家を志した。
――1983年にデビューした。
宮西 フレーベル館から処女作を出版した。書店で小さな女の子が自分の作品を手に取って笑う姿を見た時、絵本作家の素晴らしさを実感した。会ったことのない大人や子どもに笑顔や感動を与えられる絵本に魅力を感じ、そこから約40年にわたり創作活動を続けている。
――絵本の魅力は。
宮西 感動や優しさ、思いやりがずっと記憶に残るのが絵本の魅力。人は五感を使って情報を得るが、耳から入る情報は約10%、目から入る情報は約80%と聞く。絵本は読み聞かせてもらうことで、目と耳の両方から情報が入る。子どもたちが幼い頃に読んでもらった絵本を大人になっても覚えているのはそのため。大人から「幼い頃にこの絵本を読んで感動した」と覚えていてもらえるとうれしい。
幼少期の思い出をヒントに
――創作のこだわりは。
宮西 自身の幼少期の思い出をヒントにしながら、優しさや思いやりといった自分が描きたいテーマを大切にしている。小さい頃の記憶は大人になっても残るため、子どもたちには「今」を大事にしてほしい。もちろん勉強も大切だが、人に意地悪をしないなどの優しさや思いやりの心を子ども時代にきちんと養ってほしい。
――作品は幅広い世代に愛されている。
宮西 特に、まず大人に読んでほしい。親が読んで感動した本は、読み聞かせをする際も気持ちが入る。親の感動が子どもに伝わり、記憶に残る。子どもも読んでもらった当時は深く分からなくても、父や母になった時に本当の意味を理解できることもある。読者それぞれが抱える背景で見方が変わるので、絵本は子どもから大人まで読むことができる。
――大人を応援する作品も手掛ける。
宮西 父親に焦点を当てた『おとうさんはウルトラマン』シリーズでは、父親世代からの反響が大きかった。昔に比べ、今は夢を持たない子どもが多くなったように感じる。大人が夢を持っていない上に、夢のある生き方をしていないからだろう。もっとはつらつと楽しそうに、一生懸命働く姿を子どもに見せないと、子どもは将来に夢を持てない。だから、大人も夢を持ってキラキラと輝いてほしい。
毎日同じ時間に到着し驚き
――トラックをテーマにした作品も。
宮西 仕事をしながら窓から外を眺めていると、目の前の道路を同じ時間に同じ車が通ることに気付いた。車同士が「今日も頑張ってるね」と声を掛け合うように見え、着想を得た。さらに観察すると、乗用車は毎日同じではないが、トラックは同じ時間に同じ場所に到着することを発見し驚いた。そこから、人間のように個性を持つ軽トラックを主人公にした『ちっちゃなトラック』シリーズを制作した。
――トラックの魅力は。
宮西 いろいろなモノを載せて、どこにでも行ける便利さが魅力だ。シリーズ作品の中では、実際の企業をオマージュした宅配車両をはじめとしたトラック、宇宙ステーション、ロケットなどこれ以上描けないというほどたくさんの乗り物を登場させた。
最新作は20年越しの続編に
――2023年、恐竜同士の絆を描いたティラノサウルスシリーズの最新作『おまえうまそうだな さよならウマソウ』を出版。
宮西 1作目の『おまえうまそうだな』の続編を作るつもりはなかったが、年月を経て自分の考え方が変化し、20年越しに続編を制作した。同シリーズの作品は他にもあるが、実際に話がつながっているのはこの2冊だけだ。
――どのような心境の変化があったのか。
宮西 1作目のラストでは、主人公の「ティラノ」が競走に勝ったらずっと一緒に暮らせるとうそをつき、アンキロサウルスの赤ちゃんの「ウマソウ」と別れている。子どもを思う優しいうそだが、ティラノは長い間うそをついたことを悩んだと思う。ウマソウも大人になり子どもができて初めて別れた時のティラノの気持ちを理解したのではないかと考えた。再会させて、今度はうそをつかずに別れる最後を作ってあげたいと思った。
――今後扱ってみたいテーマは。
宮西 世の中ではやっている題材を扱おうとは考えていない。一人の人間が描くためテーマは似通ってしまうが、ティラノやウルトラマン、トラックなどのキャラクターを用いて、これからも優しさや思いやりを伝える作品を作っていきたい。
皆で物流を考える
――物流との関わり、印象的なエピソードは。
宮西 作品の校正刷りを出版社に送付する際など、かなりの頻度で宅配便を利用している。集配に来る配達員の皆さんが快活で気持ち良く、好印象が持てる。重たい荷物でも走って持ってきてくれ、感謝しかない。自分が車を運転する時はトラックに道を譲り、再配達の荷物があれば営業所まで取りに行くようにしている。
――物流業界へエールを。
宮西 今、物流の現場は本当に大変だと思う。受け取る側がスピードや正確さなど便利さを求める半面、家を留守にすることで再配達が発生していることも課題。置き配や宅配ボックスの設置は進んでいるが、物流側だけではなく、運んでもらう側も含め皆で考える必要があるだろう。
――若い世代に魅力を伝えるためのヒントは。
宮西 子どもたちは車が好き。トラックを動かすドライバーさんたちがニコニコして一生懸命仕事をしている姿を見れば憧れるきっかけになる。車体のラッピングや制服などに目に留まるデザインを施すのも手。季節限定仕様のトラックを走らせたりすれば、人々が振り返り、「あのトラックを見ると幸せになれる」といったジンクスが生まれる話題などにもつながりやすいのではないか。
記者席 ユーモアの中に温かさ
親子で泣ける絵本として有名な『おまえうまそうだな』をはじめ、数多くの作品を手掛ける宮西さん。取材で訪れた「タツズギャラリー」(静岡県三島市)には、原画、作品の世界観を表現したジオラマやオリジナルグッズが展示され、ユーモアがありつつ温かな空間が広がっていた。
「自宅へ配達に来る担当ドライバーさんは全員名前を知っている。車を見ただけで誰のものか分かる」。ドライバーとは世間話をしたり、差し入れを手渡すことも。
物流業界に向けて「遠くにあったモノがすぐ手元に届くことは本当にすごい。大切なモノを運んでくれる皆さんに感謝したい」。物流現場で頑張って働く人々に「いつまでも元気に過ごせるよう、体を大事にしてほしい」とメッセージを贈る。
