インタビュー
【 社長インタビュー 】
事業方針、大胆に転換 利益重視で社員に還元
2025年10月21日
近物レックス 松井 務 社長
近物レックス(本社・静岡県清水町)は事業方針を転換する。特積み事業を基盤としつつ、貸し切りや3PL、倉庫などの成長領域にも注力する。6月に就任した松井務社長は「利益体質の企業を追求しなければ、社員の労働条件改善を継続できない」とし、就任直後から社内体制の見直しに取り組んでいる。
――目指す企業像は。
松井 社員が「ここで働いて良かった」と思える前向きな社風を目指す。私もドライバー出身で、当時の上司には仲間のように接してもらい、どんな立場でも社員目線を持つ大切さを学んだ。
――早くも社員の労働環境改善に着手した。
松井 熱中症対策として、ユニホームをポロシャツからTシャツに変えた。小さなことだが、ドライバーに喜んでもらえている。働きやすい、オープンな会社と周囲に言ってもらえるようになれば人材確保につながる。
付加価値高い分野にシフト
――課題は何か。
松井 利益を意識する文化づくりを課題と認識している。人手不足、労働時間規制、燃料高騰など厳しい状況が続く中、売上高とともに利益に目を向けなければ、将来にわたり社員の賃上げを継続することが難しい。就任後、必要な事業戦略の切り替えを進めている。
――具体的には。
松井 貸し切り輸送や3PL、倉庫事業など収益性の高い分野に注力する。特積み事業は基盤だが、貨物量が減少し、荷量に関係なく路線便を走らせ続けると、運賃競争に左右されてしまう。今伸びているのは、特積みと関連性の薄いECなどの分野で、輸送と関連する付加価値の高いビジネスに着目する。
――現在、どんなことに取り組んでいるか。
松井 貸し切りの積極的な受託を始めた。(親会社の)ハマキョウレックスからノウハウを共有してもらい、倉庫料や構内作業の見直しに着手した。3PLでもシナジーを創出する。
体制変更で現場第一鮮明に
――荷主との適正運賃収受交渉はどうか。
松井 従来は本社が方針を立て、一律に進める形を採用してきたが、各支社や店所に話を聞き、それぞれに合ったビジネスモデルをつくる方針に転換した。商圏の小さな地域で運賃是正にこだわり過ぎると、荷量が減少する懸念がある。商圏の大きな地域では強気に交渉しなければならない。エリアごとの事情を考慮し、方針を立てる。
――現場重視で社内体制の見直しも進める。
松井 東北・関東・中部・関西の各支社を二つに割り、8支社制に変更の東日本と西日本ブロックを管理するブロック長(常務職)を置いた。支社長が管轄する店所数を減らし負荷軽減とともに、さまざまなことを担当常務や近隣の支社長に相談できるようにした。本社の役割は管理から支援・可視化に変えた。
――その狙いは。
松井 社員が見てもらえていると感じることにより、社員のモチベーションが高まり、それが行動につながり、社内のムードが変わってきた。支社で必要なデータの収集・分析は、本社の経営企画室がサポート。どんなことを求められたかを可視化し、支社が何を考えているかを分かるようにすることで、全社の風通しが良くなり、新たな発想や成果につながる。
――JPロジスティクスとの協業の考え方は。
松井 得意分野を生かし、助け合いの関係を深めたい。施設の共同利用・共同配送を中心に取り組みを進め、7月には6拠点目になる板橋支店(板橋トラックターミナル内)でも配達の共同化を始めた。効率化やコスト削減の効果が出ており、協業を深化させていく。
記者席 気配りを忘れず
大柄な体格、明るく大きく響く話し方。一見すると、大胆な性格のように見えるが、常に周囲への配慮を忘れないきめ細かな性格だ。それを表すエピソードがある。
数年前、仕事の傍ら、自らの判断で労働関係を学ぶ専門学校に通った。理由は、当時の社長から問い合わせがあった際、専門家の回答を待つ時間が惜しいと感じたから。「自身で伝えられることが増えればよりスムーズになる」。周囲への気配りを忘れず、支えることを大切にしてきた。
社長に就任した現在、その思いはこれまで以上に強まった。目指すのは、従業員に入社して良かったと思ってもらえる企業づくり。社内体制の見直しを進めるのも、社員の幸せが根底にある。「たくさんの人に応援してもらえている。どんな立場でも社員目線で考えていきたい」
